国(府省庁)や地方自治体(都道府県市区町村)のホームページには「採用パンフレット」が掲載されています。
公務員試験を受験するにあたり、採用パンフレットを見ることは非常に重要です。
公務員といっても、その種類は膨大ですから、一つ一つ自治体を研究していたんでは時間がいくらあっても足りません。
そんなときに、自治体が進めている事業、給与(給料・手当)、人事評価(昇給・昇格)などが記載されていると手っ取り早く情報収集ができるので便利です。
まず採用パンフレットを見ること自体は何も間違ってはいませんが、採用パンフレットを見るときに注意すべきことがあります。
それは、すべてが真実ではないということです。
中には、明らかに嘘だな・・・と思われることも多く記載されています。
現役で働いている私だからこそ分かる視点で解説します。
国(府省庁)や地方自治体(都道府県市区町村)のホームページに公表されている「採用パンフレット」の見方(注意点)
採用パンフレットとは、組織の仕事や制度を記載しているもので、どの自治体も必ず公表しています。
公表しないと、公務員志望者が他に流れてしまう可能性が高いですからね。
とはいえ、公務員になろうと思っている人のチェックポイントは、
- 待遇(給与、出世)
- 勤務時間
- 志望動機
の3点ではないでしょうか。
いくら研修がこんなに手厚い!先輩や上司からのサポートが充実!なんていわれても、年収が低く労働時間も長いようなブラックな組織であれば誰も受験しませんよね?
しかし、ここに大きな落とし穴があります。
給与は公表されているので100%真実だが、出世は特例なので注意が必要
各種手当や給料など、お金に関係していることはすべて公表されています。
自治体のホームページを詳しく見れば、平均年収や平均手当支給額など、事細かに記載されており、そこに嘘はありません。
しかし、出世については注意が必要です。
採用パンフレットにのるような管理職は、すべてストレートで昇格している人たちばかりです。
私のように係長にあがれずにつまづいているような人がのることはありません。
係長⇒課長⇒部長⇒局長といった出世競争をすべて勝ち抜いた人が自治体の代表としてのっているわけです。
キャリアプラン通り役所人生を送れる人は、同期のなかでも数人しかいません。
上へいけばいくほどポストはなくなりますから、競争は熾烈です。
ある意味、イレギュラー、マイノリティが記載されているわけです。
勤務時間(一日のタイムスケジュール)は99%嘘
採用パンフレットを見ると、もれなく定時退庁している人ばかりです。
一度、みなさんも確認してみてください。
府省庁、都道府県、市区町村、みんな定時退庁しているはずです。
規則正しく、出勤⇒お昼休み⇒退庁といった感じで、見るからにホワイト企業に見えるはずです。
しかし、実態は異なります。
日付が変わるまで残業している人、部署全体が残業が当たり前の世界で仕事していることも往々にしてあります。
ただ、パンフレットは決して「詐欺」ではありません。
職員の”とある一日のスケジュール”なわけですから、365日もあれば1日ぐらい定時退庁するときもあります。
飲み会や出張があれば定時退庁する日もあるでしょう。
「時間ちょうどに出勤してきて、時間通りに退庁する」
こんなことができるのは、超ベテラン職員と超ひまな部署の職員だけです。
多くの若手職員は、
始業時間前にきてメール確認などをすませ、お昼休みは電話を取ながら食べ、残業して帰るんです。
志望動機は人によるが、おそらく嘘
先輩の声として記載されている志望動機は、本当か嘘かが分かりません。
ただ、採用面接で、
- やりたいことは特にないけど、公務員は安定しているので
- 別にどこの自治体でもよかったんですけど、合格したので
- なんとなく
なんて、本当は思っていたとしても答えられる人はそういないでしょう。
ましてや、自治体を代表する採用パンフレットですから、そんなことを言えるわけがありません。
その人の上司を含め、そうそうたる管理職が決裁したうえで公表されているものですからね。
自分の役所人生にもかかわる話になりますから、自分のキャリプランを自分で閉ざす必要はありません。
ともなれば、見繕う。それが人です。
しかし、本当のことを言っている人がいることも事実ですから、すべて鵜吞みにしない程度で読むことが大切です。
採用パンフレットの記載内容に一部「嘘≒理想」が混じっていると言い切れる理由
採用パンフレットには、それぞれが思い描いた「理想」が載っています。
これまで、”嘘”と表現しましたが、正確には”理想”です。
なぜ、そう言い切れるのか。
それは、採用パンフレット自体、他の自治体に志望者をとられないようにするための資料だからです。
多くの職員が毎日残業する生活を送っており、ワークライフバランスなんてあったものではありません!
なんて書けば、この自治体は避けよう・・・と思う人がいても不思議ではありません。
えてして、採用パンフレットに記載されるような部署は、重要なポストです。
自治体を代表した仕事をアピールするときに誰も知らない興味をひかない仕事内容はアピールしません。
例えば、東京都庁の採用パンフレットをみると、「オリンピック・パラリンピック」に関係する部署が大きく記載されていますよね。
そういった部署はみな”激務”です。
その激務部署の中でも勤務態度が悪く人事評価も悪い人が選ばれることはありません。
載るのは、採用後数年の若手職員で、事業を進める(要は目立つ)部署にいて、成績が良好な人です。
だからこそ、志望動機を正直に書く人もいませんし、それを了承する上司もいません。
そのため、採用パンフレットには”理想”が描かれているわけです。
採用パンフレットは正直に現状を記載すべき理由
採用パンフレットを正直に書けば、
激務部署の場合、早くて22時退庁とというスケジュールになります。
これをみて、この自治体を受けることは辞めておこう・・・
こういった人をできるだけ少なくするためにパンフレットには理想を載せるわけですが、本当にそれでよいのでしょうか。
真実を載せて、そのことを覚悟して入庁してきた職員のほうが退職率は下がるのではないでしょうか。
私の周りでは、街づくりを希望して役所に入ったのに水道部局と生活保護課に配属されて退職したとう人がいます。
本庁で仕事ができると思っていたら、出先で作業着で汚れ仕事をすることに耐えきれず辞めていった人がいます。
これはあくまで一例ですが、役所に入ってくるときと、入った後のギャップに耐えきれずに辞めていく人は毎年少なからずいます。
なぜなら、採用パンフレットには”現実ではなく理想が載っている”からです。
公務員の仕事は多く、定年退職するまでにすべてを網羅することは不可能です。
どれだけ小さな自治体でも不可能です。
希望通りの公務員人生を送れる人なんて、ほんの一握りなわけです。
これは働いてきたからこそ言えることで、大学生だった頃の私はこのようなことは思いもしませんでした。
私も、最初に配属を命じられたのは、名前も聞いたことのない出先の部署でした。
私の場合はたまたま心が折れなかっただけで、出先にとばされて退職した人は多く知っています。
こういったミスマッチによる退職を避けるためにも、採用パンフレットを正直に正確につくる必要があると思います。
入庁時にどんな仕事でもやらなければならないのが公務員だ!と思っている人は覚悟が違いますからね。
仮に申込者が減っても、申込者の一人一人の濃度が濃くなるのであれば、それでよしではないでしょうか。
記念受験組も減って、内定辞退者の想定などが容易になれば、採用試験にかける労力も減るかもしれません。
今なら、どの自治体も理想を語っていますから、逆に注目されて申込者が増えるかもしれませんよ。
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