外国人(外国籍)は地方・国家公務員になれる?実は採用可能です。

実は外国人であっても公務員試験に合格することで地方・国家公務員になれます。外国人が帰化制度で日本国籍を取得した場合は日本人として、外国籍のままであれば外国籍として公務員になることができますが外国籍の場合は制限的です。また、地方公務員にくらべ国家公務員は採用自体が限定的です。
外国人が日本国の公務員になることができる理由
国家公務員法・地方公務員法ともに、公務員試験の採用応募資格として「日本国籍を有する者」との明記はありません。法律上は外国人が日本国の公務員になって働くことは可能です。
法律上に明記がないとはいえ全てが自由なわけではありません。判例や政府見解により 「公権力の行使または公の意思形成に直接関与する職(=いわゆる基幹的公務員)」は日本国籍が必要とされています。つまり、外国籍の人は、公権力行使に直接関与しない職務であれば採用可能です。
- 最高裁判例(昭和49年、東京都管理職訴訟)
→ 「外国人を地方公務員に任用すること自体は禁止されていないが、政策決定や公権力の行使に直接関与する職務には任用できない」 - 総務省通知(昭和58年)
→ 外国人任用は各自治体の判断。ただし基幹的職務は国籍要件あり。
外国人は国家公務員になれないが一部で例外あり
国家公務員は原則、外国籍では「通常の国家公務員(総合職・一般職)」にはなれません。法律上は明記されていませんが、政府の公式見解(人事院通知、国会答弁など)は「公権力の行使や国の意思形成に直接関わる職務は日本国籍を要する」と一貫しており、国家公務員試験の募集要項で「日本国籍を有すること」が条件に入ることが多くなっています。そのため、国家公務員(行政職・総合職・一般職)は日本国籍が必須になりますので公務員試験を受験することすらできません。
国家公務員の外国籍採用例
ただし、例外もあり、研究職・技術職(法人職員を含む)、任期付きの専門職、非常勤職員などで外国籍の採用事例があります。
- 研究職・技術職
国立研究開発法人(理化学研究所・産総研など、大学共同利用機関、国立大学法人など※厳密には大学は2004年以降、国家公務員ではなくなっているため「国家公務員」ではなく「法人職員」となり国に準じる立場での採用 - 非常勤職員(アシスタント、研究補助など)
裁判所通訳・特任研究官など契約職員として採用 - IT・AI・国際法務など専門的知識を持つ外国人(任期付職員制度)
地方公務員に比べて、国家公務員の外国籍の採用はかなり制限的になっています。
外国人は地方公務員になることは可能だが職種や役職に制限あり
地方公務員は国家公務員に比べ、外国人の登用は一定数あります。最高裁判決「外国人を地方公務員に任用すること自体は禁止されていないが、政策決定や公権力の行使に直接関与する職務には任用できない」の趣旨に基づき、外国人が地方公務員に雇用される職種は限定的であり、かつ昇進も日本人とは異なります。
外国籍では就けない「公権力の行使」の職として市税の滞納処分、開発行為の規制、食品衛生の監視などがあります。なお、国籍条項を撤廃せず外国籍の採用を認めていない地方自治体も多くあります。地方自治体の規模が大きくなればなるほど国際的な業務も増えますので国籍条項を撤廃している印象です。
主な地方自治体の外国籍の採用人数
下記は主な地方自治体の外国籍の採用人数です。大阪市の例では、職員数約35,000人に対し外国籍は約20人ですので、全体の0.06%程度となっています。
自治体 | 外国籍職員数(最新公開時点) | 採用の特徴 |
川崎市 | 約60人(2023年度時点) | 全国で最も積極的に採用。事務職・技術職ともに受験可。1996年には 在日韓国・朝鮮籍の職員が課長補佐級に昇進。ただし「部長級以上の基幹的ポスト」は日本国籍要件あり。 |
京都市 | 約30人(2022年度) | 一般行政職や技術職で採用。市立病院や教育関連でも外国籍採用あり。 |
大阪市 | 約20人(2022年度) | 技術職中心に採用。事務職も受験可だが、課長級以上の管理職昇任制限あり(昇任不可)。 |
東京都 | 数十人規模(正確数非公表) | かつては外国籍も受験可だったが、1990年代以降は「管理職昇任不可」という制限付きで採用。現在も事務系職種の正規採用で「日本国籍要件あり」が基本、技術系・専門職で採用あり。 |
横浜市 | 約10人(2022年度) | 技術職・医療職が中心。一般事務は国籍要件あり。 |
上記から外国人が地方公務員になることは制度上できても、かなり狭き門だということが分かっていただけるかと思います。仮に採用されても、地方自治体の運営に関わるような役職に就くことはできません。
東京都豊島区の委託先で中国籍の職員が個人情報を流出させた事件
2023年11月24日、東京都豊島区の池袋パスポートセンターで個人情報が書かれた付箋紙を盗んだとして、警視庁公安部は中国籍の女を書類送検しています。
東京都や警視庁によれば、被疑者は2020年5月~23年3月の間、パスポートセンターの業務を受託するエースシステム(東京都足立区)の契約社員として窓口で勤務。旅券申請者が窓口で提出した戸籍謄本や住民票をコピーしたほか、紙に書き写したり、窓口でのやりとりを録音したりするなどして、1920人分の個人情報を持ち出していたとみられる。
本事件を受け、外務省は即座に、パスポート発給窓口の担当者を“日本国籍を持つ人物”に限定するよう各都道府県に通知を出している。
東京都はパスポートという個人情報のなかでも最重要の情報の取り扱いについて、委託先の会社の契約社員の国籍を確認していなかったことは大きな問題ですが、この事件は現在、日本国内で議論されているスパイ防止法の必要性について大きな影響を与えた事件といえます。なぜなら、日本における中国、韓国、北朝鮮などによる諜報活動では帰化した人物や企業による工作活動が確認されているからです。
まとめ
一部制限はありますが、外国籍でも国家・地方公務員になることはできます。
- 外国籍は非正規職であれば国家・地方公務員になれる。ただし限定的。
- 外国籍は正規職員として地方公務員になれる。国家公務員(総合職・一般職)にはなれない。ただし、基幹的職務(意思決定・公権力行使)には就けず役職にも制限がある。
以上は外国人が外国籍を有したまま公務員になる場合という前提です。外国人が帰化制度を利用して日本国籍を保有した場合は一般的な公務員試験を突破すれば誰でも国家・地方公務員になることができます。