公務員は古い!時代遅れ!
このような声があがることに私は反論の余地がないと思っている。
確かに事実だ。
何も間違っていないと思う。
未だに出退勤はハンコだし、紙で決裁をとらないといけない。
メールではなくFAXでやり取りすることもしばしば。
完全なる年功序列だから、どれだけ成果を上げても嫌われれば出世できないし、給料も変わらない。
もちろん、パワハラもセクハラもある。
これらの事実と世間の批判を全面的に受け入れたうえで、言いたいことがある。
それは、、、
公務員の誰しも、好きでやってない!ということだ。
別に、思考停止して非効率なやり方を選んでいるわけではない。
公務員の世界でペーパーレス化が不可能な理由
ペーパーレス
という言葉が流行って久しいが、
公務員のペーパーレス化は全く進んでいない。(個人的にはペーパーレス化を無理矢理進めているから逆に手間が増えている)
なぜなら、不可能だから。
公務員の仕事をすべてペーパーレス化したら公務員はうれしい。
なのに、なぜ進まないのか
それは、電子ではなく紙が必要な場面が多いからだ。
管理職や議員のほとんどは紙文化
公務員は年功序列なので、
管理職は当然、40歳以上になる。
40歳の課長であれば時代に合わせてくれる人も少なくない。
しかし、これが50歳を超えると途端に紙になる。
局長や部長への説明のためだけに何枚も何枚も印刷して、
レクで1文字でも修正があればまたうち出し・・・
不毛なことはわかっているのだが、これを批判するつもりはない。
そもそも、今の幹部職は紙文化で育っている。
一度、自分の両親を思い出してほしい。
60歳の親がスマホを使いこなしているだろうか?
私ですら、電話とメールとネットサーフィンぐらいしか携帯の機能なんて使いこなせていない。
実際に、ある調査では、ネットリテラシーが低いのは幹部職であることがわかっている。
ウィルス対策としてメールの開封実験をしたところ、開封したのはほとんどが幹部職だったそう。
また、国会議員、県会、市会などの議員も基本的に高年齢だ。
30代はそう多くない。
議員は何か不満があれば、聞きたいことがあれば、管理職を呼び出して、
管理職が頭を下げながら資料を片手に説明しにいかなければならない。
ネット会議でもいいという議員は存在しないと言っていい。
なぜなら、議員からすれば、メリットが存在しない。
一言いえば、管理職が根拠資料を準備してペコペコ説明しにきてくれるわけだから。
これまで多くの議員の質問を受けてきたが、
メールでデータを送ったので見てくださいで済んだことなど1度たりともない。
必ず、資料を持参して直で説明を求められる。(たとえそれが時間外でも・・・)
そうなれば、役所の代表(幹部職)と市民の代表(議員)が紙の資料で説明をすることで同じ方向を向いているのだから、
そんな流れに逆らって若手職員が生きられるほど公務員の世界は甘くない。
なお、身体的な理由もある。
悲しいことに、年齢を重ねるごとに視力とともに小さい文字が見えなくなる。
ネットを使えない人が主な相手
霞が関やセキュリティのしっかりした大企業にはわからないかもしれないが、
基本的に地方自治体の窓口となる役所には出入自由だ。
何のセキュリティもないから、放火や人が暴れる事件が起こることもしばしば。(それでもフリーにしなければならないのが役所のこわいところ)
一度、役所の窓口に立ってみてほしい。
自由使用とはよくいったもので、日中、これほどまでに人がくるのかというぐらい人がくる。
相談にくる人の多くは高齢者だ。(もちろん、暇つぶしや涼みに来ている人もいるが)
その高齢者に対して「どこどこにのっているので~検索してください」は通じない。
電子化しタブレット端末で説明しても見えないで一蹴される(そもそもネット自体に抵抗があるので見ようともしていないが)
説明用に電子機器を置いても、その電子機器を触れないのだから意味がない。
ネット?なにそれ?
ならまだしも、場合によっては、
ネットなんて使えない!バカにしているのか!
なんて激高する人もいる。
そもそも、高齢者でなくても、
役所にきて、自分の時間を割いた結果、
自分で調べてくれなんて返答されて激高しない市民なんていない。
分からない、分かろうともしない人たちを手とり足とり教えることが前提の仕事だと思われているから、
そこに少しでもよどみがでると人々は苦情を言うのだろう。
役所というのは、そういったネットが使えない人を相手にしなければいけない職業だといえる。
(役所の仕事がAIに置き換わると言われても絶対に置き換わらない理由であると個人的には思っている)
事実、日本では超高齢化が進んでいるのだから、その層に寄り添うのは当たり前だともいえる。
なお、若者なんてほとんどいない。
なぜなら、若者は役所にいく前にネットで調べるからだ。
無駄足をふむ時間があるなら調べた方が早い。
やはり、生まれて物心がついたころにネットの世界に触れられている若者は強い。
もしくは、仕事で忙しくて、役所になんて行ってられないか・・・。
つまり、役所の構造上、紙をなくすことはできない。
どれだけペーパーレス化を叫ぼうが、
高齢者ほど選挙にいき、その結果、議員が当選するわけで、
そのどちらもペーパーレス化なんて望んでいないわけだから、
公務員がどれほど頑張っても、ペーパーレス化できる仕事は限られている。
メール不可、FAXか電話のみ対応という民間企業もある
大企業は分からないが、
中小企業、ほんとうに小規模な会社になってくると、メール文化はない。
提出資料は手書きだし、すべてFAXでしか発注できないこともある。
基本は電話。
そんな会社と取引しなければいいとすっぱりきれるのが民間企業のいいところではあるが、
公務員は役所はそうはいかない。
公務員はそういった会社を育てるために発注しなければいけない。
そもそも相手が対応していないんだから、こちらが合わせるしかないのだ。
セキュリティ対策によってメール不可の場合もある
公務員は情報漏洩には敏感だ。
それも過剰なまでに。
つまり、外部からの情報をメールで・・・と思っても受信できない。
できても、添付ファイルはウィルスに感染されている可能性があるためひらくことができない。
そんな場合もある。
だから、FAXがなくならない。
もちろん、これは役所側の問題だが、情報漏洩したら、
FAXのことなんて忘れて総叩きに合うことが明白だから、踏み切れないのだろう。
正直、業務している身からすれば、めんどくさいことこの上ないが。
公務員の世界は無駄を強要される
紙の無駄使いは税金の無駄。
環境破壊。
そんなことを言われて、はや十数年。
今や、不要になった資料をは、基本的に裏紙印刷に使わなければならない。
しかし、裏紙にできるのは個人情報や機密情報のない資料でないといけない。
それを判断するのは職員だ。
その職員が1枚1枚判断する時間、仮に時給が2,000円だとして、
明らかに新しい紙を買ったほうが税金の有効活用ではないだろうか。
やっかいなことに、もし裏紙で個人情報が漏洩した場合、
世間に公表され、担当者は懲戒処分のうえ左遷される。
かなりのリスクがあるから、適当に仕分けすることはできない。
本当に不毛だ。
しかし、公務員はその無駄を強要される。
勤務部署の空調もそう。
エアコンが経費節約のために使えない部署も多いが、
夏場の30℃を超えるなかで仕事をしている職員の作業効率を考えてことはあるだろうか。
冬も然り。
このことにいち早く気がついた兵庫県姫路市はエアコンの設定を緩和した結果、
職員の作業効率があがり、残業が減ったそうだ。
誰しも当たり前に考えれば、税金を無駄使いしている作業はどっちか分かるはずだが、
なぜか、無駄を強要される。
そのうえで、公務員は古い!遅れていると揶揄されるわけだから、なんとも悲しい。
AI化で公務員の仕事がなくなる公務員不要論
公務員がいらなくなるとき、それは、国民が公務員に頼らなくなったときだと考えている。
AIが発達すれば公務員は全員リストラすればいいと話も聞くが、
AI化したところで、その情報を得る国民が理解できなければ、結局、職員が説明しないといけない。
少しネットで検索すれば答えが分かるような内容があったとしよう。
驚くほどに、人は自分で調べない。
電話をかけてくるのだ。
議員は説明をしにこいと電話してくるのだ。
このような状況で、ネットにあるので調べてくださいといっても、
役所が偉そうに!とクレームが入るだけ。
何も、ネットにQAを載せることはAI化でもなんでもない。
にもかかわらず、人は何も調べない。
とどのつまり、現時点で、AI化が進行しても公務員のリストラはないと考えている。
逆にいえば、公務員が一番恐れることは国民のネットリテラシーが上がることだろう。
私も現役で公務員(地方)ですが、書かれている内容は概ね正しいと感じます。
同時に絶望的な感情が芽生えました。
それでも戦い続けたいと思います。素晴らしい考察ありがとうございます。