公務員の役職と階級が多すぎて分かりにくい!実はそんなに偉くないって知ってた?

公務員の役職は複雑です。地方公務員として10年以上勤務していますが、県や国の人と仕事をするときに役職をみて誰が上で下かなんて全く分かりません。地方公務員の役職ですら難しいのに、国家公務員の役職になるともっと複雑になるから厄介です。
「主査」「主幹」「課長補佐」といわれても、何が何やらですよね。「相談役」「専門官」はどの階級なんだろう?と検索してみても、サイトやブログ毎にいっていることが違います。これは地方自治体がそれぞれ違う役職と階級を設定していたり新ポストを作ったりすることが原因です。
公務員も定年延長によって役職定年制度が始まり、より複雑な状況になっていますので、一例をあげながら解説します。
公務員の役職と階級の違い
公務員の「役職は身分」「階級は給料」を決めるものです。
- 「役職」とは、係長、課長、部長など、その人の立場や権限
- 「階級」とは、係長級、課長級、部長級など給料表上の枠組み
例えば、公立学校の校長のことを課長と呼ぶ人はいませんが給与表上は課長級に該当します。この場合、役職は校長、階級は課長級となります。
下記の表は総務省が公表している給料表です。>>「地方公務員の職務の級の構成について(行政職給料表(一))(総務省)」

この表に基づいて、学校の校長先生を考えてみると、役職は同じ校長ですが、課長級で見てみると県立学校の校長は6級、市立学校は4級となっています。6級は4級よりも給料が高いわけではありません。それぞれの自治体が給料を支給するために設けているものが階級になります。
公務員の役職階級は、国、都道府県、市区町村で違います。また本省と出先機関でも役職が異なり、公務員の世界を伝えるサイトやブログで主張が異なる原因になっています。情報が間違っているわけではなく、所属先によって違うだけです。
以下の表は独自構造の給料表を用いる都道府県・指定都市における違いを表したものです。>>「独自構造の給料表を用いる都道府県・指定都市における級別標準職務(平成21年)総務省」

上表では、同じ階級である係長級でも、東京都は3級、大阪市は4級、福岡市は5級とそれぞれ違っています。住民から分かりにくいとして階級を変更している自治体もありますが、公務員は役職で仕事をするため改善されている状況とは言い難い現状です。
公務員組織の体制は、大きく分けて下記の区分になります。
- 国、政令指定都市 「係⇒課⇒部⇒局」
- 都道府県 「班⇒課⇒局⇒部」
一般職(副市長や副知事などからは特別職)のトップは、政令指定都市は局長ですが、都道府県は部長となります。
公務員の役職と階級が分かりにくい理由
一例ですが、いろいろなサイトやブログで紹介されている階級を下記に示します。
- 市A 主事<主任<主査<副主幹<係長<主幹<課長補佐<参事<課長<出先機関の長<次長<部長
- 市B 主事<主任<主査<係長・班長<課長代理・課長<部長(次長)<局長(理事)
- 市C 主事<主任<主査<副主幹<係長・班長<課長代理<課長<次長
- 市D 役職なし<担当係長・係長<担当課長・課長<担当部長、部長<担当局長、局長
- 県E 主事<主任<主査<係長<副主幹<課長補佐<総括課長補佐<主幹<室長<課長<次長<部長
- 国F 係員<主任<係長・主査<課長補佐・専門官<室長・調査官<課長・参事官<次長・審議官<部長・総括審議官<官房長・局長・政策統括官<省名審議官<事務次官
- 国D 係員<主任<係長、主査<企画官、専門官<室長<課長補佐<課長<局次長、審議官<部長<局長<官房長<外局長官<事務次官
何が何やらですよね?それもそのはずで、国家公務員も地方公務員もすべて同じ階級と役職のところはありません。
公務員の役職と階級がわかりにくい理由は下記のとおりです。
- 国家公務員と地方公務員で役職も階級も違う
- 地方自治体でも、都道府県や市区町村で異なる
- 市区町村でも、東京都と14の政令指定都市は独自構造を採用している
- 出向・派遣(公務員が別の組織へ一時的に勤めること)によって役職と階級が上下する
- 国や地方でも、本庁と出先機関によって役職と階級が上下する
- 組織改編で定期的に新ポストが生まれたり既存ポストが統合されたりする
この結果、
- 出先では「課長」だが、本庁に異動になれば「係長」
- 役職は「主査」だが、他都市からみれば階級的には「役職のない担当者レベル」
- 県の「副知事」だが、本省に戻れば「課長」
- 「課長補佐」といっているが、自治体によっては課長補佐という役職自体存在しない
といったことが常に発生しています。
事務所長が係長級?
事務所長と聞いて、所長というだけあってトップのイメージなので部長級と思いきや、実は係長級なんてこともあります。国の出先機関に多いです。地方自治体でも、A事務所長は部長級だがB事務所長は課長級、というケースも多く、パッと見での判断は不可能です。
課長補佐は係長級以下?
課長補佐と聞くと課長を補佐するレベルなので係長級以上だと思いませんか?国では重要なポストで課長補佐なくして仕事なんてまわりません。少なくとも係長よりは上だと思いがちですが、係長になれなかった担当者を年功序列で役職名をつけているだけで実は担当レベルの地方自治体も多いです。課長級として課長補佐がいる自治体もありますから、一概に判断できませんが、課長代理や課長補佐といった役職は上でもあり下でもあります。
主査の上が係長?
主査と係長であれば、係長のほうが上だと思いきやそうでもありません。主査のほうが係長よりも上の自治体もあります。
主幹は課長級?
主幹は課長と係長の間です。給料は課長級ですが、仕事内容は係長級といった微妙な立場です。担当課長と同じとする自治体もあります。
”担当”課長と課長は違う?
課長は課に1名です。しかし、1つの課では課長1名では対応できないほどの業務を抱えている部署もあります。その場合、担当課長をおいて事務を分担します。同じように、担当係長や担当部長といった役職はそのために設けられています。
担当課長は、課長級ですが、課長よりも階級は下になります。主幹、担当課長、課長が入り混じっている自治体もあります。
係長は偉い?
係長級までは自動的に昇進する制度の地方自治体もあれば、係長級から人事評価制度を導入して選ばれた職員しか出世できないとしている自治体があります。
- A市:出世競争を勝ち抜いた選りすぐりのエリート係長
- B市:誰もが年功序列でなれる係長
自治体によって扱うレベルが違います。一方、国では自動的に係長級まで昇進し課長補佐からは出世競争になります。係長と聞いて出世してるな~仕事ができるんだろうな~と印象をもっているなら、それは間違いかもしれませんし正解かもしれません。
公務員の役職・階級を気にするのは公務員だけ
民間企業の場合、役職があっても全員”さん”と呼ぶこともありますが、公務員の世界は年功序列の階級社会です。階級がすべてであり、同じ階級であれば年功序列になります。
課長や部長を”さん”と呼ぶことはありえませんし、そんな若手職員がいれば即刻人事異動で左遷させられます。民間企業からの転職組は気を付けたほうがいいかもしれせん。

これまでは一般行政職について解説しましたが、例えば、警察官の巡査部長は担当レベルになります。部長と聞くとかなり偉いイメージですが、警察官においてはヒラ社員と同じです。自治体からすれば「学校=課」ですから、学校の教頭先生は係長級、校長先生は課長級です。
だからどうしたという話で、こんなことを気にしているのは公務員の中の人だけで、国民からすればどうでもいい話です。