公務員の役職は複雑です。
私も地方公務員で長年勤務していますが、未だに県や国の人と仕事をするとき、役職をみても誰が上で下かなんて全く分かりません。
地方公務員の役職ですら難しのに、国家公務員の役職になるともっと複雑になるから厄介です。
いきなり、「主査」「主幹」「課長補佐」といわれても、何が何やらですよね。
どの階級なんだろう?
と検索してみても、サイトやブログ毎に言っていることが違います。
私からみても違うなと思う点があります。
本記事では公務員の役職について、他とは違った視点から解説します。
公務員の役職と階級の違い
公務員の役職とは身分、階級とは給料を決めるものになります。
- 「役職」係長、課長、部長など、その人の立場や権限を表す
- 「階級」係長級、課長級、部長級など給料表上の枠組み
例えば、
公立学校の校長先生のことを課長と呼ぶ人はいませんが、給与表上は課長級に該当します。
この場合、役職は校長、階級は課長級となります。
以下の表は総務省が公表している給料表です。
「地方公務員の職務の級の構成について(行政職給料表(一))」総務省
この表に基づいて、さきほどの校長先生を考えてみると、
役職は同じ校長ですが、階級は県立学校の校長は6級、市立学校は4級となります。
6級だから4級よりも給料が高いわけではありません。
あくまで、その自治体が給料を支給するために設けてものが階級になります。
公務員の役職階級は、国、都道府県、市区町村で違います(早く統一してほしいと思っているのは私だけではないはず)。
公務員の世界を伝えるサイトやブログをみて違いがあるのはそのためです。情報が間違っているわけではありません。
以下の表を見てください。
「独自構造の給料表を用いる都道府県・指定都市における級別標準職務(平成21年)」総務省
上表からも分かる通り、
同じ階級であるはずの係長級ですら、東京都は3級、大阪市は4級、福岡市は5級と違っています。
※平成21年のため、現時点で変更されている自治体もあるようです
公務員の役職順位のイメージ(パターン別)
独自構造の給料表を用いる都道府県・指定都市における違いは上表にて説明しました。
次に各サイトが紹介している公務員の主な役職の順番を紹介します。
- 市 主事<主任<主査<副主幹<係長<主幹<課長補佐<参事<課長<出先機関の長<次長<部長
- 市 主事<主任<主査<係長・班長<課長代理・課長<部長(次長)<局長(理事)
- 市 主事<主任<主査<副主幹<係長・班長<課長代理<課長<次長
- 市 役職なし<担当係長、係長<担当課長、課長<担当部長、部長<担当局長、局長
- 県 主事<主任<主査<係長<副主幹<課長補佐<総括課長補佐<主幹<室長<課長<次長<部長
- 国 係員<主任<係長・主査<課長補佐・専門官<室長・調査官<課長・参事官<次長・審議官<部長・総括審議官<官房長・局長・政策統括官<省名審議官<事務次官
- 国 係員<主任<係長、主査<企画官、専門官<室長<課長補佐<課長<局次長、審議官<部長<局長<官房長<外局長官<事務次官
国家公務員も地方公務員も概ね同じですが、ところどころで違っているのが分かるとおもいます。
基本的に、組織の体制は、
国や政令指定都市の場合、「係⇒課⇒部⇒局」
都道府県の場合、「班⇒課⇒局⇒部」
となりますので、一般職(副市長や副知事などからは特別職)のトップは、政令指定都市は局長ですが、都道府県は部長となります。
公務員の役職と階級が分かりにくい理由
なぜ公務員の役職と階級がわかりにくいかというと、
- 国家公務員と地方公務員では役職も階級も違う
- 地方自治体でも、東京都と14の政令指定都市は独自構造を採用している
- 上記に該当しない都道府県や市区町村もそれぞれ役職と階級が違う
- 出向(公務員が別の組織へ一時的に勤めること)によって役職と階級が上下する
- 国や地方でも、本庁と出先機関によって役職と階級が上下する
ということがあげられます。
この結果、
- 出先では「課長」だが、本庁に異動になれば「係長」
- 役職は「主査」だが、他都市からみれば階級的には「役職のない担当者レベル」
- 県の「副知事」だが、本省に戻れば「課長」
- 「課長補佐」といっているが、自治体によっては課長補佐という役職自体存在しない
といったことが常に発生するわけです。
事務所長が係長級?
事務所長と聞いて、所長というだけあってトップなのかと思いきや、実は係長級だなんてこともあります。
油断してどうせ係長級だろ?と対応していると、本当に部長級だったりしますから、本当に厄介です。
課長補佐はヒラ社員?
課長補佐と聞くと課長を補佐するレベルだと思いませんか?
であれば、少なくとも係長よりは上にいると思いがちですが、実はヒラ社員レベルの自治体もあります。
ややこしいことに、課長級として課長補佐がいる自治体もありますから、一概に判断できません。
主査の上が係長?
主査と係長であれば、係長のほうが上だと思いきやそうでもありません。
主査のほうが係長よりも上の自治体もあります。
主幹は課長級?
主幹は課長と係長の間です。
給料は課長級ですが、仕事内容は係長級といった微妙な立場です。
”担当”課長って何?
課長は課に1名です。
しかし、1つの課では課長1名では対応できないほどの業務を抱えている部署もあります。
その場合、2つ課をつくると業務を分けることになりますから、担当課長をおくわけですね。
担当課長は、課長ですが、課長よりも下の身分です。
主幹と担当課長は同じ立ち位置のため、どちらか一方の階級を定めている自治体がほとんどです。
同じように、担当係長や担当部長といった役職はそのために設けられています。
係長は偉い?
係長級までは自動の自治体もあれば、係長級から人事評価制度を導入している自治体もあります。
つまり、
- A市:出世競争を勝ち抜いた選りすぐりの係長
- B市:誰もが年功序列でなれる係長
ぐらいにレベルが違います。
もちろん、お互い係長級ですから、そこに違いはありません。
しかし、係長と聞いて出世してるな~仕事ができるんだろうな~と偉い印象をもっているなら、それは間違いかもしれませんよ。
公務員の世界では役職がすべて
民間企業の場合、役職があっても全員”さん”と呼ぶこともありますが、公務員の世界は年功序列の階級社会です。
階級がすべてであり、同じ階級であれば年功序列になります。
課長や部長を”さん”と呼ぶことはありえませんし、そんな若手職員がいれば即刻人事異動で左遷させられます。
>>>「民間企業経験者枠で公務員に転職した人が注意したい嫌われる3つの言動」
係長がどれだけ反対しようと、課長や部長が賛成なら、組織としては賛成になります。
それが公務員の世界です。
公務員の役職・階級を気にするのは公務員だけ
公務員の役職を気にする必要があるのは公務員だけで、一般人は何も気にする必要はありません。
警察官の巡査部長は担当レベルです。
部長と聞くとかなり偉そうなイメージですが、警察官においてはヒラ社員になります。
学校の教頭先生は係長級、校長先生は課長級です。
学校のトップである校長先生ですが、実は自治体からすれば「学校=課」ですから、いくら出世しても課長ということです。
しかし、こんなことを気にしている人は中の人だけで、国民からすればどうでもよく、警察官は警察官ですし、校長先生は校長先生です。
役職に関係なく、公務員としての職務をまっとうすればいいだけです。