みなし公務員や準公務員は、定義上、公務員ではありません。
あくまで、民間企業に勤めるサラリーマンです。
しかし、公務員でもあるのです。
公務員といいながら、公務員ではない、その特殊な身分を解説します。
この違いを理解しておかなければ、
副業ができるのにできないと勘違いして機会損失をしてしまうかもしれません。
みなし公務員・準公務員や準公務員の定義
まず、その明確な定義ですが、
「公的な役割を担う法人に関する 調査研究 報告書 – 総務省」にはこう記載されています。
みなし公務員とは、公務員ではないが当該法人の設立根拠法において、
「刑法、その他の罰則の適用については、法令により公務に従事する職員とみなす」旨の規定(みなし公務員規定)を持ち、
罰則について刑法が適用されるものをいう。
「みなし公務員規定」とは、
刑法(明治 40 年法律第 45 号)その他の罰則の適用について、法令により公務に従事する職員とみなすことにより、贈収賄罪等の適用を可能とする規定です。
このことから、みなし公務員とは、
身分上は民間企業のサラリーマンだが、法令により公務に従事する職員とみなす人のことを指します。
法令により規定されていますので、どっかの誰かが分かりやすい表現のために造った言葉ではありません。
なぜこのような規定を設けているかといいますと、単純にいえば、日本社会における影響力が大きいからです。
その仕事内容の公共性・公益性が高いため、民間企業とはいえ日本の経済に大きく関与します。
例えば、ストライキ
公務員はストライキが禁止されていますが、みなし公務員も同様に禁止されています
また、「準公務員」と「みなし公務員」は実は同じ意味です。
公務員の身分と”みなす”
公務員の身分に”準ずる”
読んで字のごとくです。(本記事では、みなし公務員に統一します)
みなし公務員・準公務員の一覧リスト
突然ですが、問題です。(あえて、抽象的な言い回しにしています・・・)
- NTTはみなし公務員でしょうか?
- JRはみなし公務員でしょうか?
- 日本郵便株式会社はみなし公務員でしょうか?
これらの企業について、仕事内容の公共性・公益性が高いことを背景に、
すべてみなし公務員だとする情報まとめサイトが多いので、注意してください。
「公的な役割を担う法人に関する 調査研究 報告書 – 総務省」によると、
みなし公務員と類似のものとして、みなし公務員規定を持たないが、
その設立根拠法に収賄等についての罰則規定を持つ法人がある(例:日本たばこ産業、NTT 東日本、JR 北海道等)が、
これら法人に係る罰則の適用は、それぞれの設立根拠法の規定が適用されるものであり、刑法の規定が適用されるものではない。
したがって、これら法人は、みなし公務員に該当しない。
これらの定義をもとに、詳しくみていくと、
実は、
- NTT東日本、NTT西日本⇒みなし公務員ではない
- JR北海道⇒みなし公務員
- JR東日本、JR西日本、JR東海⇒みなし公務員ではない
- 日本郵便株式会社の従業員(郵便認証司、内容証明の業務に従事する者及び特別送達の業務に従事する者に限り)⇒みなし公務員
となっています
これがさきほどの問題の答えです。(あえて抽象的に書いたのはそのためです)
要は、みなし公務員規定をもっていない⇒刑法の規定が適用されない⇒みなし公務員ではない、というロジックです。
みなし公務員規定の例としては「日本年金機構」があります。
「日本年金機構法」
(役員及び職員の地位)
第二十条 機構の役員及び職員(以下「役職員」という。)は、
刑法(明治四十年法律第四十五号)その他の罰則の適用については、法令により公務に従事する職員とみなす。
このように、法令に「法令により公務に従事する職員とみなす」ような規定がある
これが、みなし公務員の根拠です。
他にも、
- 企業年金連合会(厚生年金保険法)
- 自動車安全運転センター(自動車安全運転センター法)
- 生命保険契約者保護機構(保険業法)
- 国民年金基金連合会(国民年金法)
- 原子力発電環境整備機構(特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律)
- 日本消防検定協会、危険物保安技術協会(消防法)
- 高圧ガス保安協会(高圧ガス保安法)
- 日本電気計器検定所(日本電気計器検定所法)
- 軽自動車検査協会(道路運送車両法)
- 日本銀行の役職員(日本銀行法)
- 国立大学法人の役職員(国立大学法人法)
- 東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の役職員(東京オリンピック・パラリンピック特別措置法)
などがあります。(もっと多いので有名どころをピックアップしています)
もっと細かく言えば、さきほどの日本郵便のように、その業務に携わる人のみがみなし公務員に該当するというケースもあります。
病院に勤務する医者や看護師などの医療従事者も、公的機関が経営する病院では準公務員扱いになり、
民間企業が経営する病院では準公務員扱いにはなりません。
このように、厳密に理解していなくても、生活には一切支障をきたすことはありません。
しかし、これから、就職、転職しようと考えている人は、厳密に理解しておく必要があります。
それには、大きな理由があります。
ストライキなどの団体交渉権もそうなのですが、一番おおきなもの、
それは、副業が可能かどうかです。
みなし公務員・準公務員は原則、副業禁止
みなし公務員に該当すれば原則、副業が禁止されています。
こんなニュースが話題になったことをご存知でしょうか。
総務省は、2020年4月28日 日本郵便の社員2615人が総務相の承認を得ずに農業など兼業をしていたとして、戒告などの処分を行う方針を固めた。
対象は、内容証明など重要な郵便物の処理が認められる国家資格を持つ社員。
資格を持たない社員2人が内容証明に関する業務に従事していたことも確認された。
このニュースを聞いて、疑問に思った人も多いのではないでしょうか。
まず、なぜ総務省が行政処分、懲戒処分を行うのか
あれ?郵政民営化で民間企業になったんじゃなかったけ?
と思った方は少なからずいるはずです。
実は、内容証明郵便とは、差出人が手元に残す写しの内容と同一の文書が送付されたことを証明するサービスのことです。
この仕事に携わるためには、郵政民営化に伴って創設された国家資格「郵便認証司」が必要です。
この資格をもつ社員は、みなし公務員に当たります。
そうなると、副業(兼業)を行うためには、総務相の承認が必要になるんです。
これが、「みなし公務員」という定義を明確にしておく必要がある理由です。
地元の消防団や農業への従事は、特に田舎になればなるほど必須条件になります。
入団をせずに田舎で過ごすことは難しいことで、都市部よりもシビアです。
それらの人をまとめて一律で処分となると少し厳しい気がしますが、
戒告は注意なので、給与にも影響しませんので、一定の配慮があったものと思わます。
何も知らないと、勝手に副業禁止だと思って機会損失してしまう可能性がありますので注意してください。