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地方公務員のきつい仕事No.1はケースワーカー(生活保護担当)

jitchan

若手公務員が多く辞める部署には共通項があります。それは生活保護を担当するケースワーカー業務です。地方公務員の業務は広く何事も一概には言えない部分がありますが、ケースワーカーについては満場一致、圧倒的ナンバーワンのつらさです。

公務員の仕事はきれいなもばかりではありません。同期の中でもずっとスーツを着て地元住民とも一切かかわらず政治の世界のような部署に配属される人と、道路や下水道部局のような常に作業着を身に着けて地元住民の苦情を毎日受け続ける人もいます。正直、採用されてどの部署に配属されるかは「運」です。

最初の配属で運よく避けられたとしても次の異動で配属されるかもしれません。本庁舎でスーツを着て外でランチのようなきれいな仕事をイメージしていると、そのギャップに疲弊することになります。結果、メンタルをやられ休職や退職する可能性もあります。

私の同期や後輩も生活保護の担当になって退職していきました。新規採用職員が毎年何人も辞めていきます。基礎自治体に採用された地方公務員は誰しもケースワーカーになる可能性があります。今のうちに心づもりをしておいてください。

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なぜケースワーカーはきつい仕事なのか

基礎自治体の行政職(事務職)の登竜門とされるのが、地方自治体の生活保護課や福祉課へ配属された生活保護受給者を担当する、いわゆるケースワーカー(略称:CW)です。

その人たちの仕事内容は下記のとおりです。

生活保護とは憲法25条の理念に基づき、国や地方自治体が「健康で文化的な最低限度の生活」を保障しつつ自立を促す制度です。年齢や健康状態、困窮の程度などで毎月の保護費が決まります。希望者は地域の地方自治体に申請。その際、面接対応や受給後の家庭訪問など、行政で生活保護全般を担当する職員を一般に「ケースワーカー(CW)」と呼ぶ。

ケースワーカーで検索すると、相当ネガティブなイメージが強いことが分かります。

  • 「つらい」
  • 「やめたい」
  • 「疲れた」
  • 「異動したい」
  • 「激務」

このマイナスイメージですが、残念ながら本当にそのとおりです。

ケースワーカーの具体的な仕事内容

ケースワーカーの具体的な仕事内容は、生活保護申請と生活保護受給者の自立支援です。生活保護を受けられるのかという相談から既に受けている人の自立支援まで多岐にわたります。

社会福祉法は、CW1人当たり80世帯の受け持ちを標準としていますが、1人当たり100人以上の生活保護受給者を担当する自治体も少なくありません。

「申請者の資産や扶養者を調査したり、受給者を訪問して自立に向けた支援をするのがCWの大きな仕事です。事務作業が膨大で時間的余裕がなく、家庭訪問は週1度、10~20件まとめて行います。預貯金や年金の調査から自己破産の手続きまで行い、面接では7時間ぶっ続けで話を聞くこともある。朝から晩まで働きづめでキリがなく、この業務を始めてから“仕事が終わった”と思って帰宅した日は1日もありません。」

生活保護受給者への家庭訪問は基本的に公用車の使用ができません。徒歩、自転車、バス、電車を利用し面談に出向くことになります。雨も雪も関係ありません。お昼休みも市民には関係ありません。帰庁してからは報告書の作成です。場合によっては土日祝も出勤しなければなりません。一つの仕事が終わってもまた新しい仕事ができるため、常に仕事に追われる毎日を送らなければなりません。

窓口対応が過酷

「窓口で怒鳴られることはしょっちゅうです。精神的な障害を抱えているかたが自らをコントロールできず、感情をあらわにするケースも多い。制度に納得がいかず、『もっとお金が出るはずだ!』と責められることもあります。直接的な暴力こそありませんが、身の危険を感じることは多いです」

生活保護の現場は常に危険と隣り合わせです。暴力をふるってくるような人もいるので、役所の中には必ず警察官OBが在中しています。実際に事件も起きています。職員を殴ったり、唾を吐いたり、補導されることも多いですが、相手は生活保護受給者です。警察はその場しのぎにすぎず、結局のところその相手をするのはケースワーカーです。

近年は生活保護費の支給は銀行振込になっていますが、手渡しも残っています。役所の匂いで今日が生活保護支給日だと分かるほどです。

ケースワーカー業務には手当があるが微々たるもの

ケースワーカー業務には手当がつきます。役所のなんでも手当と批判されることもありますが、1日につき300円程度で月1万円にもなりません。正直、月1万円もらってこの仕事はわりにあいません。もし1万円払えばケースワーカー業務から外してくれるというなら職員全員が払うと思います。個人的には1日1,000円でも割に合わないと思います。

精神的に不安定になり休職する人や退職する職員が多い

「受給者と連絡が取れなくなったのでCWの家庭訪問に同行したら、布団の中で仰向けに倒れて亡くなっていました。テレビがつけっ放しだったので、心筋梗塞などで突然死したのだと思います。傷病が理由で保護を受ける高齢者はとても多く、現場のCWは平均で年1度はこうした場面に出くわしているはずです」

地方公務員の仕事をしていて、自然災害以外で死体を見ることになると思っている人は少ないと思いますが、ケースワーカーに限り日常です。

身寄りのない人が亡くなった場合、引き取り手続きなどはケースワーカーの仕事です。警察はやってくれません。自分で警察や救急車を呼んで対応しなければならない。

そのため、心を病んで休職する者が後を絶ちません。採用年数が短いほど顕著です。私の同期と後輩は退職しました。

ケースワーカー業務の出口は常に「つらい」

最近、話題になった有名な事件を紹介します。

小田原市役所発端となったのは、最近、メディアをにぎわした“あのジャンパー”だ。左胸のエンブレムには「HOGO NAMENNA(保護なめんな)」との文字が躍り、背中には英語でこんな文言が並んでいる。

「私たちは正義。不正を見つけたら追及する。不正受給して市民を欺くのであれば、あえて言う。そのような人はくずである」

ジャンパーを作成したのは、神奈川県小田原市で生活保護を担当する職員。勤務中、保護費受給世帯を訪問する際などに着用していたという。「なめんなジャンパー」の存在が明らかになると、「人権侵害」「信じがたい」など批判の声が巻き起こった。

当然だろう。小田原市は1月17日に会見を開き、「不適切だった」と謝罪し、着用の禁止と関係者の処分を発表した。生活保護制度に詳しい関西国際大学の道中隆教授も呆れ顔だ。「小田原市の職員には生活保護に携わる専門性が感じられません。

生活保護は最後のセーフティーネットであり、圧倒的多数の受給者はまじめに頑張っています。人々の痛みを理解して目配りする取り組みが行政には必要ですが、あまりに配慮を欠いています」

ジャンパーが誕生したきっかけは2007年7月。この時、小田原市で不正受給が発覚し、生活保護を打ち切られた60代男性がカッターで職員を切りつける事件が発生した。

気落ちした職員の士気を取り戻すために当時の係長がジャンパー作成を提案し、これまでに計64人が自費で購入したという。不正受給を許さない心意気やよし、だ。とはいえ、こんなジャンパーを着ていたらいつか問題になるとわかりそうなものだが…。

現在、小田原市には、「おれたちをバカにしているのか」「今からお前らを刺しにいくからな」など脅迫めいた電話がある一方、冒頭のように、市を応援する声もある。同業のケースワーカーからの激励も多数届いているという。

この事例でも明らかなとおり、ケースワーカーという仕事は、どう転んでも出口はつらいものになります。生活保護費の不正受給問題発覚後、世論は公務員を厳しく非難しています。簡単に認めてしまうと国民から総叩きです。一方、生活保護を認めないような厳しい方向に舵をきると、本当に受給しなくては死んでしまうような人がいるとして人権団体、NPO団体、弁護士会、議員団などから批判されます。逆に簡単に認めてしまうと国民から総叩きです。

「自分が生活の申請を認めなかった人が、のちに亡くなるかもしれない。」

そのような精神的に不安定なところに法律を凌駕する業務量が重なります。厄介なことに、年齢に関係なく配属されます。休職する人や退職する人に年齢は関係ありません。

保育士の給料を上げる議論も大切なことですが、個人的にはケースワーカー業務の問題を早急に解決すべきだと思います。明らかに公務員の中で休職、退職する割合が高いです。

全体的に見れば公務員の離職率は低く、異動までの約3年間を粘れば持ちこたえられるかもしれません。しかし、この環境を改善しないことには、これから公務員になろうと考えている人の気持ちに変化がでてくるはずです。

生活保護費を支給して数日でパチンコで使って生活保護費が少ないと騒ぎ立てられるわけです。こちらが反論したら職員が懲戒処分される世界で何が自立支援なんでしょうか。自分のなかで葛藤が生まれ戦い、結果、役所を去るという選択をする人が多くいます。

私はケースワーカー業務の担当をしたことはありません。新規採用時点で最初の職場であったならまだ耐え凌ぐこともできたかもしれない。しかし、今、仮に生活保護課に異動になったとすれば間違いなく退職の道を選びます。

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ABOUT ME
こむいん
こむいん
現役の地方公務員
とある地方自治体の行政職として10年以上働いています。FIREを目指して活動中。
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