公務員の家族が生活保護受給は不正?親の扶養義務はあるの?

生活保護の被保護者調査(令和6年1月分概数)の結果(厚生労働省)によると、生活保護率は1.63%となっており、高齢者世帯が半数以上の55.1%となっています。
生活保護受給については、年金受給額よりも多く支給される、最高裁で外国人への生活保護受給は違法と判決がでているにもかかわらず支給している、不正受給者が後を絶たない、など多くの問題が日本各地で発生しています。一方で、生活保護の受給基準を厳しく制限すると、本当に必要な人が受給できなくなってしまう問題があります。
あちらを立てればこちらが立たぬ、生活保護担当部署に勤務する基礎自治体の地方公務員は疲弊しています。配属されたくない部署ランキングが存在すれば生活保護担当部署は不動の一位を獲得し続けること間違いありません。実際、私の後輩も同期も生活保護課に配属されて退職しています。
生活保護に関する事務は国や地方自治体で分担しています。
- 市町村:申請受付、審査、給付、ケースワークなど
- 都道府県:市町村への助言・支援、制度運営の監督
- 国:制度全体の基本方針策定、予算負担、法律の制定・改正
生活保護の事務を実質的に運営しているのは市町村(基礎自治体)になります。
本記事では、公務員の家族が生活保護を受給する場合の影響などを解説します。
元公務員でも生活保護を受給できる
公務員を退職した元公務員が生活保護を受給することは何ら問題ありません。公務員という身分を失えばただの一般人です。
公務員には失業給付制度がありません。その代わりに退職金手当が支給されます。しかし、懲戒免職処分で退職となれば退職金は支給されませんし、場合によっては実名公表されますので再就職はかなり厳しいものとなります。インターネットで検索すれば名前が出てきますから発覚すればクビ。そうなると、生活保護を受給するという選択肢もでてきます。
生活保護の受給基準
基礎自治体によってプロセスや判断基準は異なりますが、大まかには下記のとおりです。
- 家族の中に稼働年齢層(16歳から65歳まで)の人がいない、もしくは稼働年齢層の人はいるが就労することが不可能
- 年金など生活保護以外での支援援助が受けられる状態ではない
- 預貯金・資産がない
- 扶養義務者からの支援が受けられない
つまり、働くことができず収入や貯金がなく家族や親族にも助けてもらえない人であれば生活保護受給の可能性があります。
現役の公務員でも生活保護を受給することは制度上は可能
実は、公務員だから生活保護が受けられないという規定はありません。実際に申請している人はいませんし、申請しても却下されるだけですが、制度的に可能か不可能かと問われれば可能です。
親族(親、兄弟、息子、娘等)に公務員がしても、生活保護は受給できる
親族から援助を受けられない、受けられても生活するには足りないといえる事情があるなら、親族が公務員でも生活保護は受給できます。
公務員という職業は関係ありませんが、基本的に、自分の親族が扶養できない理由が明確でないと生活保護は受けられません。
生活保護は世帯単位です。しかし、その世帯から抜けてしまえば親族に扶養義務はありません。つまり、不正受給には該当しません。
親が生活保護を受給する場合、公務員(兄弟、息子、娘等)に扶養義務 はない
生活保護法では、扶養能力がある場合は地方自治体が扶養義務者に対して扶養するように協議することと定めています。あくまで協議であって扶養を義務付けられているわけではありません。扶養できるかどうかの判断は役所が判断するのではなく個人に委ねられます。
公務員であっても「親を扶養することはできません」と役所に回答すれば扶養義務は発生しません。ただ、親と同一世帯で同居している状況であれば扶養義務は発生します。
つまり、公務員の親が生活保護を受けるということは、親との縁を切ることと同義です。親族が扶養できないから生活保護が受給できるわけで、いつでも助けられる関係性が分かれば不正受給にあたり問題です。
一方、生活保護法では扶養能力があるにもかかわらず扶養しない人に対して地方自治体は家庭裁判所に申し立てをすることができます。公務員の平均年収から扶養能力は十分にあると判断される可能性もあります。
公務員の親族が生活保護受給なんて許されるはずがない!扶養しろ!など市民感情としては納得できない人も多いですし理解を得ることは難しいです。確かに、扶養できる金銭的な余裕があるにもかかわらず扶養できないとして生活保護受給をさせている公務員もいると思います。しかし、家庭をもって子どもを育てながら住宅ローンを返済している公務員が親を養い続けることはそう簡単なことではありません。
家族に生活保護受給者がいても就職活動に影響はない
生活保護を受けている家族がいると、その兄弟や子供は公務員試験や就職する際に不利になるとよく言われますが、誤解です。生活保護を受けている本人は影響しますが、身内は関係ありません。
そもそも民間企業は親族が生活保護を受給しているかどうか調べようがありません。公務員試験においても居住地以外の自治体を受験すれば分かりようがありません。居住地の自治体を受験しても、親族を養うために公務員になるという理由に不利になる要素はありません。