公務員もクビ、仕事ができない職員はリストラ(分限免職処分)です【事例紹介】

公務員になればリストラもなく一生クビにならないというわけではありません。問題を起こせばクビですし、仕事ができない職員はリストラされます。
昔と違い現代の公務員は人員削減され少数精鋭の人材配置が前提になっています。国も地方自治体も、仕事ができない職員はクビにしたい、これが本音です。これまであまり行使されなかった分限免職処分について解説します。
「公務員は法律で身分保障されているからクビにできない」は本当でもあり嘘でもある
国家公務員法第75条において公務員の身分は保証されています。(地方公務員法にも同じ規定があります)
(身分保障)
第七十五条 職員は、法律又は人事院規則に定める事由による場合でなければ、その意に反して、降任され、休職され、又は免職されることはない。
法律で規定されているため、公務員はクビになりません。しかし、法律または人事院規則に定める事由に該当する行為があった場合(例えば、横領や窃盗、飲酒運転などの犯罪行為)は、「懲戒免職処分=クビ」になります。
公務員の場合は直接的な犯罪行為でなくても処分の対象です。例えば、公務員の信用を失墜させるような行為を行った場合です(犯罪として認められなくても適用されます)。
第三者が公務員をクビにする方法はありませんし、決められた基準以上の懲戒処分を与えることもできません。公務員は自ら犯罪行為(若しくは類する行為)をしなければクビになることはないという背景から公務員にはリストラはないといわれてきました。
しかし、公務員にもリストラは存在します。民間企業の解雇に相当する処分が「分限免職処分」です。
公務員のリストラ=「分限免職処分」
公務員のクビは「懲戒免職処分」です。犯罪行為などがあった場合に処分されます。公務員のリストラは「分限免職処分」です。分限免職処分は主に自分自身の能力によって処分されます。
分限免職処分とは自身の能力などに問題があった場合にリストラされれる制度
分限免職処分は国家公務員法に規定されています。(地方公務員法にも同様に規定されています)
国家公務員法第78条(分限免職)
- 心身の故障により、職務の遂行が困難であると認められる場合
- 業務の廃止または改廃により、その職に必要な定員が減少した場合
- 勤務成績が良好でない場合
- その他の職務を遂行する上で適格性を欠く場合
「分限」とは「身分保障の限界」という意味です。上司からの命令に背く、仕事を放棄して何もしない行為などがあった場合はリストラの対象です。
リストラとは、組織の収益力を高めるために行う事業の再構築のことです。人員の整理、資源の再配分、不採算部門からの撤退、組織の簡略化などさまざまな手段があります。
公的機関のリストラとして、最もイメージしやすいのが民営化です。
主な民営化として、
- 1985年 日本電信電話公社からNTT
- 1987年 日本国有鉄道からJR
- 2010年 社会保険庁から日本年金機構
など、民営化後は子会社に転籍させるなど措置が行われています。社会保険庁から日本年金機構への移行では、525人の公務員が分限免職となっています。
なお、違法行為をしたクビではなく非違行為によるリストラですから、懲戒免職処分とは異なり分限免職処分の場合、退職金は支給されます。
地方公務員が分限免職処分された事例
人事院や総務省によると、勤務実績がよくない、職に必要な適格性を欠く、などの理由での分限免職は、2013年度は101人(国家・地方公務員)2014年度は59人(国家・地方公務員)となっています。
千葉市の事例(2013年)
千葉市は2013年、勤務実績や生活態度が悪い職員10人に対し、資質向上サポートプログラムとして3カ月の研修を実施。その結果、9人は改善または改善傾向にあるとされましたが、50代の男性職員1人は仕事を忘れたり勤務中に居眠りをしたりといった状況が続き改善の見込みがないと判断され、分限免職処分となりました。
全国初の勤務実績が理由の分限免職の事例です。
大阪市の事例(2015年)
大阪市は2015年、2年連続で最低ランクの人事評価を受けた男性職員2人を分限免職、女性職員1人を降任(降格)処分にした。
橋下徹市長が代表を務める大阪維新の会が主導し、2012年に成立した職員基本条例の規定を初適用。
大阪市の場合は、職員は3か月の適正化指導を受けます。それでも改善しない場合は外部講師による3日間の研修と、職場でさらに3か月間の指導を受け、それでも改善されない場合は2日間の外部講師による研修と面接と、職場における1か月の指導観察が行われるとのことです。
佐賀県の事例(2024年)
佐賀県が50歳代の男性職員2人を、地方公務員法に基づき、「能力不足」として分限免職処分とした。処分は2024年2月29日付。能力不足での分限免職処分は、県では初めてという。
男性2人は、業務の指示に従わない、資料を紛失する、数日でできる仕事に3か月かかり、仕上がりもよくない、といった勤務態度だったという。県は2人に対し、2022年末から2か月間、業務観察を行ったり、2023年4月から半年間、能力向上支援プログラムで指導したりしたが、能力不足と判断したという
民間企業の解雇に相当する処分が分限免職処分ですから、よっぽどのことがない限りはリストラはされません。しかし、リストラは行われています。
財政再建団体となったときはリストラされる?
日本初、未だ唯一の財政破綻をした北海道夕張市。夕張市では財政破綻し財政再建団体となったため、給与は3割減、退職金は4年間で4分の1という身を切る改革を行いました。
市長を含め、職員の給与は全国でも最低水準。平均モデル(44歳・係長)の年収は約546万円、生活ができないわけではありません。
しかし、結果的に半数以上の職員が退職します。財政破綻した自治体はリストラされるどうこう以前に職員が自発的に退職するという事態になる可能性が高く、逆にリストラしてしまうと人員が圧倒的に不足する事態になるため、リストラという選択肢は生じません。
まとめ
公務員でもリストラされるという事実を事例をもとにお伝えしました。
国でも地方自治体でも、仕事ができない職員はリストラしたいわけです。パソコンで文字入力すらできないベテラン職員が若手職員の2倍の給与を貰うのが公務員の世界です。そんな職員をリストラできれば、若手職員を何人も雇えます。しかし、リストラされる職員はほとんどいません。人より少し仕事ができないぐらいでクビになることは絶対にありません。
事例にもあったように、分限免職処分される職員は”よっぽど”です。本当に何もしない、何もしないばかりか反抗的で上司からの指示は無視。そんな職員です。
ただ、職員自身が病気になったり障害を生じて能力不足に陥った可能性もあります。その点の見極めは慎重にしなければなりません。