公務員だからといって、勤務する自治体に住む必要は全くありません。
世間の目が気になって悩む人も多いようですが、マイホームや賃貸に関係なく、制限は一切ありません。
その理由と勤務する自治体に住むメリットとデメリットを解説します。
公務員の住む場所は自由
転勤が広範囲にわたる国家公務員や地方公務員(都道府県)にはあまり気にされないかもしれませんが、
規模が小さい田舎の自治体に勤める地方公務員(市区町村)は、地域の目や声を気にして悩まれる人も多いと聞きます。
賃貸であればまだ引っ越しをすればいいですが、持ち家だとそうはいきません。
マイホームを建てる場所を市外にするか市内にするかは大きな問題です。
子供がいると地域の治安や教育のレベルも気にしなくてはいけません。
しかし、何も気にする必要はありません。
住む場所は自由です。
極端にいえば、大阪に住みながら東京都庁に勤めても、何の問題もありません。(いわゆる新幹線通勤とよばれるものですね)
その理由として、日本国憲法に規定されているからです。
日本国憲法第22条「居住移転の自由」
日本国憲法第22条に「居住移転の自由」が保障されていることからも明白です。
憲法に規定されているということは、仮に政令や条例で規定しても違法(そもそも規定できませんが・・・)になりますから、
公務員だからといって、自分の勤める自治体に住まなくてはいけないということはありません。
もし、自治体がそのような規定を設けていても、それは違法です。従う必要はありません。
勤務する自治体に住むメリットとデメリット
勤務する自治体に住むメリットとデメリットを紹介します。
便宜上、市内と市外とします。
通勤時間
勤務地と自宅が近いということは、単純にいえば通勤時間が短くなります。
1日に片道30分とすれば、往復で1時間です。
年間の勤務が240日とすれば、約10日間も自由な時間が増えるということです。
もちろん、これらは公共交通機関と自宅が近いなどの条件にもよります。
ただ、家が近いと近いで、飲み会は終電まで付き合わされることがあります。
家が遠いと終電が早いですから、違和感なく22時頃には解散できますからね。
また、飲み会や休日の行事であれば断る勇気さえもちあわせていれば問題ないのですが、
災害時の出動などで勤務地と住居が近いことを理由に優先的に駆り出されることもあります。
災害待機ばかりは、公務員である以上、義務ですから致し方ありません。
災害時において初動対応は最も重要です。
つまり、便利になった反面、デメリットにもなるということです。
通勤手当
通勤手当にも上限があります。
各自治体の規定によって異なりますが、月5万円まで、のように規則で決まっているわけです。
これを超える額は自腹ですので、あまりに遠いところに住むというのはデメリットです。
先ほどのように新幹線通勤も可能ですが、
当然、新幹線に乗るための特急券代は自腹ですから、
それを考慮すると現実的ではありません。
住居手当
市内、市外の物価にもよりますが、例えば、
東京都内に住むよりも、埼玉県や神奈川県から通勤したほうが家賃が低いため経済的に有利になることが多いです。
実際、多いと思います。
大阪府に奈良県から通勤するような場合でも同じことがいえます。
つまり、都市部に勤務する人が郊外に住むことは家賃の面からみて大きなメリットです。
逆の場合は、デメリットにはならず、単純に市内に住めば問題ないのかもしれません。
注意点は、市内と市外で手当の額が違う自治体もありますから、バランスを見極める必要があります。
プライベート
地域に密着できるので、住民対応がスムーズに行えます。
市民からの問い合わせに対して、どこどこの~と言われてもよく分かりません。
しかし、市内に何年か住んでいますと、
その地域の特色や住所などを覚えていきますから、問い合わせに対して迅速に対応することが可能です
また、市民からしても、同じ地域に住んでいる人というのは安心感につながります。
ただ、市内に住むということは、プライベートも含め住民や職場の同僚ばかりか関係者と付き合う必要があります。
なので、仕事とプライベートを完全に分離したいという人にはおすすめしません。
外を歩けば、ほとんど仕事に関係のある人だったりしますから。
出世に響く可能性
あなたの役職が担当者や係長級であれば問題なかもしれませんが、
あなたが、危機管理の部署の部長だったとしましょう。
地震が発生したとき、責任者であるあなたが遠いところに住んでいると、
対応が遅れる可能性があります。
トップなしで初動対応をすることは可能ですが、組織としては問題です。
そのため、緊急事態に対応する部署や、それ相応の役職になると、
役所の近くに住むことを求められる可能性があります。
とはいえ、トップになるのは定年退職前です。
それも、出世競争を勝ち抜いてなれるかどうかわからない役職や
異動するかどうかもわからない部署のことを気にして住居の場所を決めるほど
馬鹿馬鹿しいことはありません。
近くに住んでいることが条件なら人事異動の際に組織が考慮すればいいだけの話です。
仮に必要だと言われても、憲法に規定がありますから、その権限は自治体にはありません。
気にする必要はありません。
ただし、
この場合、人事課がどう判断するかにもよりますが、少なくとも考慮される可能性はないろはいえません。
となると、異動先に多少の制限がかかるわけですから、そうでない人と比べれば出世は遅れるかもしれません。
どうしても気になる・・・という人は、その部署や役職の期間だけ単身赴任もありかもしれません。
単身赴任用の賃貸に住めば、住宅手当を考慮しても住居費はそこまでかからないと思いますので。
税金を納めろという批判
市民からすれば、自分たちの血税で給与を貰ってるのが公務員という認識でいます。
その人たちからすれば、勤務する自治体に税金を納めないのは有り得ない行為です。
しかし、憲法に規定がある通り、住む場所は自由ですから、必然的に住民税などの税金を納めないことは問題ありません。
仮に自治体や上司から言われても、違法なので気にする必要はりません。
とはいえ、人間関係も大切ですから、
どうしても市内に・・・という人も多いでしょう
その場合は、ふるさと納税で税金を自分の勤務する自治体に納めてはどうでしょうか?
詳細>>>「公務員もできる「ふるさと納税制度」のやり方を徹底解説【ばれてもOK】」
少なくとも、税金を納めていないという批判は避けられます。
まとめ
家族の関係もあり、致し方なく市外にという人もいます。
実家から通いたい人もいます。
教育、介護、育児、など、自分以外の要因で住みたくても住めない人もいます。
これらを一様に批判されることには違和感がありますが、(そもそも憲法に保障されていることに対し批判すること自体がおかしいのですが)
公務員という職業上、どこに住むかという議論とは、一生、付き合っていかないといけません。
何度も申し上げた通り、公務員であっても、憲法が保障している通り、どこに住んでも問題ありません。
ただ、警察官や消防士ですと、緊急対応がメインの仕事になり、
勤務地と家が離れているというのは、勤務するうえで障害になるかと思います。
自治体によっては、採用時の条件としてあげていることもあるでしょう。
もちろん、これは憲法との絡みがありますかが、世間通年上、無下にはできないのが現実的なところです。
どちらにせよ、住む場所が市内、市外という考え方をするよりも、
自宅から勤務地までの通勤時間がどれぐらいかと考えるべきです。
市内のはずれに住んでバスや電車を経由し2時間かけて通勤するよりも、
市外に住んで30分で通勤するほうが有意義です。
もちろん、税金が~という批判もありますが、今はふるさと納税で寄附できますから、
問題はありません。
私の勤める自治体では、7割方は市内に住んでいる印象です。(あくまで私の周りだけですが)
上層部のお偉いさんは、やはり市外という批判もあったのか単身赴任されている人もいました。
特に、若い世代は市外が多いように思います。
便利というよりは、仕事とプライベートを完全分離したいという意見をよく聞きます。