仕事中のタバコ休憩については賛否両論です。
労働基準法には職務専念義務が規定されていませんが、公務員の場合は国家公務員法第101条および地方公務員法第35条で規定されているため、タバコ休憩は職務専念義務違反にあたるとして公務員が懲戒処分される事例は後を絶ちません。
一方で、そもそもタバコ休憩は職務専念義務違反にならないとする自治体も多いです。。
公務員のタバコ休憩はあまりいい印象ではありません。自治体も喫煙所を減らしていますし、世間からも批判の声があがることは当然の流れでしょう。しかし、タバコ休憩が職務専念義務違反になるのかどうかは議論の余地があると思います。
公務員のタバコ休憩について、現場の声を伝えたいと思います。
役所内の煙草を吸える場所はどんどん減っている
ひと昔前はどこでもタバコは吸えました。電車やバスには灰皿が用意されているほどタバコを吸うことを前提に社会が当たり前でした。自分のデスクで吸っても良かったですし、打ち合わせや会議も煙草を吸いながらできました。
しかし、健康増進法や条例等、近年では自治体は喫煙に対しては厳しい姿勢を示しており、受動喫煙防止の観点から公共施設敷地内での全面禁煙を実施している自治体も少なくありません。
しかしながら、自治体の対応は様々で、
- 役所内でタバコ休憩できるスペースを制限
- 役所内でタバコを吸える場所を無くす
- 役所から少し離れた土地に喫煙スペースを設ける
など自治体によって対応が分かれているのが実情です。
受動喫煙が問題となってからは役所内でタバコを吸うことは御法度ですので、吸うにしても煙がもれないようなスペースを確保する必要があります。自治体の対応は異なるものの、喫煙についてはかなり厳しい姿勢で対応している自治体がほとんどです。
2015年時点ですが、全国の都道府県庁や県庁所在市、政令市と東京23区を対象に行った調査では、10の自治体が勤務時間中を禁煙としています。
喫煙スペースが無くならない理由
喫煙スペースがなぜ消えないのかというと、
- 職員が昼休憩でタバコを吸う
- 来庁者がタバコを吸う
役所の喫煙スペースを消す=自分たちも吸えない、という図式ですので、あまり声が上がらないという背景もあるでしょう。役所には多くの方が来訪しますから、たばこを吸えるスペースを設けています。職員兼用としている自治体もあれば、別途職員専用の場所を設けている自体もあります。
勤務時間中にタバコ休憩をして懲戒処分された事例を解説
仕事中のタバコ休憩が職務専念義務違反にあたるとして懲戒処分された事例を紹介します。
- 大阪府健康医療部の男性職員(49) 勤務時間中に計100時間以上タバコ休憩をしたとして、訓告処分
- 千葉県市川市市民部主任の男性職員(60代) 勤務時間中に職場を抜け出し近くのコインパーキングで繰り返し喫煙していたとして、戒告処分
- 大阪府教育委員会 大阪府立高校の男性教諭(60) 減給1カ月(10分の1)処分
- 宮崎県高原町の男性係長(40代) たばこを吸うために自分の車で役場を離れて、戒告処分
- 兵庫県川西市の副部長級の男性職員(50代) 管理職という重要な職責にあるにもかかわらず、常態的に職場を離脱し、勤務時間中の喫煙行為をしたとして、減給1カ月(10分の1)処分
- 埼玉県志木市 男性職員(50代) 勤務時間中に喫煙したとして、戒告処分
- 大阪府枚方市上下水道部 課長代理の男性(54) 減給2月(10分の1)の懲戒処分
- 大阪府財政部 主事級職員(61) 勤務中に14年半で計4512回(計355時間19分)喫煙し、6カ月(10分の1)減給処分 職務専念義務違反にあたるとし、144万円分の給与を返還
多くの事例がありますが、懲戒処分のポイントとしては、
- 自治体が勤務時間中のタバコ休憩を禁止している
- 処分の多くは戒告処分
であり、役職が高ければ高いほど処分も重くなることは当然のこととして、境界線は自治体が禁止しているかどうかで判断は異なるようです。
仕事中の喫煙を禁止している自治体もあれば、役所の敷地内での喫煙を禁止しているなどレベル感は様々です。
タバコ休憩が職務専念義務違反にはあたらないとする国や自治体の意見
タバコ休憩→仕事をしていない、というのは事実です。しかし、仕事をしていない=職務専念義務違反、となる理屈はおかしいと思います。
誰しも仕事をしていない時間はあるはずです。水分補給をしない人もいないでしょうし、トイレ休憩をとらない人もいないでしょう。同じ時間を使うという意味ではタバコ休憩をしている人とトイレ休憩をしている人は同じですよね。
もちろん、仕事中のタバコ休憩を擁護するつもりは一切ありません。しかし、個人的には、タバコ休憩をしてもやることをちゃんとやってくれているなら問題はなく、むしろ机に座っているだけで何もしてない人のほうが迷惑です。
成果主義では判断できない面も多いですが、自分のデスクに座っているからといってヤフーニュースを見ている再雇用のおっちゃんや雑談ばっかりしている人より幾分マシです。
上記の懲戒処分の例では、勤務中に14年半で計4512回(計355時間19分)喫煙し、6カ月(10分の1)減給処分を大阪府の職員が受けましたが、計算すると1日6分程度です。1日6分であれば水分補給やトイレと変わりません。そう考えると、タバコ休憩とはいえ許容範囲と思う方も多いのではないでしょうか。
事実、自治体によって勤務時間中のタバコ休憩には意見が分かれています。
西宮市人事課
勤務中の喫煙についてはトイレに行ったりお茶を飲んだりするのと同じ扱いで、本人の嗜好の問題として認めている。業務メールは個人のスマートフォンで閲覧できる。喫煙所でスマートフォンを操作しているからといって仕事をしていないとはかぎらない。
尼崎市人事課
公務員としての節度を持って行動するよう職員には周知しており、必要以上に離席しないことも含まれるが、職務中の喫煙は禁止していない。あまり頻繁に喫煙に行くのは良くないが、コーヒーをよく飲む人との差別化は難しい。
内閣人事局服務勤務時間係
喫煙は休憩中や勤務時間外に行うことが望ましいが、勤務中に喫煙したとしてもただちに職務専念義務違反にはならない。ただ、あまりに長時間だったり、頻繁に喫煙したりする場合は個別に指導、処分の対象になることもありうる。
大阪府人事課
勤務時間中の喫煙自体を制限はしていないが、喫煙のために職場を離れるのは職務専念義務違反で、事実上、昼休みにしか喫煙はできません。仕事中に喫茶店に行ってはいけないのと同じこと。残業中にたばこを吸うために席を外したら、休憩時間として残業時間から差し引く。
堺市
残業中も勤務中なので喫煙できません。
2015年時点の情報ですが、このように国や各自治体によって判断が分かれています。
タバコ休憩がこの世から消えない理由
根本論ですが、
- 幹部が喫煙者
- ニコチン依存症
の関係で、日本社会からは当分、タバコ休憩は無くならないと考えます。
タバコを吸わない人からすれば制限するだけ制限してしまえばいいだけですが、今の幹部(もっといえば首長)、要は制度の最終判断ができる地位にいる人ほどタバコを吸う人は多いです。今の50代は至る所で煙草を吸ってもいい時代で価値観が形成されていますから、自分たちが吸えなくなることを許容できる人はそう多くありません。
また、ニコチン中毒になっている人も少なくありません。既にニコチン依存症になっている人からすれば法律でどうこう規制したところで無意味です。ギャンブル中毒と同じようなもので、制度でどう規制しても無くなることはないでしょう。
私の感覚ですが、若手職員ほど喫煙者は減っていると思います。飲み会でも吸わない、吸ったこともないという職員は本当に増えています。この世代が幹部になる30年後には完全禁止になっている可能性もあります。
とは言いつつも、議員や首長が喫煙者なら全面禁止はまず不可能ですね。自分たちのクビを自分で締める権力者はいませんからね。
まとめ
公務員が勤務時間中にタバコ休憩をした場合、懲戒処分の判断基準は、
- 自治体が勤務時間中のタバコ休憩を禁止している場合は懲戒処分される
- 勤務時間中のタバコ休憩を禁止していなくても頻度や時間によっては懲戒処分される場合がある
となります。
私の実体験でいえば、勤務時間中のタバコ休憩は禁止されていますが、ふらっとどこかに消えていきタバコの臭い匂いをまとって返ってくるベテラン職員は多いです。ヒラ、幹部、問わずです。
バレバレだとはいえ、私もコーヒーを飲んだりする時間はありますから、タバコ休憩を注意するつもりはありませんが、タバコ休憩を情報交換などと正当化する人には正直イラっとしますね。