公務員のタトゥーは禁止されているわけではありません。
憲法や法律で禁止を規定されているものではなく、個人の自由です。
そのため、公務員になることに不利な条件ではありません。
なぜなら、一般的な行政職(みんながイメージする役所で働く公務員)はバレる可能性がないからです。
ただし、公務員にも多くの職種があり、警察官、消防士、自衛官などの公安系は少し状況が異なります。
バレたらクビになるのかも含め、解説します。
公務員試験において刺青(入れ墨)は不利ではないというのは建前
一般的な公務員試験は、
筆記試験 → 面接 → 面接
で採用になります。
その過程では、集団面接、グループディスカッション、小論文などが加わる自治体もあります。
その採用試験の過程では一切の不利はありません。
というのは、あくまで建前。
公務員とは役所の玄関口であり、国民対応の最前線の業務にあたります。
全身が入れ墨の職員が役所の窓口対応をしていることを見た人はいますか?
また、いい印象をもつ人が多いと思いますか?
いないですよね。
あら、日本も国際化へ進んでいるわね~なんて人はいません。
刺青がある人をお断りしている温泉がほとんどです。
あっち系のイメージとファッションに近いタトゥーでは印象は違いますが、
あるか、ないか、でいえば同じです。
要は、見える範囲に刺青がある人は採用試験において不利になる可能性が非常に高いです。
刺青の範囲がポイントで、刺青が服で隠せない場合、面接時に不利になる可能性は高いです。
顔、首、手に刺青を入れている人は、
筆記試験では合格できても、面接試験では相当なディスアドバンテージになります。
一方、刺青が服で隠せる場合、一切の不利はありません。
なぜなら、行政職の公務員試験において、身体検査は行われないからです。
試験中にバレなければ、刺青をしていないものと同じ扱い(印象)ですから、
有利不利は一切ありません。
警察官、消防士、自衛隊など公安系の公務員試験では確実に影響する
ただ、影響がないのは、あくまで一般的な行政職の試験の場合です。
一般行政職とは、みなさんが目にする役所の公務員というイメージで問題ありません。
警察官・消防士・自衛隊などの公安系の公務員試験では、確実に影響します。
日本の治安を守る公務員はそれだけ厳正されています。
また、隠し通すことは、まずできません。
なぜなら、公安系の公務員試験には、「身体検査」があるからです。
身体検査では全身を確認されますから、まずバレます。
最近のメイクアップ技術であれば試験時に隠し通せる可能性はありますが、
公安系はザ・体育会系、裸になる機会は避けれは通れません。
確実にバレます。
もちろん、試験の募集要項に「刺青禁止」とは記載されていません。
公務員試験の大前提は、「受験資格を満たしていれば誰でも受験でき、合格できる」ですから。
なので、本当のことは言ってくれませんが、
事実として、全身刺青の警察官や消防士に会ったことがないと思いますので、それが真実です。
警察官や消防士には事務職もありますから、その道にいくのも手です。
しかし、それでも、どうしても・・・という人に残された手段は、
タトゥーを美容整形で除去するほかありません。
ただ、タトゥーの大きさによっては、ケロイドの跡が残りますから、完璧ではありません。
そんな跡なんて、ぱっと見てもわからないだとうと思っている人はあまいです。
なんたって、相手はプロ中のプロですからね。
正直なところ、きっぱり諦めるのが最善手かもしれません。
身体検査や健康診断で刺青がバレたら懲戒免職処分?
試験時にバレれた場合、不利になることはお伝えしました。
であれば、内定後に刺青がバレたらどうなるのでしょうか。
試験時の身体検査はごまかせても、健康診断は1年に1回、義務付けられています。
いわば、強制力のある検査が必ず待ち構えています。
結果として、入れ墨が見つかったからクビになったという事例はこれまでにありません。
どの自治体も処分をしていません。
ただ、警察官、消防士、自衛官という公安系の公務員については、
内定後にわかった場合、内定取り消しや懲戒処分の覚悟は必要です。
だからといって、どの自治体も入れ墨をOKとしているわけではありません。
有名なのが大阪市です。
大阪市で懲戒処分になった事例
2012年に、大阪市(当時の橋下徹市長時代)で、刺青の調査を全職員に行った事例があります。
調査のきっかけは、児童福祉施設の職員が児童に入れ墨を見せて恫喝するという事件が起きたためです。
橋下徹市長「入れ墨をどうしてもやりたい職員は民間企業に移ってもらったらいい。別に公務員でいて下さいと、こっちがお願いしているわけではない」
市長の意向で実施された大阪市の入れ墨調査は、教育委員会をのぞく全職員約3万4000人が対象となったが、
「入れ墨をしている」と答えた職員は110人に上った。
このうち98人が首や腕など人目に触れることころにあると回答した。
調査結果を見て橋下は「入れ墨をしている職員が110人いるというのは異常ですよ。異常な組織。なんで大阪市の職員だけがこういうことを平気で許されるのかといえば、強固な身分保障。これに甘えているとしかいいようがない。緊張感がまったくない」と怒る。
部署別では、ゴミ収集などを担当する環境局が73人、交通局15人、一般職5人などとなっている。
市幹部からは対応の難しさを訴える声も出ている。
服務規律刷新会議では、環境局長が「何人かの職員が実際に医者に相談したところ、部位や状況によっては消すことによって体全体に大きなダメージを与えるということで消せない場合もある」などと発言していた。
入れ墨の調査自体に反発する動きもある。
橋下は市民と接触する機会のある職員について、入れ墨を除去するか配置転換する方針を示した。
この一連の流れは記憶に新しいのではないでしょうか。
法的な問題も含め、当時、メディアを巻き込み、相当騒ぎになった案件です。
先の大阪市の調査では、大阪労働者弁護団が「入れ墨は個人の表現の自由であり、地方公務員としてプライバシー権を制約されるべき法的根拠はない」として調査の中止を訴え、
結果的に検査自体は、全職員を裸にして調べたわけではなく、自己申告。
その代わり、自己申告せず、後から分かった場合は懲戒処分とする方針ででた結果ですから、
本当はもっと多いでしょう。
(現役の公務員の方であれば、環境局と交通局と聞くと、あ~・・・という感想しかでてこないと思いますがね)
結果として、大阪市は新しく「職員倫理規則」を改定し、入れ墨の禁止を定めました。
しかし、その規定を定めた後に入れ墨を入れたとして、市立学校の女性事務職員(当時23)が、減給1カ月(10分の1)の懲戒処分を受けました。
入れ墨は3カ所。左上腕に500円玉大、左足首2カ所に数センチの入れ墨があるという。
女性職員は「(他人から)見えなければいいと思った」などと話しているそうだ。
根本的な問題が公務員という職に入れ墨は禁止という規則なので、
見えないからいいという問題ではありません。
個人的には、そこまでして入れたいかという印象ですが、そういう頭の持ち主が一定数いるのが公務員の世界です。
とはいえ、減給処分ですから、公務員をクビになったわけでもありません。
公務員が入れ墨をするのは法律違反なのか
中村弁護士「今の日本だと、大阪市の職員倫理規則は憲法に反しない、という結論になるでしょう」
「まず、入れ墨を入れる自由については、憲法上保障されると考えられます。
裁判で争われた前例はありませんが、髪型の自由などと同様、憲法13条の幸福追求権に由来する自己決定権の一つとして、保障されるでしょう」
「地方自治体は、自治体という組織体としての内部規律を定める権限をもっています。内部規律として、どのような規則を定めるかは、自治体の長に委ねられているのです」
「過去の判例では、規制の目的に合理性が認められ、かつ規制手段との間に関連性が認められれば、広く裁量を認めるのが特徴です」と話す。
「確かに、他人から見えない位置に入れた入れ墨まで規制するのは、規制が広範すぎる、と個人的には思います。ただ、現時点の裁判所の考え方からすると、裁量逸脱といえるかどうかは微妙です。今回の処分については、規定が定められた後に施術を受けて入れ墨を入れているので、なおさら争いづらい事案だといえるでしょうね」
弁護士の見解では、入れ墨を入れる自由については、憲法上保障されています。
憲法に定めることに違反するものは、法律であれ条例であれ無効ですが、
内部規律が社会通念上問題なければ、「職員個人の自由」をある程度規制できるというわけです。
現代の社会通念では、「刺青(入れ墨)=タトゥー=悪」であり、
「公務員=正義というものを求められる職業」ですから、
相反するわけですから、規制できてしまうということです。
ある意味、職業の性(さが)ともいえるでしょうか。
数年後、社会通念が変化していけばこの問題もなくなるでしょうが、日本では難しいでしょう。
まとめ
日本においてはタトゥーはタブーとされています。
諸外国とは違い、親から授かった身体に傷をつけることは悪だという教育があるからです。
整形手術も類に漏れません。
社会通念上、公務員に刺青を入れることは許されていないわけです。
社会というものは、憲法には認められているからといって、はいそうですかとなるものではありません。
住民対応の法律に書いてあるからと何度も伝えても通じない折衝問題とにています。
海外は~と主張する声もありますが、
ここは日本であり、公務員という職を選ばなくても働くこと、お金を稼ぐことは可能です。
極論を言えば、どうしても刺青を入れて働きたいなら、日本を出て行ってくれということです。
その点、大阪市の当時の主張は、社会通念上間違ったものではないでしょう。
タトゥーを隠して公務員になったところで、
いつバレるかわからない状況でびくびくして過ごすなら、きっぱり諦めるべきでしょう。
タトゥーを見せる機会がなくとも、何かのひょうしにうっかり口走ってしまえば最期、
内部告発されて終了です。
タトゥーを隠して公務員になるのであれば、相当な覚悟が必要です。