現役の公務員(とくに新規採用職員)が年末にむけて悩むことは、
職場の上司や同僚年賀状を送るかどうかじゃないでしょうか。
厄介なことに、
「年賀状って、送ったほうがいいですか?」
とは上司や先輩にはなかなか聞きにくい問題です。
年賀状を送り合う慣習のある職場ですと、自分の印象が悪くなるのも必至です。
しかし、新規採用職員だと、同期に聞いても答えが返ってくるわけもありません。
もし職場全員に送るにしても、住所を入手しなければなりません。
意外とデリケートな「公務員の年賀状事業」にきりこみます。
年賀状は自分から送らなくても問題ない
基本的に、公務員の組織に年賀状を送り合うような慣習はありません。
しかし、
私の場合、年賀状をやりとりしている(元)上司は数名います。
自分から送ったものではなく、相手からきて、それに返して・・・で続いているパターンです。
(仲の良い先輩とはお互いに年賀状は送らない同盟を結んでいますので、(というかこっぱずかしいので)送りません。)
結論は”人による”です。
年賀状文化が廃れてきているとはいえ、上の世代にはまだまだ年賀状文化が現役です。
公務員組織として、推奨しているわけでもなく、自粛しましょう程度のものなので、年賀状をだすこと自体には何ら問題はありません。
もちろん、公務員とはいえ、
国、都道府県、市区町村など、外郭団体も入れれば数え切れないほどの組織があるので一概には言えません。
とはいえ、完全にゼロという職場はありません。
年賀状を送りあう文化は存在する
役所の40代から50代には、年賀状を送り合う文化は生きています。
個人情報がうるさくなかった時代ですね。
年齢が上がれば上がるほど、
役職が上になればなるほど、
年賀状を送り合っている印象です。
そもそも、今の20代からすれば、年賀状を送った経験もない人も多いのではないでしょうか。
そんな時代を生きている人からすればあり得ないことかもしれませんが、
昔は携帯電話も(もっと言えばインターネットですら)なかったわけで、
年賀状は新年のあいさつという名の生存確認にみたいなものだったわけです。
その生存確認が今も慣例として続いている世代があります。
冠婚葬祭は例外
冠婚葬祭、特に結婚式を挙げた人は報告も含めて年賀状を送るということがあります。
結婚休暇などで2週間程度休むことになりますし、お祝いも職場内で貰っている場合はそのお返しも含めてというパターンです。
今はあまり職場の人を結婚式にはよばないのがメジャーですが、
昔は職場の同僚や上司だけで2テーブルぐらいは普通でした。
結婚式に来てもらったお返しというか報告というか、前撮り撮影したときの写真で年賀状を送るパターンはよくあります。
私も、何度かこのパターンで年賀状を貰っています。
ただ、冠婚葬祭を兼ねるパターンの年賀状は送り返したことはありませんし、今も続いているということもありません。
あくまで、報告といったイメージです。
年賀状を送ることをおすすめできない理由
現代において、こと公務員が年賀状を出すことは非常に面倒です。
その理由は3つあります。
送る人数が増え続ける
公務員ほど人と付き合う職業はありません。
なぜなら、公務員には定期的に人事異動があるからです。
人事異動は1年~3年でおこなわれるのが一般的なので、3年あれば職場すべての人が総入れ替えになるレベルです。
※自治体の規模によっても、異動年数や人数は異なります。
例えば、30人の職場だとすれば、
- 1年目 30人(自分が異動してきた)
- 2年目 +10人(同僚が異動した)
- 3年目 +10人(同僚が異動した)
- 4年目 +30人(自分が異動して新しい職場にいく)
これを定年退職まで繰り返すことになります。
3年単位で50人ずつ増えるわけですから、
22歳で働き始め60歳で定年退職するとすれば38年間
つまり、定年退職時には約600人に年賀状を送っている計算になります。
もちろん、同じ人と同じ職場になることはありますので重複はしますが、
上が辞めれば下が入ってきますから、概ねその人数は変わりません。
あくまで、これは自分と同じ職場になった場合の人数です。
年齢や役職があがれば仕事以外の付き合いも増え、
他部署の職員とも付き合っていかなければなりません。
その数までいれれば、1000人は軽く超えます。
お金と時間がかかる
年賀状もタダではありません。
1枚63円+プリント印刷代
が送る枚数分かかってきます。
仮に600人に送るとしても、年賀状だけでも約4万円
プリント代はお店やクオリティーによって様々ですが、1枚200円程度はかかります。
トータルで約16万円になります。
家のプリンターでやれば、インク代で済みますが、それでも数万円はかかります。
これを手書きでとなれば、お金は節約できますが、時間がなくなります。
12月の土日は年賀状を出す準備で終わると大先輩に聞いたことがありますが、
それもそのはずです。
あくまで、これは極論であって、さすがにこの枚数を送っている人はほとんどいません。
しかし、少し仕事で絡んだ1年目の私にも年賀状をくれた人がいますから、潜在的には…
一度始めたら止められない
年賀状の問題点は、「誰に送って誰に送らないか」を選ばなくてはいけないことです。
あちらをたてればこちらの角が立つ、こちらをたてればあちらの角が立つ
そんな状況が年賀状にも存在します。
なら、いっそ、全員に・・・と、ところかまわず送れば、その人数は爆発的に増えます。
なんでも貰ったものを返すのが日本人の美徳とされていますから、
貰った側としては返さなくてはいけない気がします。
それが、上司ともなれば、もはや義務です。
そうなってくると、もう止め時、切り時が判断できません。
自分が一方的に止めても、相手は去年の年賀状をみて送ってきますから、なんとも気まずい雰囲気に・・・
年始のあいさつをするはずの年賀状が、逆に人間関係を悪くしてしまうとは本末転倒です。
年賀状をもらったらどうするべきか
自分は年賀状を送らない!
そう決めても(実際に送っていなくても)、年賀状がくるときにはきます。
世の中には、相手がしてほしいことをする人と自分がしたいことをする人がいるからです。
そのときの選択肢は、
- 無視して年賀状は返さない
- 遅れるが年賀状を送り返す
2つしかありません。
年賀状を返さない
少し、いやかなり勇気のいる行為になりますが、無視するパターンです。
仮にその人に会ったときに、
「ご丁寧に年賀状を頂きましてありがとうございます。」
と一言添えるのも手ではありますが、
でも、遅れてでも送り返すことはできたよね?という相手の思いに答えることはできません。
もちろん、一方的に送るタイプの人はそんなこと気にしないとは思いますが、
墓穴を掘る可能性があるので、無視するのがベストです。
仮に会っても、普段と同じテンションで接しましょう。
個人的には無視することをおすすめします。
年賀状を送り返す
年賀状を貰ったのが1月3日だとすれば、そこから動きだすことになるので、
必然的に遅れて返信することになります。
相手からすれば、送っていなかったことがモロバレです。
(昔みたいに年賀状に日付を押印しなくなったので少しはマシです)
それでも、返さないよりはマシ
と考える人がとるべき選択肢です。
(施されたら施こし返す!恩返しです!と、どこかのテレビでいってましたがそんな感じです)
ただ、問題点は、さきほど解説した通り、
一度でも年賀状を相手に返す(送る)と、それが慣例化して、
定年退職までずっとやりとりをしなくてはいけない可能性もあります。
そのため、少しでも気が向かないのであればおすすめはしません。
遅れて返す場合の注意点
なお、遅れて返す場合は、年賀状の入手が最大の難関です。
正月を超えると年賀状はどこにも売っていません。
コンビニやスーパーを駆け回りましたが売っていません。
もちろん、印刷された年賀状なら売れ残りがありますが白地の年賀状はないんです。
調べれば分かったことですが、特定の郵便局に売っています。
小さな郵便局には売っていません。その地域の拠点となる郵便局にしかありません。
そのため、遅れて返す場合は、まずは年賀状の確保を最優先してください。
実は私も経験があるのですが、探すのだけでも本当に大変です。
年賀状を送るメリットもある
私個人としては、上記の理由があるため、年賀状を送ることはあまりおすすめしません。
しかし、年賀状を送ることでメリットがあることも事実です。
出世に影響するかもしれない
人の評価なんてさじ加減ですから、同じ人が横に並べは、知っている人間を上にあげたくなるものです。
実際、私の周りで年賀状を出している人は年配者かつ極少数で、
20代から30代の若手・中堅職員が年賀状をだしている事例を多くは知りません。
逆に言えば、、40代から50代の年賀状文化の管理職からすれば、
年賀状を送ってくる若手職員はかなり目立つ存在です。
印象にも残るでしょうから、今時の若い者に礼儀が分かる奴がいたか~みたいな世界があることは事実です。
もちろん、昇進理由が年賀状だなんてことは有り得ませんが、少なくとも影響はゼロではないでしょう。
定年退職後の近況報告
年賀状でつながっていれば、定年退職後の再就職を手伝ってくれるかもしれません。
引退すれば、仕事仲間との関係がなくなってしまう人も多いと思いますが、
何かのきっかけでプライベートの付き合いができるかもしれません。
公務員に年賀状を送ることは禁止されている?
公務員において、何がダメで何がいいのかは、
- 国家公務員倫理法
- 国家公務員倫理規程
に定められている通りで、何が賄賂(わいろ)にあたるのか、結婚式のお礼はいいのか?
など、かなり事細かに定められています。
しかし、年賀状については、1㎜もでてきません。
かすりもしてません。
そのため、「年賀状とは通常の慣習の内で、利益供与(贈与)にはあたらない」とするのが一般的な解釈です。
たとえ業者であっても受け取っても問題はありません。
当然、友人や親せきなど、なんら制限はありません。
しかし、注意点があります。
「個人情報の目的外利用」に当たる場合がある
職員間での年賀状のやりとりが「個人情報の目的外利用」に当たらないのかどうかの確認は必要です。
要は、
年賀状を送ってきているけで、私の住所(住んでいる家)をどうやって調べたの?
ということです。
国家公務員や地方公務員の場合、法令や条例によって、
職員は職務上知り得た個人情報をみだりに他人に知らせ、又は不当な目的に使用してはならない
と、定められています。
つまり、住所情報を年賀状に利用するのはアウトじゃないかということです。
厳密には、上司からきた年賀状だから返さないといけないのかな・・・
と感じた時点で、アウトになります。
実際は、仲の良さに収束する話ではありますが、注意が必要です。
パワハラやセクハラと同じで、
たとえそれが同じ行為であっても、相手が嫌な気持ちになるならアウトです。
ひと昔前までは、個人情報の取り扱いなんてあってないようなものでした。
経歴書には出身地、大学名ばかりか住所や電話番号など、
誰でも簡単に見れるレベルの存在でした。
しかし、近年、個人情報については一切見れない状況ですから、
知りえるのは一部の管理職のみになります。
そのため、相手に年賀状を送る際、
厳密に言えば、
「年賀状を送りたいんだけど、あなたの住所を教えてくれないかな?」
と相手に直接聞く必要があります。