公務員が人身事故や物損事故などの交通違反をした場合、
公務中の公用車での事故であれば、青切符であっても報告は必須です。
プライベートであれば、運転免許証の停止・取消処分レベルの違反であれば報告すべきです。
どちらにせよ、違反を隠していたことが後でバレたら、懲戒処分がより重くなる可能性があるので注意してください。
私の経験からして、青切符の場合は、正直に上司や所属に報告すれば懲戒処分にはまずなりません。
ただし、飲酒運転や人身事故がからむ場合は話が変わり、問答無用で懲戒処分です。
懲戒処分事例を交えながら解説しますが、結論からいえば、交通違反の内容によります。
「飲酒運転・交通事故・交通法規違反関係」の懲戒処分規定の基準
国家公務員における懲戒処分の規定は「懲戒処分の指針について(人事院)」で公表されています。
地方公務員は独自に規定を定められるわけですが、基本的には人事院の規定に準じます。
「飲酒運転・交通事故・交通法規違反関係」について詳しく解説します。
なお、処分を行うに際しては、過失の程度や事故後の対応等も情状として考慮の上判断するものとされています。
要は、情状酌量の余地は一定あるということです。
普段の勤務態度なども考慮されますが、処分事例からしても、飲酒運転についてはかなり厳しい処分になります。
飲酒運転の場合
(1) 飲酒運転
ア 酒酔い運転をした職員は、免職又は停職とする。この場合において人を死亡させ、又は人に傷害を負わせた職員は、免職とする。
イ 酒気帯び運転をした職員は、免職、停職又は減給とする。この場合において人を死亡させ、又は人に傷害を負わせた職員は、免職又は停職(事故後の救護を怠る等の措置義務違反をした職員は、免職)とする。
飲酒運転については、近年、社会問題化したこともあり、かなり厳しい規定に改定されています。
酒酔い運転・酒気帯び運転とも、人身事故の有無にかかわらず最高で懲戒免職処分となっています。
最低でも減給処分ですから、飲酒運転をして警察に捕まった時点で、少なくとも
昇任・昇給の停止(場合によっては降格)、退職金の減額など、公務員人生においてかなりのマイナスになることは確実です。
懲戒処分事例
飲酒運転の処分事例は数え切れませんが、直近ですと、
岡山県浅口市 2020年11月11日
酒気帯び運転で自損事故を起こしたとして、総務課付の主事級男性職員(32)を同日付で減給10分の1(6カ月)の懲戒処分とした
なお、各自治体のHPに懲戒処分は公表されています。
措置義務違反の場合は処分が重くなる
人身事故を起こしたにもかかわらず人を放置して逃げるような措置義務違反があった場合は、懲戒免職処分です。
救護すれば助かる命もありますから当然です。
「義務違反防止ハンドブック(人事院)」によれば、
「飲酒後に⾃動⾞を運転し、対向⾞と接触する事故を起こしたにもかかわらず、警察へ通報することなく現場を⽴ち去った 」→「 停職処分」
と規定されていますから、直接的な人身事故を起こしていなくとも措置義務違反を犯した場合は停職処分となります。
そんなことは絶対にしない!人として有り得ない行為だ!と思っていても、
車で人を引いてしまった後に救護など適切な対応が即座にできる人はそう多くありません。
お酒を飲んでいなくても、気が動転、動揺してしまって、通常なら絶対にしないような行動をとってしまうものです。
自分が飲酒運転していなくても懲戒処分される
(1) 飲酒運転
ウ 飲酒運転をした職員に対し、車両若しくは酒類を提供し、若しくは飲酒をすすめた職員又は職員の飲酒を知りながら当該職員が運転する車両に同乗した職員は、飲酒運転をした職員に対する処分量定、当該飲酒運転への関与の程度等を考慮して、免職、停職、減給又は戒告とする。
飲酒運転者への車両提供、飲酒運転車両への同乗行為等については、
最高で懲戒免職処分、最低で戒告処分となっており、自分がお酒を飲んでいなからといって処分を免れることはありません。
要は、連帯責任です。
「義務違反防止ハンドブック(人事院)」によれば、
「同僚が酒気を帯びていることを知りながら、その同僚の運転する⾃動⾞に同乗した」→「 停職処分」
と規定されています。
連帯責任で停職処分は、かなり重たい処分規定になっている印象です。
飲酒運転以外の人身事故の場合
(2) 飲酒運転以外での交通事故(人身事故を伴うもの)
ア 人を死亡させ、又は重篤な傷害を負わせた職員は、免職、停職又は減給とする。この場合において措置義務違反をした職員は、免職又は停職とする。
イ 人に傷害を負わせた職員は、減給又は戒告とする。この場合において措置義務違反をした職員は、停職又は減給とする。
飲酒運転時と同様に、措置義務違反があった場合は処分が重くなります。
飲酒運転以外の交通法規違反の場合は懲戒免職処分にはならない
(3) 飲酒運転以外の交通法規違反
著しい速度超過等の悪質な交通法規違反をした職員は、停職、減給又は戒告とする。この場合において物の損壊に係る交通事故を起こして措置義務違反をした職員は、停職又は減給とする。
おそらく、みなさんが一番知りたいのはここですよね。
飲酒運転や人身事故などではなく、スピード違反や一旦停止をせずに警察につかまったパターンです。
この場合は、懲戒免職処分になりません。
「義務違反防止ハンドブック(人事院)」によれば、
「⾃動⾞を運転中、指定速度を時速約 50km 超過する速度で⾛⾏した」 →「 戒告処分」
とあるので、スピード違反においては一発で免許停止や取り消し処分となっても戒告処分と比較的軽い処分になります。
しかし、あくまでこれは指針であって、処分のレベルは自治体によって異なります。
懲戒処分事例
2020年11月27日 愛媛県職員がスピード違反で検挙、減給1/10、1か月
県職員が国道33号を118キロで走行して警察に検挙され、懲戒処分を受けた。
減給10分の1、1か月の懲戒処分を受けたのは、県農林水産部の地方機関に勤務する40歳代の男性職員。
県によると男性職員は、8月11日の午前6時半ごろ、自家用車で通勤中、砥部町の国道33号を118キロで走行し、68キロオーバーで警察に検挙され、免許停止90日の行政処分を受けた。
また、懲戒処分された事例ではありませんが、
兵庫県の井戸敏三知事(75)が10月31日、神戸市中央区で私用で乗用車を運転中に転回禁止の交差点でUターンし、県警葺合署に交通反則切符(青切符)を切られていたことが2020年11月10日、県警関係者への取材で分かった。
反則金も納付済で、事故などを起こしたわけではありませんが、
県知事クラスになれば、隠していてもバレるものです。
赤切符の報告は必須、青切符はケースバイケースで報告
青切符、赤切符は交通違反をしたときに渡されるものですが、青切符と赤切符は刑事上の責任に関する書類のことをさします。
・青切符とは「一時停止違反・駐車違反・30km/h未満(高速道路では40km/h未満)の速度違反など」比較的軽い違反のこと
・赤切符とは、「30km/h以上(高速道路では40km/h以上)の速度違反、無免許運転、轢逃げ(救護義務違反)など」比較的重い違反のこと
・行政上の責任として、「免許の停止」や「免許の取消し」の処分がなされます。
・刑事上の責任として、青切符は、「交通反則通告制度」=「違反を認め、通知された反則金を支払えば、刑事上の責任は問わない」があり、前科にはなりません。赤切符は、青切符のような例外はありません。違反を認めた上で手続きを進めても、裁判が行われ、前科がつきます。
よって、赤切符の場合は前科がつきますから、報告は必須です。
問題は青切符の場合ですが、ケースバイケースです。
駐車違反を報告している人はいませんし、聞いたこともありません。
しかしながら、運転が必要な部署で仕事をしている場合は別です。
免停などの処分を受けて公用車を運転できなくなった場合、業務に支障をきたすことになりますので、報告は必須です。
隠して無免許運転をしていたなんてもってのほかです。
私の部署では、運転免許証を確認したうえで登録しないと公用車を運転することはできません(おそらく保険適用の関係だと思います)。
年に一度、確認されますから必然的にバレることになりますから、報告しておくべきです。
勤務中の交通違反は報告すべき
業務中の公用車の交通事故については、上司や所属部署に報告すべきです。
事故の場合は、黙って隠し通すことはまずできません。
必ずバレることになりますし、黙っていたことがバレれた場合に情状酌量の余地は一切ありませんので、懲戒処分は重くなります。
なぜバレるかというと、
事故を起こした場合、民事上の責任「損害賠償」が発生するためです。
公用車を運転している場合、損害賠償責任は運転者だけでなく、自治体も負う事になります。
仮に被害者が勤務している自治体や部署に対して損害賠償請求をしてくれば一発アウトです。
また、物損事故(ガードレールや電柱にぶつけた場合)の場合もバレます。
なぜなら、構造物の管理者がいるからです。
例えば、自治体が管理しているガードレールが事故によって破損した場合、原因者復旧の原則から事故をした人に損害賠償請求を行います。
警察への照会時に必ずバレることになります。
そもそも、役所の車が事故を起こせば、住民からは注目されますし、報道される可能性もあり隠すことは得策ではありません。
感が良い方はもうお気づきかもしれませんが、
スピード違反や駐車違反については、ぶっちゃけ、黙っていればバレません。
なぜなら、相手がいない違反の場合は、損害賠償請求を受ける可能性がないからです。
とはいえ、役所の車が公務中に警察につかまると、住民からは注目の的です。
場合によっては、報道される可能性もあり、隠すことは得策ではありません。
公用車が明らかに破損・故障している場合は、定期点検で犯人特定されることになります。
自治体としても車両保険をつかって公用車を修理することになりますが、事故報告がなければ保険を適用できなため、報告をしてもらったほうがいいわけです。
公用車を運転する必要がある部署において、公用車の事故は定期的に発生します。
もちろん、自分に非がないようなもらい事故もあります。
そのため、私の経験からしても正直に報告すれば、懲戒処分されることはありません。
プライベートの交通違反は報告義務もなくバレもしない
プライベートはあくまでプライベート。
プライベートで交通違反をしても、勤務先へ報告する義務はありませんし、バレる可能性もほとんどありません。
運転者が交通違反したからといって、警察が勤め先の会社に報告する義務やルールはそもそもありません。
また、正当な理由もなく勤め先に知らせることは守秘義務違反にあたりますから心配は無用です。
交通反則通告制度により、反則金を支払えば、それ以上の処分はありません。
しかしながら、違反を認めなかったり、反則金を納入しない場合は勤め先へ調査が入る可能性がありますから、ゴネるのはやめましょう。
注意点
また、いくらバレないとはいえ、それは警察からの情報リークによってはバレないというだけで、
誰がどこで見ているか分かりません。
このご時世ですから、公務員に対する風当たりは相当強いものがあります。
プライベートであるため、いち担当者レベルであれば顔もバレていないので公務員だとわからないと思いますが、
課長や部長など役所の顔として世間にでてしまっている場合は、住民通報からバレる可能性もあります。
プライベートでも飲酒運転などで検挙された場合は報告しないと懲戒処分が重くなる可能性があります
2023年7月、富山県の障害福祉課主任の女性職員(41)は4月、飲酒運転で摘発され、5月に罰金30万円の略式命令の罰金刑となったにもかかわらず、県への報告を怠ったとして停職3カ月の懲戒処分となりました。
職場に報告したのは6月になってからだったということで、県は報告を怠ったこともふまえて「停職」処分としています。
この事例のように、罰金刑のような処分を受けた場合は社会的影響が多いため報告しなければ処分が重くなる可能性が高いので注意してください。