「公務員はホワイトだから、残業代が支給されないようなブラック企業ではない」と思っていた私がバカでした。
民間企業からの転職者から、そんな話を聞いた先日の飲み会。
事実、配属部署と上司によっては残業代が満額支給されません。
予算には限りがあるため、残業代の予算がなくなれば支給できなからです。
そのため、多くの部署で残業代は”満額ではないが”支給されているのが現状です。
サービス残業は本当に”もったいない”ので、定時退庁する方法をお伝えします。
(備考)
正式には「超過勤務手当」ですが、便宜上「残業代」と表現しています。
2021年に実施された国家公務員へのアンケート調査では、約3割が残業代が満額支給されないと回答しています。
また、現在も部下の職員に適切な超過勤務手当を認めない管理職がいることは大臣も認めています。
公務員の残業代が全額支給されない理由①予算に上限がある
労働時間に対して残業代が満額支給されないという意味では、公務員はブラック企業です。
部署毎に残業代として年間〇〇万円という「予算」が与えられており、予算を超えた場合は残業代が支給されません。
極論、予算の配分がない部署へ配属されてしまうと、残業代は1円も支給されません。
当該年度の予算は前年度の実績や来年度の想定で分配されますので、仕事量がない部署には予算はないことが当たり前になっています。
(ポイント)過労死ライン(一般的には月60時間以上の残業)があるため、本来は残業時間によって判断すべきですが、時給単価の違い(若手とベテランでは2倍以上の差)により、時間ではなく予算で制限しています。
公務員の人事異動は本当に運!決め方と発表時期についての記事で解説しましたが、運が悪いとサービス残業の毎日を送ることになってしまいます。
公務員の残業代が満額支給されない主な理由は「予算」に上限があるためですが、問題は予算だけではありません。
あなたの残業申請を認めてくれない上司がいた場合です。上司は、部署内の予算のマネジメントも大きな仕事の一つです。
公務員の残業代が全額支給されない理由②上司が承認しない
残業の成果を上司が承認することで、はじめて残業代が支給されます。
問題なのは、この承認レベルが上司によって違うことです。
- 上司A:1分でも残業をつけろ
- 上司B:残業は1分たりともつけるな
これほど真逆な上司がいます。
部下の残業を認めない上司のもとで働くことになれば、残業代はでません。
公務員の人事異動は本当に運!決め方と発表時期についての記事で解説しましたが、部署の配属と上司は「運」です。
もし残業が認められないときには、毎日の残業時間をメモしておき、記録をもとに人事課や裁判所に訴えることも可能です。
しかし、残業の定義は”命令”ですから注意が必要です。
残業とは、上司からの命令で部下が行う仕事のこと
残業は「超過勤務命令」、上司から部下への”命令”です。
部下が「上司からの命令によって勤務時間内では終了できない仕事を勤務時間外におこなう」行為を指します。
また、事前に申請し許可を得る必要があります。
正式な手順は、
- 上司から部下へ残業内容(時間)を事前に命令
- 上司から命令された部下が、指示された残業内容(時間)を事前に申請
- 上司が事前に許可
- 部下が残業し、成果を報告、実際にかかった時間を申請
- 上司が成果と実績時間を考慮し、残業時間を精査、承認する
上司という役職・立場上、部下の仕事量を把握・管理し、適切に部下に指示する必要があります。
つまり、上司からの命令がない以上、本来は残業をする義務はありません。
定義上、勤務時間外に自ら進んでやった仕事は「サービス残業」です。
公務員の残業の実態は、定義上「サービス残業」
たとえ部署として絶対にやらなくてはいけない仕事でも、あなたが上司に許可なく自ら進んでやった残業は、命令されていない以上はサービス残業です。
とはいえ、業務の実態は定義通りの運用はされていません。
実務としては、
- 部下が自ら業務量を鑑み、残業をする
- 部下が上司に対し、残業内容と時間を事後報告する
- 上司が残業申請と実務時間を事後承認する
定義とは真逆の運用です。
部下が残業の必要性を判断していますし、上司は事後の承認になっています。
なぜ定義通りの運用がされていないかといいますと、
部署によっては係長1人に対し10人以上の部下がいることもありますから、上司が部下の業務量をすべて把握し残業を指示することは実務上不可能だからです。
問題点は、部下のさじ加減で残業ができ、限られた予算(残業代)を圧迫してしまうこと。
結果、残業をしても残業代が支給されない事態が発生します。
定義上、部下が勝手に残業をしただけで、命令・指示していない内容は必要のない業務であり、上司は承認する必要がありません。
上司としても予算がない以上、ない袖は振れません。
仕事中に同僚とずっと世間話をしているのに残業を申請するような生活残業は、自分の能力がないと上司に評価されることになるので、普段の勤務態度には気を付けてください。
厳しい上司なら絶対に承認してくれません。
表には出ない残業時間があると、人事課は業務量を正確に把握できないため翌年度の予算も人員も増えませんので、良いことが1つもありません。
残業代が支給されないときは定時退庁がベスト
労働時間や成果に対して適切な報酬が支給されないと働くモチベーションがなくなりますよね。
残業代がない部署や残業を認めない上司にあたってしまった場合、定時で帰りましょう。
残業代が足りないからといって補正予算をくんではくれませんし、残業を承認しない上司は一生しません。
諦めることも肝心です。
対処法は「定時ダッシュ」一択です。
私なら、残業を承認しない上司に対して、こう言います。
今、私は〇〇の業務をかかえており、勤務時間内には終わりません。
上司からの命令または承認が得られない以上、終わらない仕事については上司が処理すべきであり、私は定時で帰ります。
そもそも、上司は部下の業務量を的確に把握できているわけではありません。
自分の能力を考慮し仕事量や進捗状況を上司に報告することは部下として何の問題もありません。
上司はその報告によって、今の状況を理解し残業を承認してくれるかもしれません。
上司からの命令がないからといって自分の判断で仕事を勝手に放置すれば、社会問題になる可能性があります。
委託業者への支払いが遅れたり生活保護費の支給が遅れれば、上司は監督責任を問われ部下も懲戒処分の対象となります。
なので、責任を問われたときに「知らなかった」「報告していなかった」ということがないようにしおきましょう。
これを聞いて、
- 怒られそうで怖くて言えない・・・
- 人事評価に影響して昇進できないのでは・・・
と不安に思う方もいるでしょう。
あなたは、自分のプライベートの時間を削って、サービス残業をして、自分の時間を生きられないことを不安に思わないのでしょうか。
残業を認めないようなパワハラ上司についていって昇進できると思いますか。サービス残業をしたからといって、評価されるかは別の話ですよ。
私の意見を聞いて「机上の空論、妄想、言えるわけがない」と思われた方が大半だと思います。
事実、毎日何時間も残業しているにもかかわらず残業が1分も承認されないと悩む同期の相談を受けた際に言われました。
もちろん、性格的に気が弱く、言えない人がいるのも理解しています。
しかし、第三者から見れば、
- 自分からサービス残業を望んで
- 評価されるかもわからない上司の顔色を気にして
- 現状を変えようと行動もする気がない
- ただ、愚痴を言いたいだけ
に映ってしまいます。
1日3時間のサービス残業は、月60時間、年720時間にもなります。
日数にして年90日間勤務、時給2,000円とすれば年収にして約150万円のタダ働きです。
定時退庁する人との差と考えてみれば、実行することに恐れなど必要ありません。