現役の地方公務員が誰一人賛成していない「再任用制度」の問題点
地方公務員の「再任用制度」は、定年退職した職員を一定期間、改めて任用できる仕組みで、高齢者雇用の確保と人材活用を目的とした制度です。
地方公務員の定年は60歳から65歳に順次延長されており、今は途中期間であるため仮に定年退職を65歳とすると年金支給開始の70歳まで5年間無収入になります。そのため、地方公務員の多くは定年退職後、同じ地方自治体で再雇用され働きます。(年金は受け取り開始時期によって受給額が変わる制度のため繰り上げ受給は可能ですし、再雇用されずに引退される方も少なからずいます)。
役所の言い分は、勤続年数を活かした若手職員の教育や経験・知識の還元なわけですが、正直、現役の公務員からしてみればデメリットが目立つ制度となっています。現役職員がほしいのはベテラン職員の知識や経験に基づいたアドバイスなどではなく実作業ができる人材です。
口だけ動かして手を動かさない再任用職員は誰も求めていません。公務員の内部事情をふまえ、再任用制度の実情を解説します。
地方公務員の「再任用制度」の概要
特定の職を除き、地方公務員の定年退職は60歳と法律で決まっていました。しかし、令和3年(2021年)の地方公務員法改正により、地方公務員も国家公務員と同様に定年が段階的に65歳まで引き上げられることになります。
国家公務員の再任用制度の利用率
人事院が実施した「令和2年退職公務員生活状況調査」によると、定年退職した国家公務員のうち、約9割(約89%)が定年後も働いていると回答しています。このうち、就労先の約8割が国の機関での再任用職員であると報告されています。つまり、定年退職者のおよそ7割が国家公務員の再任用制度を利用して働いている可能性が高いと推計できます。
局長や部長級といった幹部は天下り先へ再就職しますから、実際の割合以上に再任用されていることも推察できます。
勤務時間・休暇
基本的には下記の2パターンを選択することになります。
- フルタイム勤務(週38時間45分)
- 短時間勤務(週15時間30分から31時間までの範囲内の時間)
原則、残業はありません。少なくとも、私の勤務する自治体では認めていません。
1日を7時間45分以内と計算し、自由に割り振れるフレックスタイム制が導入されていますので、働きやすい環境が準備されています。週15時間30分を選択すれば、要は2日勤務なわけですから、週休5日も可能な制度です。
休暇日数については土日は週休日と設定されており、フルタイムの場合は年次休暇日数も20日間付与されます。短時間勤務の場合はその時間数に応じて変わり、31時間の場合、20×4/5=16日となります。
給与(基本月給・ボーナス・諸手当)
給与は現役時の半分程度になります。ボーナスも現役時の半分になります。
例えば、フルタイム勤務かつ再任用後のポストが管区機関、府県単位機関の主任級(行政職(一)2級)の場合は以下が目安です。
- 基本月給 約21万
- ボーナス 約50万円
- 年収 約310万円
通勤手当などの必要となる諸手当については現役時と同様の基準で支給されることになります。あくまで目安ですので、地域手当の有無など地方自治体ごとで多少のバラつきは生じます。
地方公務員の「再任用制度」の問題点
今後、公務員の職員数が増えることはありません。定年が延長され、再任用制度が現状まま変わらないとすれば組織としても少子高齢化になります。若手職員が減り、ベテラン職員は増えていく・・・もちろん、この人が再任用でいてくれてよかったという職員もいます。60歳が22歳に体力や記憶力などで勝てとはいっていません。負けて当然です。
ただ、個人的には、公務員の再任用制度はデメリットが目立つ制度だと考えています。
その理由として、
- 仕事を積極的にしない
- 扱いにくい空気感
- コスパが悪い
上記の3点について解説します。
仕事を積極的にしない
公務員に限った話ではありませが、定年を迎えるとオーラが消え、白髪も増え、一気に老け込む人を多く見てきました。その理由は、責任感から逃れられる安心感からくるものだと思っています。
何をどうしようが、何がどうなろうが、自分には責任がない世界です。体力的にも精神的にも現役時と同じパフォーマンスはできません。現役時と比べて給与も半分以下になるわけですから、やる気もモチベーションもあったものじゃありません。
残業もない。評価される必要もない。日々のローテーション業務をこなせば問題ない。そうなれば積極的に主体性をもって業務などしてくれません。常に受け身です。電話も窓口にも出ない職員は非常に多いです。
扱いにくい空気感
役人の天下りが問題になってから年々間口が厳しくなっており天下れない管理職も多くいます。課長級や係長級は天下れませんから必然的に再任用されることになるわけですが、この元管理職かつ元先輩というステータスが非常にめんどうです。
元課長級の人が担当者として再任用される場合、確実に年齢も下で後輩だった係長級に指示されるわけです。年齢的には一番の先輩ですが立場は一番下。管理職が長ければ長いほど事務分担への反発が強く、重要な仕事を任せることが難しくなります。
課長や部長に相談しても、その課長や部長がお世話になった先輩でもあるので、上司も助けてはくれません。扱いにくいから仕事をふらないと他職員の負担が増え悪循環に陥ります。
コスパが悪い
再任用後に担当者として働く人の年収は約310万円です。この額を多いとみるか少ないとみるかは判断が分かれると思いますが、地方公務員の初任給が月20万円とすれば年収は約330万円です。
- 役所に約40年間勤めて知識や経験はあるが、実際に手は動かさず、5年後には退職が確定
- 新卒で役所経験0だが、実際に手と体を動かしてくれて、あと40年くらいは働く可能性が高い
あなたが上司だとして、同じ年収ならどちらを雇いたいですか?部下としてほしいのはどちらですか?
私は今後のこともふまえて新規採用職員を1人でも増やしたいと考えている派です。ポストの数にも限りがあり、1人席には再任用職員と新規採用職員のどちらかしか座れませんから。
再雇用職員のことを老害とまではいいませんが、一緒に働くとなるとちょっときつい、しんどいという職員も多いことは事実です。
