国家公務員の段階的な定年延長は確実視されていましたが、
政府は社会的な状況を考慮し国家公務員の定年延長法案を廃案としました。
これが正式なものとなると、公務員の定年延長はなされず、60歳のままです。
いったい、いつ、公務員は定年が延長されるのでしょうか。
※定年を延長しないと決定したわけではありません。
国家公務員の定年延長法案が見送り⇒廃案へ
政府は2020年5月21日、検察官を含む公務員の定年延長を盛り込んだ国家公務員法改正案を廃案にする方針を固めた。
検察庁法改正案の今国会での成立見送りを受け、秋の臨時国会での継続審議を目指していたが、
新型コロナウイルスの感染拡大で雇用環境が急速に悪化する中、公務員の定年延長の必要性は薄れたと判断した。
安倍晋三首相は「この法案を作ったときと違い、今社会的な状況は大変厳しい。そうしたことを含め、しっかり検討していく必要がある」と述べた。
「民間企業が苦しい中、公務員を優遇するのはおかしい」(政府高官)として方針を転換した。
⇒2020年6月17日、会期末を迎えた衆院本会議で継続審議の手続きが取られず、審議未了で廃案となった。
内閣の判断で検察幹部の定年を延長できる特例規定に批判が強かったため。
政府・与党はこの規定を削除し、次期国会に出し直す方向で調整を進める。
菅義偉官房長官は本会議後の記者会見で「少子高齢化が進む中、国家公務員の定年引き上げが必要との認識に変わりはない」と強調。
その上で「改正案にはさまざまな意見があった。そうしたことも踏まえながら再提出に向けて検討していきたい」と語った。
当初は次期国会へ継続審議として仕切り直す方針だったが、自民党内から「公務員だけ定年延長されていいのか」(世耕弘成参院幹事長)などと再考を求める声が上がり、安倍晋三首相も廃案の判断に傾いた。
ただ、定年を65歳に引き上げる改正案の内容自体は維持する方向だ。
世論の批判を受け、検察幹部の「特例定年延長」だけをはずし、
国家公務員の定年延長法案は通すものと考えていましたが、
ここにきての廃案。
てっきり、継続審議に向けて調整しているものと思っていました。
とはいえ、特例規定を削除し、定年延長法案が再提出され可決されれば、
国家公務員の定年延長が確定します。
廃案としただけで、金輪際、公務員の定年延長はしないと決めたわけではありません。
ただ、次期国会以降に再提出されたとしても、
当初想定していたスケジュールはずれ込む見通しですね。
あと1年、、、というはざまの年齢にいた人はある意味ラッキーかもしれません。
若年層は遅かれ早かれ定年は延長されるでしょう。
ここからは当初案を前提に可決していたらどうなっていたか、
また、次期国会に再提出され、間に合わった場合のスケジュールを解説します。
国家公務員の定年延長スケジュール
国家公務員の定年が2022年度から2年ごとに1歳ずつ延長されることを盛り込んだ国家公務員法改正案が審議に入りました。
可決されれば、2030年度には、65歳が定年退職の年齢となります。
定年延長には公務員の評価方法(給与や人事)を年功序列で決めるのではなく、実力主義とすることが盛り込まれています。
給料は現役時代の7割となり、退職金にいたっては不透明な状況。
その余波は、地方公務員へと伝わることは間違いありません。
公務員の定年を延長するためには、国家公務員法などの関連法を改正する必要があります。
現在の国家公務員の定年は、国家公務員法第81条の2第2項により原則60歳となっているためです。
そのため、明日からいきなり定年延長とはなりません。
現時点のスケジュールは、
- 2020年度 通常国会に改正案を提出⇒2020年3月成立
- 2022年度 定年延長開始
- 2030年度 定年退職の年齢が65歳に
つまり、2022年度(令和4年度)から国家公務員の定年延長が始まります。
あくまで「年度」ですので、注意が必要です。
【公務員の定年延長早見表】
2020年3月「現在60歳の国家公務員の定年を2022年度から2年ごとに1歳ずつ引き上げ、2030年度に65歳とする」
と決定しました。
定年延長が開始されるのはあくまで「年度」ですから、生年月日が1月、2月、3月の早生まれの人は、少しややこしいことになります。
そのため、パッと見てわかる公務員の定年延長早見表を作成しました↓↓↓
この表は「年度」に合わせるため、生年月日も年度としています。
例えばですが、
- 1961年度生まれの方は、2021年度に60歳で定年退職
- 1966年度生まれの方は、2026年度に60歳で定年退職のはずが、+5年され2031年度に65歳で定年退職
などがわかります
これまでは「3年に1歳ずつ延長」が有力視されていましたが、そのペースよりも1年早まったことにより、
現役の公務員はほとんど逃げ切る(60歳で定年を迎える)ことは不可能になりました。
もう少し、詳しく見ていきたいと思います。
①2年に1歳ずつ延長するパターン
2020年3月に決定した内容「現在60歳の国家公務員の定年を2022年度から2年ごとに1歳ずつ引き上げ、2030年度に65歳とする」
政府は、経験豊富な職員の退職を防ぐには早期の実現が望ましいと判断したためです。
その計算でいくと、2022年度から定年延長が始まるとして、
生年月日でいうと、1966年度(昭和41年度)生まれの職員がボーダーラインです。
注意)1月、2月、3月の早生まれの人は年齢計算に注意してくださいね
1966年度以降の生まれの人は5年の定年延長が確実。
1966年度以前の生まれの人は、生まれた年によって1年から4年の定年延長となります(早見表をみてください)
②3年に1歳ずつ延長するパターン(参考)
参考までに紹介します。
公務員の総定員が定められている中、65歳までの延長を短期間で行うと、新規採用数を極端に絞らざるを得ない年度が出ることで組織の年齢構成が大きくゆがむ恐れがあり、3年に1歳ずつ延ばす案が有力とされていました。
しかし、この想定だと原案よりも+5年長くかかりますから、即効性がないと判断されたのだと思います。
これからは公務員の世界が実力主義に変わる?
公務員の世界は、すべて「年功序列」です。
当然、これまでの人事・給与体系のまま定年延長すれば、「公務員優遇」となります。
そのため、能力や実績に基づく人事評価制度へ見直しを行い、その評価に応じて人事や給与に反映する予定です。
というのも、定年延長の条件に盛り込まれているからです。
つまり、遅くとも2022年度からは、公務員が実力で評価されるということです。
あくまで、建前上は・・・
公務員の世界は古い体質・体制ですから、個人的には、そんな簡単には変わらないと思います。
なにせ、その実力たるものを評価するのは、年功序列で育った幹部たちですからね・・・
給料は段階的に減り現役時代の7割程度かつ役職定年制が決定
定年延長に伴って、給料や待遇について決定していることは3つです。
- 定年延長後の職員の給料は、60歳に達した後の給与を60歳前の7割程度
- 60歳未満についても賃金の上昇カーブを抑制する予定(50歳代から給与水準がなだらかに下がる形)
- 60歳に達した局長などの管理職を下位のポストに移す「役職定年制」の導入
給料の減額やポストの降格は当然で、定年が延長されるということは総人件費が増加しますから、これを抑制するためには必要なわけです。
特に、高齢層の給与見直しは必然だと思われます。
役職も定年制としなければ、管理職にあがれない職員が増加し、構成がいびつになります(個人的にずっと居座られても困ります)
(今でもそうなんですが)60歳まで部下をこき使っていた上司が60歳を超えたらヒラになって働く光景はなんとも世知辛いような気がしますね。
退職金の取り扱いは現在未定も目減りは確実
問題なのが退職金です。
仮に、給与と同様に、退職金も7割程度とするとなれば、
退職金は、退職する段階の給与月額に応じて決定しますから、このままでは単純に3割減となってしまいます。
一般的には、役職のない公務員の退職金は2,000万円程度ですから、600万円ほど減額されることになります。
この差を埋めるために、要は、定年が延長される5年間は現役時代の7割程度にするということです。
現行の再任用制度では現役時代の7割程度ももらえません。役職のない職員ですと半分以下になるでしょう。
5年あれば退職金が減った分は十分に取り戻せる計算です。
むしろプラスでしょう。もちろん、5年という歳月を犠牲にして・・・
ただ、まだ退職金については議論中であり、未定です。
もしかすれば、これまでと同じ扱いとなるやもしれません。
だって、そうでしょう?
定年延長が最大で5年の人はいいですが、
定年延長が1年の人が3割も減らされては、1年で600万円の差を埋めなくてはいけません。
つまり、タダ働きになってしまうのです。(私なら早期退職しますね)
であれば、定年延長どころか早期退職者が急増するかもしれません(平成25年に退職金が約10か月分減らされたときと同じ現象になるかもしれません)
そうならないための対策を現在も検討中とみていいと思います。
ただ、退職金は今ほど貰えず年々右肩下がりになることは確実視されていいます。
この10年で400万円以上退職金が減らされていることからも明白ですよね。
現役世代からすれば、なんだかな~といった感じですよね。ただただ働き損といいますか。。。
地方公務員(教員、警察官、消防士など)の定年延長は確実
あくまで定年延長が決定したのは国家公務員。
厳密には地方公務員の話ではありません。
あくまで国家公務員法の改正案であり、国家公務員に限った話でもあります。
しかし、基本的には地方自治体は国に順じます。
給料や手当もそうですよね。
もちろん、交渉(ゴネる)ことは可能です(住居手当や休暇の制度は国や地方でバラバラですよね)
しかし、定年延長はゴネる要素がありません。
国が~、民間が~、となっているときに、地方公務員だけ”特別です”では世間が許してはくれないでしょう。
交渉の末、1年や2年ねばれたとしても、結果的に、地方公務員も同様に定年延長となることは確実です。
裏を返せば、地方公務員も国家公務員と同じタイミングで定年延長を開始させるためには、
本国会で成立させないと、時間が足りないわけです。
地方も議会の承認が必要ですからね。
公務員は70歳まで定年延長される可能性あり
2020年2月4日に政府は、「70歳までについて就業機会の確保を企業の努力義務」とする「高年齢者雇用安定法」などの改正案を閣議決定しています。
2021年4月から施行され、60歳から70歳までの10年の定年延長がほぼ確定します。
あくまで努力義務と言い張るでしょうが、「自由という名の強制」の典型的な例です。
特に今の20代から30代の世代は要注意です。
2020年に入庁してくる新規採用職員が22歳だとすると、定年退職するまでに43年あるわけです。
43年もあれば、その間にさらに5年伸びて、定年が70歳になることは目に見えています。
となれば年金も75歳から?平均寿命って80歳じゃなかったですか?あれ?という若手にはお先真っ暗な世界になっています。
まとめ
60歳が定年退職の年齢だったわけですが、2030年度には確実に5年延長され65歳になります。
では、現時点で60歳の職員は定年退職した後は優雅に隠居生活をおくっているのでしょうか。
違います。働いているのです。
なぜなら、60歳で定年後、5年間は年金などが受け取れません。
年金の支給開始は65歳と決められているからです。(もちろん60歳から受け取ることは可能ですが、受給額が大幅に削減されてしまいます)
5年の無給区間を埋めるために嘱託職員として、再任用職員として、65歳まで働いているのです。
公務員は原則、副業が禁止されているので、サイドビジネスなどで収入を増やすことが難しいんですよね。
つまり、法的には60歳が定年退職でも、現実は65歳まで働いているということ。
であれば、65歳で定年延長となっても、70歳まで働く未来はもうそこまできています(年金も70歳から支給になることも確実でしょう・・・)。
現時点の平均寿命は男性81歳、女性87歳です。(健康寿命にいたっては、男性72歳、女性74歳)
もう、あくせく働いて、老後はゆっくりという時代ではありません。
単純に男女を平均して考えると、
- 65歳で定年退職して
- 70歳までは年金が支給されないから働いて
- 73歳で介護され
- 84歳で寿命を迎える
この流れが公務員の平均となるのです。
政府は経験豊富な職員の退職を防ぐには早期の実現が望ましいと理由を述べていますが、要はできる限り早く定年を延長したいだけです。
長く働かせたいだけです。
公務員だけではなく、全サラリーマンは今一度、働き方を考え直す時期にきています。
退職金についてですが、人事院の提言通り国会に提出されているようですので、「退職時の俸給×規定月数」となるようですね。
ここで、「退職時の俸給」ですが、今回の国会提出案では60歳以降の俸給支給額は「60歳の俸給月額の70%」となっており、下位の俸給が発令されるわけではないようです。
つまり、「懲戒処分で減給30%」を食らっているような状態が続くだけで、退職金の支給の時には「本来の支給額×規定月数」となるので、目減りはしないのでは?と思います。
長く居すわると、成長できない部下等が出るのではないでしょいか、ある程度の段階で、身を引いてもらい、自らの考えで終活が望ましいのでは。