公務員は休職中に旅行したら懲戒処分です【休職期間の過ごし方】

公務員が病気などを理由に休職した場合、休職中に何をしてもいいわけではありません。休職中の公務員には「療養専念義務(病気療養中は回復に努める義務)」があります。休職中に公務員の信用を失墜させる行為を行った場合は懲戒処分を受ける可能性があります。
少しなら大丈夫という気持ちで旅行をしても遊びに行っているとみなされれば懲戒処分です。病気療養のため旅行にいった職員が懲戒処分された事例もあります。公務員に対する世間の目は厳しく内部からの目も冷ややかです。
公務員の休職者数は年々増加しています。いつ自分が休職することになるか分かりません。もし休職することになれば、、過ごし方には細心の注意を払ってください。
休職中の病気療養のための旅行は懲戒処分の対象となる可能性が高い
公務員は育児や介護で休職する制度のほか、うつ病など精神的な病気で休職する制度があります。とくにうつ病での休職は年々増加している状況で、私の周りにも何人か休職してそのまま異動になった職員は多く、数日前まで一緒に笑いあって飲んでいたのに・・・なんて人も中にはいます。
うつ病の療養のために休職することは何の問題もありません。また、療養のために外出することも全く問題ありません。ずっと家に閉じこもっていては、うつ病ではなくとも精神的に病むことは証明されています。
しかし、旅行となれば別です。一見すると旅行も外出の一環ともいえますし数日であれば問題ないように思えますが、公務員の場合は状況が異なります。
休職中の旅行が理由で懲戒処分された事例
休職中だからといって外出が禁止されているわけではありませんが、外出が理由で懲戒処分された事例を複数解説します。
休職中にイベントに参加しSNSに投稿したとして懲戒処分された事例
- 2023年7月25日
- 大阪府四條畷市市民課の女性職員(26歳)
- 停職2カ月
- 医師の診断書を提出の上で2022年11月から処分日まで病気休暇などを取得。2022年12月~2023年1月にロリータファッションやコスプレなどで複数のイベントに参加した様子や自身の入れ墨や顔写真、「忘年会に行って二日酔い」などとツイッターに投稿
- 「SNSで市職員がイベントに参加した様子をアップしている」などと匿名の通報で発覚、本人も事実を認めた
休職中(病気療養中で回復に努める義務がある)の行為が信用失墜行為にあたると判断されて懲戒処分となっています。病気の理由は分かりませんが、行動ができているということは身体というより心の病気であった可能性が高く、行き過ぎた行動だと判断されたものです。

休職中に海外旅行をしたとして懲戒処分された事例
病気休職中に海外旅行をしたとして減給6か月(10分の1)の懲戒処分を受けた事例です
- 2017年2月
- 大阪府吹田市立中学校の女性教諭(32歳)
- 減給6カ月(10分の1)
- 病気を理由に休職中だった2014年11~12月に5泊7日でヨーロッパを旅行をした
女性教員は事前に上司に相談、上司からは控えるよう指導されたが従わなかったとのことです。大阪府教育委員会は地方公務員法の信用失墜行為に当たると判断しています。
相談すればいいと思っていたのでしょうか、上司がダメだと言っているのを押し切って旅行すれば処分されても致し方ありません。休職中でなければ有給休暇を使っての旅行ですから何の問題もありませんが、こと休業中となれば別だとの判断です。
また、病気休職中に海外旅行をしたとして停職6か月の懲戒処分を受けた事例です。
- 2024年3月1日
- 福岡県うきは市総務課の主任主事(36歳男性)
- 停職6か月
- 病気休職中の2023年9月21日~10月2日にイギリス旅行をした
- 市の聞き取りに「病気休職中に海外旅行に行くことが悪いとは思わない」と話した
事前に旅行の計画を知った市から療養に専念するよう指導されたが従わなかったとのことです。事前に止められたにもかかわらず無視して旅行をしたばかりか悪気はないと主張している時点でそれなりの人物なのだろうと想像はつきますね。
さらに、病気休職中に旅行やゴルフをしたとして停職2か月の懲戒処分を受けた事例です。
- 2020年8月
- 大阪府堺市建設局の男性職員(26歳)
- 停職2か月
- 2016年~2020年6月までの4年間、病気を理由に休職や休暇を申請
- 約500日休んでいたが、平日を含め39回にわたり、旅行やゴルフに興じていた上、だんじり祭りの準備にも参加していた
男性職員は旅行やゴルフについて「復職に向けた治療の一環。遊びという認識ではなかった」と主張しましたが、堺市人事課は「休職中のため、休日にも療養専念義務がある」などとして処分となった事例です。
正直、かなり悪質です。さすがにここまでのケースは聞いたことがありません。制度を悪いように活用して、休職して復職、すぐに休職して復職を繰り返しています。公務員の休職制度では、1年間は給与が8割支給され、2年目以降は0という自治体が多いです。3年間休職し復帰の見込みなしとなれば免職(いわゆるクビ)ですから、そうなるまえに復職するわけです。復職した日数が一定期間あればリセットされます。大卒22歳で採用されたとすれば入庁後すぐに休職しており、あえて休職を狙っている常習犯と見なされても仕方ない行為だと思います。
この職員の主張のとおり治療の一環だと体裁を整えることは可能です。
- 旅行=気分転換
- ゴルフ=体を動かすため
- だんじり祭りの準備=地元貢献
ただ、平日を含めて39回という頻度の多さが気になります。半強制的に地元住民に参加させられていたともとれますが、家族や友人でもない地域住民と交流できるなら復職可能と判断されても仕方ありません。休職期間やその頻度からして、明らかに病気療養を超えていると判断されたものと思われます。
休職中の旅行は懲戒免職処分までにはならない
どの処分事例も、公務員としての信用失墜行為にあたるとしての懲戒処分です。停職と減給は非常に重たい処分ですが、免職処分ではありません。
過去の事例をみても、病気を虚偽報告し不正に休暇を取得したレベルの悪質さでなければ、仮に休職中に旅行したとしても免職処分までには至らないと考えられます。
公務員組織には「うつ病はあまえ」という認識がある
旅行は病気療養のためと主張しても理解はなかなか得られません。まだまだ「うつ病はあまえ」だという認識が日本全体にあるように思います。ましてや公務員ですから理解を得ることは難しいです。公務員の給料は税金です。税金を使って公務員が休職中に旅行なんてありえないという市民感情がでてくることは当然だと思います。
しかし、世間の公務員に対するイメージは、いまだに昔のイメージをひきずっています。
- 誰でもできる簡単な仕事をして高給取り
- 福利厚生が恵まれていて休みが簡単にとれる
- クビにならない安定した職業
つまり、「らくしてお金がもらえる仕事=公務員」という印象ですから、公務員がうつ病になったといっても誰も信じてくれません。公務員がうつ病で休職となれば、どうせ仮病だろ?となるわけです。それで退職しようものなら、世間は、公務員すら務まらない奴が民間でやっていけるわけがないという評価を下します。
日ごろからこのような目で見られているのが公務員なわけですが、逆に言えば、この厳しさが公務員の休職者数を増やしているともとれます。
公務員は3年間休職しなければクビにはなりません。民間企業では1年間です。公務員は民間企業に比べて休職しやすいという背景があることは事実です。
紹介した事例のように明らかに制度を悪用したような職員をクビにしない(制度上は免職処分にできない)となれば同僚からの休職者の目は厳しくなります。
休職期間にやりたいことは土日祝にやるのが無難
もし病気休職することになり、気分転換もこめて何かしたいと思ったら、土日祝にやりましょう。買い物をしても旅行をしても何ら問題はありません。ただし、グレーと感じるものについては上司に相談したほうが無難です。
温泉に入るために1泊するレベルであれば役所もそこまで目くじらを立てることもないと思いますが、世界一周旅行だとしたら、療養のための旅行という説明がつくでしょうか?一般常識に照らし合わせて、あまりに度を超えたものではない限り大丈夫です。
休職中ということは労働義務は免除されているわけですから、平日の日中でも本来は問題ではありません。しかし公務員に対しては世間の目が厳しく、いつでも市民が見ています。コンビニに入って飲み物を買っただけで通報される世の中ですから、やめておくほうが無難です。
公務員にかせられる「療養専念義務」は、明らかに民間企業に勤めるサラリーマンよりも厳しいものがあります。世間は理屈では動きません。感情で動きます。
どれだけ病気の療養のためだと医学的な根拠を示そうが、税金で飯を食っている公務員が休職中に旅行なんてけしからん!と言われてしまえば、そこで終了です。役所は職員を守ってはくれません。仮病と疑われるような行動は休職者にも迷惑がかかるため制度を保つためにも常に世間から監視されているという視点はもっておくべきです