将来、公務員の退職金がなくなる可能性があります。
事実、この数年で公務員の退職金の平均支給月はどんどん減っています。
現役の公務員の方は、早期退職も考慮して、人生設計を組み立てる必要もでてくるかもしれません。
それだけ、安定という公務員の職業が不安定になってきているということです。
それでも公務員になろう!と思っている人は、覚悟が必要です。
公務員の退職金の平均支給額の計算方法
公務員における退職金の計算方法は簡単です。
「退職手当 = 基本額(退職日の俸給月額×退職理由別・勤続年数別支給割合)+調整額」
退職手当は、民間企業でいうところの退職金です(便宜上、本記事では退職金とします)
退職日の俸給月額は、月給のことで、残業手当などは含みません。
あくまで、基本給(+地域手当)になります。
退職理由別・勤続年数別支給割合は、自主退職の場合は定年退職よりも支給月数が下がります。
また、早期退職募集制度を利用した場合は加算されます。
>>>「公務員を退職するタイミングを間違えると退職金を大損します」
どちらにせよ、最大の支給月数は、現行制度で47.709月となっています。
調整額とは、係長級、課長級、部長級、局長級などの役職についていた場合に加算される額になります。
支給月数は60月分で、調整額が5万円だとすれば、退職金は+300万円になります。
役職がうえになればなるほど、退職金は増える仕組みです。
公務員の退職金の計算例
具体に退職金を計算してみます。
「退職手当=基本額(退職日の俸給月額×退職理由別・勤続年数別支給割合)+調整額」
の計算式に具体の数字をいれるだけですので、誰でも概算額が計算できます。
担当者で定年退職(調整額は0円)するとして、
退職日の俸給月額を40万円(年収に換算すると約700万円)
支給月数を最大の47.709月とします。
この場合、
退職金=40万円×47.709月=約1,900万円となります。
国家公務員でも地方公務員でも、一般的な行政職は、
担当として定年退職を迎えた場合の退職金の平均額は約2,000万円と考えてもらって問題ありません。
※部長級で退職した場合、基本給55万円×47.709月+調整額7万円×60月=約3,000万円のような計算になります
国家公務員の退職金平均支給額
国家公務員(行政職俸給表(一)適用者)の定年退職者の退職金平均額は、約2,152万円
(内閣官房「退職手当の支給状況」より)
地方公務員の退職金平均支給額
地方公務員(一般行政職)の定年退職者の退職金平均額は、約2,265万円
(総務省「平成30年4月1日地方公務員給与実態調査」より)
公務員の退職金は減り続けている
退職金の最大の支給月数は、現行制度で47.709月となっています。
(もっと昔は99月という話も聞きますから、もうフィクションの世界だと思うレベルです。)
しかし、この月数も10年前は59.28月あったわけですから、11月分以上減額されています。
つまり、この10年間で約450万円も退職金が減額されている計算になります。
これまでの退職金の減額推移を以下にまとめました。
- ~2012年12月31日 59.28月
- 2013年1月1日~2013年9月30日 55.86月
- 2013年10月1日~2014年6月30日 52.44月
- 2014年7月1日~ 2017年12月31日 49.59月
- 2018年1月1日~現在 47.709月
際立つのは、2013年1月から2014年7月にかけての3段階の引き下げではないでしょうか。
およそ1年半で退職金が400万円以上もさがったことで、
多くの公務員が早期退職する自体になりました。
>>>「公務員を退職するタイミングを間違えると退職金を大損します」
定年退職という名誉をとるか、自主退職というお金をとるかでゆれた人が多かったようです。
もちろん、割合としては名誉をとった人が大半です。
定年後の再就職にもかかわってくることになるので、再雇用制度で65歳までと考えると、
退職金が下がることを覚悟で働く選択しかできなかったのかもしれません。
たった7年前に公務員になった人ですら、すでに退職金が10月分以上、約450万円の減額を受けているわけです。
この流れで減額されれば、今、公務員になった人の退職金があるのかすら疑いたくなるのは不思議なことではりません。
7年で約12月の減額ですから、10年で15月が減額されるとすれば、
- 10年後の2030年には30月
- 20年後の2040年には15月
- 30年後の2050年には0月
なんてことも計算上はあり得ます。
もっとも、あくまで理論上の話。
なぜなら、公務員の退職金は給与と同様に民間企業の調査のもと決定するからです。
公務員の退職金は5年毎に見直される
公務員の給与(月給やボーナス)は、毎年、人事院勧告によって決定します。
この人事院勧告は、50人以上の従業員がいる民間企業の給与の実態を調査した結果になります。
実は、退職金についても調査されているのです。
ただ、退職金は5年毎に調査します。
この改定に合わせ公務員の退職金が決まります。
公務員の退職金は民間企業の退職金に比例する前提であれば、
30年後に仮に公務員の退職金が0となっていれば、民間企業も0というわけです。
あり得ない!と思っている人も多いと思います。
私も、さすがに退職金が0になるとは思っていません。
なぜなら、退職金が前提で人生設計(住宅ローンの返済など)をしている世代がまだ現役だからです。
しかし、支給月数については確実に減額され、今の退職者と同額が貰えることは不可能です。
さらに、基本給が下がれば退職金も下がりますから、ダブルのリスクがあります。
われわれ公務員には、抵抗の余地はありません。
下がるときは無常に通知があるだけです。
特に今の若手職員は「退職金はないもの」として考える、
その前提で人生設計を考える必要があるかもしれません。
非常に参考になる記事でした。
現役公務員でここまで考えている人は多くはないでしょう。
こういった問題点について声を上げるとしたら組合なんでしょうが、ほぼ期待できないでしょうね。
そして今から公務員を目指す学生達には正しく理解したうえで入職して欲しいものです。