国家公務員と地方公務員はどっちがいい?ヒエラルキーとプライドには要注意

国家公務員と地方公務員は同じ公務員でも立場や待遇は全く異なります。公務員試験を受けようと考えている人や公務員への転職を考えている人は、一度は公務員の職種の多さゆえに迷ったことがあると思います。
国家公務員と地方公務員のを選ぶうえで重要な要素を解説します。
※本記事では国家公務員と地方公務員は「一般行政職」を想定しています。教職員、警察、消防、自衛隊などは全く別ですのでご注文ください。
仕事内容(やりがい)は考えなくていい
国家・地方公務員ともに採用されたあとの配属先はランダムです。採用面接時の希望は通りません。そのため、公務員になる前にやりがいを気にするだけ無駄です。やりがいは主観的な要素が強いため、客観的な判断要素になりません。
人事異動の配属範囲と異動頻度が全然違う
国家公務員と地方公務員を決めるうえで一番大きい要素は人事異動での異動範囲と頻度です。
国家公務員は全国転勤が当たり前です。人事異動のペースも地方公務員より早いです。キャリア採用とノンキャリア採用でも違いますが引っ越しは必須です。北海道に勤務している人が1週間後に沖縄県にいかなければなりません。
一方、地方公務員であればその範囲は制限されます。例えば、東京都であれば東京都内(小笠原諸島、国への出向などは除く)の異動しかありません。特別区であれば、その特別区内でしか異動しません。
引っ越しは思っている以上に大変です。
- 引っ越し業者を手配
- 荷造り⇔荷ほどき
- 電気、ガス、水道、ネット等を解約⇔契約
- 役所へ転出手続き⇔転入
などなど、国家公務員であれば1~2年で異動ですので、相当な頻度です。一方、地方公務員は、3年~5年で異動です。
将来を見越して考えることが重要
独身であれば自由度が高いほうが好きな人も多いかもしれません。全国転勤は旅行好きな人にとってはメリットです。しかし、結婚したり子供ができたりすれば話は別です。特に小さい子供を転勤族にしたくないのであれば単身赴任という選択肢しか残されていません。
下手をすれば60歳の定年までずっと単身赴任です。耐えられますか?
国から地方へ転職する人は多く、その転職理由は家庭(子育て)のためがほとんどです。
夢はマイホームを建てて家族と楽しく過ごすという人も多いでしょう。マイホームを買っても家に帰るのは長期休暇のときだけというパターンもあり得るのです。
地方公務員も都道府県になると転勤は必須ですが、市区町村になれば自宅からの通勤が可能です。
公務員には専用の国家公務員宿舎が全国に整備されており、家族寮や独身寮などに入寮できます(場合によっては抽選です)。ただ、基本的に設備が古く生活は快適ではないのでおすすめはできません。
プライドが高い自覚がある人は国家公務員一択
地方公務員の行政職として10年以上働いていますので、国、都道府県、市区町村の職員の方と仕事をする機会が多くあります。
もしあなた自身がプライドが高い自覚があるのであれば、絶対に国家公務員になるべきです。
公務員試験の難易度とヒエラルキーは比例しない
公務員試験の難易度は一般的に、
国家公務員総合職(1種キャリア)>(超えられない壁)>三大都市圏の都道府県及び政令指定都市≧国家公務員一般職(2種ノンキャリア)>三大都市圏以外の都道府県及び政令市>中核市>市町村
といわれています。
国家公務員の総合職であるキャリアは別格です。三大都市圏とは、東京、大阪、名古屋を中心とした経済圏で、例えば、東京圏だと東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県になります。
人気度や都市の財政力によって難易度は変わりますし、穴場の都市もありますが、概ねこのヒエラルキーが公務員試験には存在します。
しかし、公務員になった後は別の話。どこまでいっても、国は国であり、県は県であり、市は市です。法的には平等という立場を取ながらも実質的には国の下請けが都道府県であり、都道府県の下請けが市区町村です。
つまり、「国>都道府県>政令市=中核市=市町村」のヒエラルキーは未だ健在です。政令指定都市も中核市も都道府県から一部の権限が付与されているものの立場は市です。
建前としては、国と都道府県と市町村は平等ですが、内情は全く平等ではありません。
つまり、プライドが高い人が市の公務員になると、県や国の職員の人から常に上からモノを言われる立場になります。
市は、市だけでは仕事ができません。地方自治体は東京都以外は財政難ですから、補助金が必要なわけです。同じ税金ですが、国のお金を、県のお金を使って事業を進めることになります。補助金を貰う立場ですから、下から下からいかなければなりません。補助金の使い方にミスがあれば詰められるわけです。機嫌を損ねれば、補助金を貰えない可能性もあります。
担当者の態度に大きく左右されますが、経験上、基本、国や県になればなるほど、上から目線です。若手職員はお互いの立場を理解した議論になりますが、ベテラン職員は本当に酷いです。
公務員は立場で仕事をする
公務員は立場で仕事をします。決して、学歴や能力で仕事をするわけではありません。国でも地方自治体でも本庁と出先が存在します。
立場上、本庁>出先、となります。予算をとってくるのが本庁、予算を使うのが出先とイメージしてください。
国や都道府県は、本庁の係長級は、出先の課長級ですから、1ランクほど役職も異なります。本庁の若手の方が、出先のベテランよりも立場は上なわけですから、本庁に配属された新規採用職員が出先の定年退職を控えたベテラン職員に指示をしなければいけません。
あなたがベテランの出先職員であれば、本庁の新規採用職員に指示され、その指示を受けて仕事をしなければなりません。あなたがいくら仕事ができ、周りからも評価されていようが、立場上、下の部署へ配属されれば、上にはへりくだる必要があります。
「立場で仕事をする」ことを理解して腑に落とさないといけなと個人的に思っているのですが、何年もすれば忘れていく人が多い印象です。
プライドは一生もので簡単に修正できるものではない
もし、あなたがプライドの高い人なら、市区町村は絶対にやめたほうがいいです。なぜなら、国や県に対してもペコペコ、自治体中でも本庁には頭を下げる仕事が求められます。
市区町村になればなるほど、住民との距離は近づくことになり、苦情や要望を受けなくてはなりません。国や県が勝手に進めた事業の苦情を受けなくてはなりません。常に押し付けられ、後処理をさせられる市区町村の立場は、時にはプライドを捨てないとやっていけません。
国だ、県だ、と逃げることはできません。住民からすれば国と県と市なんて関係ありません。全部ひっくるめて公務員、そして一番近い公務員に文句を言うのです。つまり、プライドが高い人は絶対にメンタルが折れます。
プライドが孤高なら公務員はやめたほうがいい
こき使われるのが嫌な人は、公務員は絶対にやめておいたほうがいいです。起業家を目指してください。または、最終的には自分がトップになれる可能性がある職業についてください。
国家公務員の組織のトップは内閣総理大臣です。各府省庁のトップは大臣です。内閣総理大臣と各大臣は国家公務員の特別職ですが国会議員です。選挙で選ばれないとなれません。都道府県も同様で知事は選挙で選ばれます。
つまり、公務員である以上、誰かの下で働くことは避けて通れません。あなたが東京大学を卒業し、キャリアの首席で採用されようとも、中卒の国会議員を先生!先生と呼んでペコペコしなければなりません。
私はあまり好きな言葉ではありませんが、「公務員は公僕」とはよくいったもので、あくまで公の下僕なわけです。公務員の世界は、議員>>住民>>>>>>>>>>公務員、ぐらいのヒエラルキーで働くことになります。
プライドを捨てることが公務員として生きるコツ
公務員で働く以上、プライドをどう捨てるかがカギになります。住民に理不尽に怒られても、国や県に仕事を押し付けられても、なんで私がこんな仕事をしなくちゃいけないんだ!と思っても、すべて、自分のプライドを捨てられるかにかかっています。
国家公務員は
- 「総合職」=「旧Ⅰ種採用(キャリア)」
- 「一般職」=「旧Ⅱ種採用(ノンキャリア)」
また、地方公務員は、
- 「上級」大卒以上
- 「中級」専門卒以上
- 「初級」高卒以上
と採用区分が異なります。
結局、どこでどんな仕事をしようと、プライドに返ってきます。自分は大丈夫!そう思っている方もいるかもしれませんが、その時点でプライドは高い方だと思うので注意してください。
悲しいことに、自分では気が付けないのがプライドです。働きだして始めて分かる自分の怒りポイントもありますから。
事実、自分の思った通りにいかなくて、悩んでいる公務員は多く、退職していく若手もいます。今や、国家公務員の若手職員の7人に1人が退職を希望している時代です。
もちろん、これは民間企業のサラリーマンにもいえることですが、人生はすべて思い通りにはなりません。どう折り合いつけるか、はたまたつけないか、それはすべて「プライド」を捨てられるかどうかがカギです。
まとめ
国家公務員は、国家のために仕事をする。地方公務員は、住民のために仕事をする。それだけの違いであって、それぞれの立場のもと仕事をします。
それぞれの機関は法的に平等ですが、実情は国>都道府県>市町村という位置づけになります。国や県に対してヘコヘコする必要はありませんが、しなくてはいけない場面も多いということです。
プライドが高いままで精神的に病んでしまって、退職する人を多く見てきました。
プライドが高い人は、絶対に国家公務員になってください。国や県、住民に頭を下げることに抵抗がある人は地方公務員には向いていないです。
公務員の仕事は、国家、地方に関係なく、「謝る」仕事だと思っています。誰にもどこにもぶつけられない国民の思いは公務員に向かいます。公務員はどれだけいいことをしても褒められることはなく、ただ、理不尽に怒られる仕事です。
学歴コンプレックスを抱えている人も多いのが公務員の世界です。定年間近の職員が未だにあいつは高卒だの言っている姿を見ると悲しくなります。