これからの時代、若手職員が退職しないような施策をうちだせない役所は終了です。
若手職員は今後の役所を支える貴重な人材。
その人材も、魅力のない国や地方自治体からは離れていく時代に突入しています。
国や自治体は、早くこの事実に気が付いて対策をしなければ衰退の一途をたどることになりますが、実行に移していると感じるのは数自治体のみ。
これまでは何もしなくても優秀な人材がくるようなあぐらをかいていた役所も、慌てなければいけません。
※仕事内容や残業時間など、現実とのギャップについては論じるつもりはありません
公務員は一人一人のコストパフォーマンスが求められる時代
公務員の仕事は減るどころか、これからはどんどん増えてきます。
2021年度、国家公務員の恒久的な定員が1979年度以来42年ぶりに増加する予定です。
増加理由は新型コロナウイルス対応やデジタル庁の新設など。
ただ、これまでの業務が減るわけではなく、新しく進める事業に人員を追加するという趣旨であって、仕事が減るというわけではありません。
公務員の仕事は減るどころか、これからはどんどん増えてきます。
だからといって、職員の数は増えません。
国家公務員の定員が41年間削減され続けてきたことからも傾向が変わることはありません。
住民の要求レベルはあがり、それに対応する職員の数は減っていくわけですから、
公務員はコストパフォーマンスが最重要される時代になっています。
優秀な人材と若手職員が公務員から離れている
国家公務員では、キャリア(総合職)の離職が加速しています。
- 2013年に21人だった退職者数も、2019年には87人と約4倍
- 採用試験申込者数はピーク時の1996年に45,254人だったものが2019年は過去最低の20,208人と半数以下
- 2015年度の東大出身の合格者数は459名だったものが、2020年度には249名
しかしながら、2020年3月卒業予定の大学3年生に「就職したい企業・業種」を調査した結果、
- 1位:地方公務員 31.6%
- 2位:国家公務員 18.0%
約50%の大学生が公務員になりたいと思っています。
この事実から、優秀な人材の公務員離れが加速していることは明らかです。
一人一人のコストパフォーマンスがさけばれる時代で、優秀な人材が確保できないというのは危機的状況だという認識をもつべきです。
もちろん、少子化の影響はすくなからずあるでしょう。
民間企業に比べれば、離職率は未だに低いままです。
>>>「国家・地方公務員の離職率ランキング!民間企業より低い?高い?」
しかし、若手から中堅職員の退職が加速していくというデータを紹介します。
2019年11月~12月に各府省庁に勤務する国家公務員の約3割を対象に実施され約4万5千人から回答があった調査では、
男性で既に辞職を準備中か、1~3年程度のうちに辞めたいと回答した年代別の割合は、
- 30歳未満 14.7%
- 30代 6.0%
- 40代 2.6%
- 50歳以上 3.3%
同様に、女性は、
- 30歳未満 9.7%
- 30代 8.0%
- 40代 3.9%
- 50歳以上 3.9%
と男性と似た傾向が出ています。
若手ほど公務員を辞めようと考えているということです。
公務員の登録者数(教師や警察官など除く)が2019年10~12月期に前年同期より22%増えた転職サイトもあるようで、
民間企業へ転職する公務員が増加している傾向であることに間違いはありません。
優秀な人ほどすぐに辞めるというのは間違い
優秀な人ほどすぐに辞めるということは一概には言えません。
あくまで経験上の話にはなりますが、
- うつ病などの病気がもとで退職
- 結婚や子育てに伴う退職
- 職場環境や仕事自体が嫌になった
といった理由がほとんどです。
優秀という定義によりますが、これをやりたいから辞める!と言って退職した人は聞きません。
体裁上、本音は言わずに退職する人もいるでしょうが、
私が”この人はすごいな・・・”と思った人は誰一人として辞めていません。
確かに、公務員が先細りなことは明白ですから、即行動できるという点では優秀でしょう。
しかしながら、だからこそ、私が支える、引っ張っていくという志が高い職員がいることも事実です。
国や地方自治体はもっと危機感をもつべき
公務員離れが加速することの最大の問題点は、国力低下に直結するということです。
この流れが加速すれば、国や地方が衰退することは目に見えています。
もちろん、
- 国から地方自治体へ
- 地方自治体から別の地方自治体へ
といった公務員組織間での転職も増えています。
公務員に優秀な人材が多く入ってこない以上、優秀な人材の取り合いになることは必至です。
しかし、これは国力低下の本質的な解決にはなりません。
横移動しているだけですからね。
危機感を感じてる国や自治体では業務の効率化と名ばかりの改革をかかげていますが、そんなことで解決できていればとっくの昔に解決しています。
私の自治体でも、若手職員の働きやすさを向上しようとした施策がありました。
若手職員が意見を出し合い、業務改善をしようというものです。
若手職員は月に60時間以上の残業なんて当たり前の世界で仕事をしていますから、意見があがるあがる・・・
1年ものあいだ議論した結果どうなったと思います?
上層部「若手職員の能力向上のため、業務削減は行わない」
という回答でした。
もう、言葉も出ませんでしたね。
正直、この組織は終わったな・・・と私が感じた瞬間でした。
確かに若手職員一人一人の能力の向上は必要ですが、そんなことを言っていられる時代じゃないことを理解できていません。
もう、人員配置的に業務の効率化ではどうにもならないところまできています。
そのくせ、組織の方針は「外部委託」
民間企業へどんどん業務委託しているわけですから、支離滅裂なわけです。
あぐらをかいて何も対策しない自治体と、そうでない自治体では差がひらくばかりです。