公務員は年功序列の世界ですが、出世したい人もいれば出世したくない人もいるように働く人の価値観は様々です。
上司の課長や部長に話をきくと、係長時代が一番楽しかったと口をそろえて言われます。時代が違うということもあるかもしれませんが、やりがいという意味では確かに係長級が全てに係わることになりますから、係長級こそ公務員の神髄を味わえることは確かです。
しかし、係長級が一番ストレスを抱え精神的にツライことは間違いありません。一番最悪なのが係長級を長く経験してそのまま定年退職となることです。課長にならないと再雇用の給料も低いですし、退職金も低いです。しかしながら、係長級を経験しないと管理職への道を開くことはできません。
それであれば、いっそのことずっと担当のまま働くほうが楽なのではと考えるのはごく自然なことです。
今回は、
- 年収
- 責任
- ストレス
の3つの視点から、公務員の役職別のコストパフォーマンスを解説します。
公務員の年収は管理職未満は年功序列ではない
公務員は年功序列だから年収も年功序列だと思っている人も多いと思いますが、半分正解で半分不正解です。
確かに、勤続年数が増えれば増えるほど、役職が上がれば上がるほど平均年収が高くなることは事実です。しかし、それはあくまで平均であって、置かれる状況によって年収は大きく違います。その理由は残業代です。
自分が働いた分だけ給料として貰えるのは係長級までです。管理職は手当が貰える分、残業はすべてサービスなので、実は時給は高くありません。
22歳大卒公務員の年収は約350万円ですが、残業代だけでも100万円以上差がでます。つまり、残業が多い部署に配属された22歳と毎日が定時上がりの部署に配属された30歳では、22歳のほうが年収は高いことになります。
これが役職にも反映されることになります。
課長級以上は管理職ですから、基本的に残業代は支給されません。その代わりに管理職手当が支給されますが、課長にあがる寸前の係長級は基本給も高いですから残業が多い係長級の方が年収は高くなります。同様に担当と係長も逆転する可能性があります。
年収だけを見れば、課長級以上の管理職からは年功序列ですが、担当や係長級は配属される部署、担当業務によて大きく異なります。
以上から、年収こそ全てだという人は、担当<係長級=課長級<部長級<局長級、の順となります。
公務員の責任は役職が上がれば上がるほど重たい
責任の重さについては年功序列ではなく役職が上がれば上がるほど増えます。勤続30年の担当者も新規採用職員も同じ担当者レベルの責任を負います。
問題が起こったときの記者会見に担当者がでて頭を下げることはありません。いくら担当者がミスをしてもそれは上司の責任になります。管理職として指導職として責任の一端は上司にあります。そのため、部下のミスで上司が懲戒処分を受けることは往々にしてあります。横領や犯罪など担当者だけに非がある場合は関係ないように思えますが、そのことに気が付けた、防止できたとして懲戒処分を受けることもあります。
課長のミスは部長や局長の責任になります。もちろん、市長の問題発言で苦情や抗議が相次ぎ電話がパンクしたり業務に支障をきたす事例もあります。そういった点を見れば上のケツをふいているのは下という構図になりますが、だからといってその苦情を受けている担当者が給与をカットされたりすることはありません。
上司のミスで部下が懲戒処分を受けることはありませんが、部下のミスで上司は懲戒処分を受けます。その責任の重さに耐えきれず、係長になった人が担当に戻ることもあります。公務員は自ら降級を申し出ることが可能です。
責任を負うこと=給与は高く、能力以上に責任を負うことで給与が高いという事実は公務員でも同じです。一方、仕事量や作業量は減りますから、部長級や局長級のコスパは最強です。
以上から、責任は絶対に負いたくないという人は、局長級<部長級<課長級<係長級<担当、となります。
公務員のストレスは役職が上がるほど勤続年数が増えるほど低くなる
公務員が抱えるストレスは、係長級が最も高く、精神的に疲弊するポジションです。上司からの圧力だけでなく部下からも圧力を受けることになるからです。実は、部下からの圧力も結構キツイです。
係長級は、管理職のパワハラにも近い指示でも業務を進めなくてはいけません。しかし、担当者もYESマンばかりではありませんから、担当者をフォローしながら進めなくてはいけません。自分よりも年齢も勤続年数も上な部下に対し指導をしなくてはいけない場面もあります。
課長級も同じような立場ではありますが、係長級のほうが大変です。
また、係長級以下は住民苦情をダイレクトに処理する必要があります。場合によっては議員の無茶苦茶な要望を処理する必要もあります。一方、課長級は議員からの圧力はあれど、住民苦情からは一枚壁を隔てて対応することができます。電話も基本的に出なくて良いですし、窓口に立つこともまずありません。
課長は課長の部長は部長のストレスがあると言われればそれまでですが、上の人間は下の人間に対応を指示しすれば良いだけす。結局、係長級まで来たときにそれを担当者になげても処理できませんから、最後のフィルターとして係長級が処理する必要があります。
管理職からは、役職が上がれば上がるほどストレスが下がります。議員など権力者から要望を受けたとて、結局、現場を見たり法律根拠を調べたりするのは部下の仕事ですから、疲弊するのは、窓口や電話対応するポジションということは明白です。裏を返せばそれが嫌で出世を目指す公務員も多いと思います。
つまり、ストレスフリーで生活したいという人は、係長級<担当<課長級<部長級<局長級、となります。
公務員の役職別コストパフォーマンス
結局のところ、公務員としての人生に何を追い求めるかによってコストパフォーマンスは変わってきます。
- 年収こそ全てだという人は、担当<係長級=課長級<部長級<局長級
- 責任は絶対に負いたくないという人は、局長級<部長級<課長級<係長級<担当
- ストレスフリーで生活したいという人は、係長級<担当<課長級<部長級<局長級
となります。
この関係性だけをみると出世したほうがコスパが良いように思えます。出世すればするほど苦情対応をしなくてもいいですし、問題解決に向けて作業をすることはなく報告を受けてどうするかを決めるだけで良く、それでいて年収が高いわけですから。
しかし、出世しようと思うとそれ相応の成果を求められます。ときにはプライベートを犠牲にすることもあります。休みの日に行事に参加したり勉強したりと仕事の成果以外の働きも必要です。また、部長や局長を目指す人は絶対に係長や課長を経験しないといけません。とすれば、ストレスや責任を負う人生を覚悟する必要があります。そこで頑張っても出世できないことも覚悟が必要です。管理職のポストは限られていますからね。
一方、担当のままでいる人生は、責任を負うという意味ではストレスフリーです。失敗しても誰かが助けてくれるというセーフティネットが用意されている働き方を選ぶ人は少なくありません。
ストレスを押さえたい人は担当のままをオススメします。担当は若手時代はあれこれ勉強だと仕事を押し付けられて給料も低く大変ですが、ベテランになると重たい仕事は持たされません。経験上、50歳を超えたあたりで最前線の仕事をしている担当はいません。勤続年数が増えるとともにストレスが減るのは担当の特権です。
自分より年下の上司に指示されるのが嫌だという人もたまにいますが、それは出世を目指しても一緒のことで、係長になっても歳下の課長から指示されることもありますから、気にするだけ無駄です。そのストレスは役職で違いはありません。
当然、上司がパワハラ野郎だと、いくらストレスが少ない担当といえど最悪の職場環境となりますから、そういったイレギュラーへの備えも必要です。
公務員は一度決めた働き方を変えることは非常に難しいためどちらの道を選択するかは悩ましいところですが、参考になれば幸いです。