現役の公務員が私生活で気をつけていること(プライベートの制限はあるの?)

公務員は、公務員になった日から公務員としての生き方を求められることになります。勤務先からはプライベートも含めて公務員として節度ある行動を心掛けるように指導されます。事実、職員の個人的なプライベートの問題でも懲戒処分されます。
しかし、公務員である前に人なわけですから、プライベートに制限がかかることにおかしいと思う人もいるのではないでしょうか。実際に働いて感じる公務員のプライベートの窮屈さについて解説します。
人であるまえに公務員か、公務員であるまえに人か
国家・地方公務員になった人が悩まされる2択、
- 人であるまえに公務員か
- 公務員であるまえに人か
公務員ではない人が一般的な価値観に基づいて判断すれば、おそらく「公務員であるまえに人」ではないでしょうか。公務員はいち職業であって個人の自由は制限されないと思うことは普通の感覚です。しかし、
- 国家・地方公務員法によりプライベートに制限がある
- 他人は”あなた”ではなく”公務員であるあなた”として見ている
この2点の理由から、私は「人であるまえに公務員」が正しいと感じています。
国家・地方公務員法で身分上の義務が規定されている
地方公務員法を基に解説します(国家公務員法に同様の規定があります)。
主な条文として、
- 地方公務員法33条(信用失墜行為の禁止)
- 地方公務員法34条(秘密を守る義務)
- 地方公務員法36条(政治的行為の制限)
- 地方公務員法37条(争議行為等の禁止)
- 地方公務員法38条(営利企業等の従事制限)
があり、すべて身分上の義務が発生していることを意味します。
身分上の義務とは、「その身分に伴い、職務の内外を問わず遵守すべき義務」のことです。「職務の内外」とは、内が勤務時間中、外がプライベートということであり、「問わず」とありますから、勤務中もプライベートも守らなければならないということになります。SNSで何気なく発信した内容でも、国家・地方公務員法違反になる可能性があるため注意が必要です。
公務員は公共の福祉のための全体の奉仕者という身分です。信頼で成り立つ仕事といっても過言ではありません。その信頼を裏切るような行動、公務員としてふさわしくない行為があれば、それは個人ではなく行政全体に影響するという根本的な考え方です。
公務員は定年退職した後も守秘義務がある
地方公務員法34条に規定する「秘密を守る義務」は、職務上知り得た情報はたとえ家族であっても決して口外してはなりません。他人に話してしまった場合は守秘義務違反として懲戒処分されることになります。
公務員を定年退職した後でも守秘義務は発生しますので、「実は、、、」といったことをうっかりにでも話した場合、法律違反(犯罪行為)になるので注意と覚悟が必要です。
他人は”あなた”ではなく”公務員であるあなた”としか見ない
地方公務員法33条に規定する「信用失墜行為の禁止」は公務中に限りません。プライベートの問題でも、懲戒処分の対象となります。
プライベートは個人の自由です。しかし、公務員が問題をおこせば、それはあなた一人の問題ではなくなり、公務員全体の信頼を揺るがす事態となります。
報道されるレベルですと、「〇〇市〇〇課に勤める△△△△が~」という情報が公表されます。世間も、あなた個人の問題だから仕方がないなんてことは絶対に言いません。次の日から、役所にはクレーム、クレーム、クレームです。
- 組織として責任をとれ!
- 税金を返せ!これだから公務員は!
- クビにしろ!懲戒処分を公表しろ!
など、あげればきりがありません。問題をおこした職員が、どのような状況で、どのような環境下に置かれていて、といった背景は加味してはくれません。世間は、あなた個人には興味がありません。あなたではなく”公務員がやったこと”という事実にしか興味がないからです。
それは、人であるまえに公務員として見られているという証拠でもあります。日本国憲法に表現の自由は規定されていますが、公務員においては民意がすべてです。
公務員であることを周りに言いたくない3つの理由
私は現役の地方公務員であることを周りに公言していません。当然、勤務地も言っていません。決して謙遜しているわけではなく、自慢のようにとられてしまうことを懸念してのことではありません。理由は単純、公務員という職業を公表することは「生きづらい」からです。家族、親戚、親しい友人には伝えていますが、世間に対しては普通の会社員という体で生活しています。
公務員であることを公言することのメリットは全くありません。むしろデメリットしかありません。
デメリット①公務員であることを良くないと思う人が一定数いる
アンチ公務員はどこにでもいます。家族にも友人にも。>>>「アンチ公務員は身近な友達や家族にも存在する。」
- 公務員はノルマがなくてクビにもならない
- 公務員は簡単に休める
- 公務員は税金で生活しているくせに
といった嫌味は日常茶飯事です。とにかく偏見が多い。仕事に関係で事業に協力をお願いしにいっても役所の職員というだけで話も聞いてくれないばかりか罵倒されることも多々あります。このような考えをもっている人が自分の周りに住んでいると思うと、こちらとしてもできる限り関わりたくないのが本音です。
とくに勤務先と住んでいる自治体が同じ場合は最悪です(そのため勤務する自治体と住居がある自治体は別にすることをオススメしています)。もちろん、そうでない人も大勢いることは理解しています。しかし、あえてその地雷を踏みに行く必要はないと思っています。
デメリット②勤務先を特定される
個人情報を知りたい赤の他人は本当に多いです。職業は公務員をしています、で会話が終わればいいですが、どこにお勤めなんですか?といった職場を特定する質問をされることもあります。
勤務先を特定されれば、私生活を含めて一挙手一投足、監視の目にさらされることになります。やましいことなんて一切ありませんが、近年は何かにつけて通報されSNSで晒される風潮があります。警察官や救急隊員がコンビニや自販機で飲み物を買っていただけで通報される嫌な世の中です。リスクは避けたいというのが本音です。
デメリット③自治体や学校のPTAなど頼まれ事を断りづらい
地域の行事やPTA活動など、公務員だと非常に断りづらいです。民間サラリーマンは頼んでも引き受けてくれない人カテゴリーに入ることが可能ですが、公務員となった瞬間に周りの目は変わります。公務員は暇、プライベートも公務に使うべき、だって私たちの税金で生活しているんだから!というカテゴリーに入ることになります。
公務員である以上は無視できませんし強い言葉で突っぱねることもできません。地元の消防団活動が典型例です。断れば仕事に影響を与える可能性も多いにあり、村八分になる地域もあります。
公務員の自治会・町内会の加入は義務ではありませんが、地方自治体は自治会を応援する立場です。公務員が身バレしている場合は入っておくべきです。
公務員であることを周りに公言してはいけないケース
自衛官、警察官、国税専門官など、公務員のなかでも仕事内容が特殊なケースは公言していないことが多いです。
自衛官で潜水艦部隊に所属、国税専門官の税務調査担当、警察官(公安)の潜入捜査の部署、など顔バレ自体がNGである職業もあります。このように公表したくてもできない職種が公務員にはあります。
公務員は飲み会のときに自治体の名前は絶対に出しません。民間企業のサラリーマンという体で話しをしています。どこで誰が聞いているか分かりませんから、情報がもれようものなら大問題、懲戒処分の対象ですから。
気にする人もいるし、気にしない人もいる
公務員の言動は、まわりまわって自分に返ってくる可能性が高いです。プライベートであっても誰かとトラブルになれば、他人は経緯など関係なく「公務員がもめる=公務員が悪い」と判断することが多いです。翌日には、自治体に議員の先生を連れて抗議になんてことも起こり得ます。住民トラブルが嫌で、勤務する自治体と自分が住む自治体をあえて分けている人も多いです。
相手が明らかに悪くて自分が正しいと主張できる場合であっても、それをしてはいけないのが公務員です。公務員である以上、この葛藤と職務中だけでなくプライベートも付き合っていかなければなりません。
友人の公務員からプライベートで聞いた愚痴を別の友人に話をしたら、別の友人が役所に通報してきた事例もあります。それほど公務員は監視対象になっています。
公務員は勤務中だけでなくプライベートにも一定の制限がかかります。それを気にしすぎていては精神的にもちません。しかし、気にしないと公務員としては生きていけません。そのバランスが難しく、休職してしまう公務員が多いわけです。
これから公務員になろうと思っている人は特に注意が必要です。今よりも確実に厳しい環境下に置かれるということは覚悟しておいてください。もちろん、気にする人もいれば気にしない人もいます。同じ公務員でも、役職が上になればなるほどトラブルは避けますし、管理職で住民と喧嘩している人は見たことがありません。
一方、公務員であることを堂々と公言している人もいます。その人たちからすれば公務員であることを後ろめたいと思うことや誇りに思わないこと自体が間違っているかもしれませんが、現実はそう単純ではありません。それほど公務員であることに風当たりは強いと感じます。
時代の変化で地域との関係が軽薄になっているものの、まだまだ公務員というだけで一定の妬みや嫉みを買います。私にはその覚悟がありません。職業を言わないことで逆に詮索される可能性もありますが、詳しく説明するのも面倒です。どう説明しようが、結局は「公務員」という一括りされるだけですから。