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会計年度任用職員制度の問題点とは?わかりやすくメリットやデメリットを解説します

2020年4月1日より、「会計年度任用職員制度」が開始されました。

正直、現役地方公務員の私ですら、頭の中は”???”です。

これまでのアルバイトさんと何が違うの?非正規職員との違いは?と・・・

法務省が公表している資料を見ても、情報量が多すぎてよく分かりませんよね?

なので、会計年度任用職員制度の問題点とやメリット・デメリットについて、

必要な要点だけをまとめて分かりやすく解説します。

本記事は、総務省が公表している「会計年度職員任用制度について」の資料を基に解説したものになります。

地方公務員の会計年度任用職員制度の概要

まず、会計年度職員とはどういった身分でどの立場の人なのでしょうか。

会計年度職員とは、これまでの特別職非常勤職員と臨時的任用職員が合わさったものです

これまでの現行制度から見ていきます。

(既に上記の表でめまいがしそうですね・・・)

これまで、公務員にはいわゆる「正規職員」と「非正規職員」の枠組みがありました。

正規職員は、

  • 任期の定めのない常勤職員・・・いわゆる世間がイメージする一般的な公務員のこと
  • 再任用職員・・・定年退職後に年金が支給されるまでのあいだの公務員のこと(役職や給与は現役よりも下がります)
  • 任期付職員・・・育児休業などで代替職員が必要となったときに期限付きで採用される公務員にこと

の3種類にわかれています。

さらに、非正規公務員には、

  • 特別職非常勤職員・・・研究員、館長など
  • 一般職非常勤職員・・・保育士、給食調理員、放課後児童支援員など特別職以外の非常勤
  • 臨時的任用職員・・・教員、講師、保育士など正規職員に欠員が生じた場合に採用される

の3種類にわかれています。

もともと公務員にはアルバイトという枠はなく、正式には上記の3つのカテゴリーのどれかに分類されます

一般的に「非常勤職員」というと「一般職非常勤職員」を指し、

なかでも一般事務職員は「アルバイトさん」という呼び方をされます。

 

会計年度職員制度になったらどうかわるのかというと、

会計年度任用職員=特別職非常勤職員+臨時的任用職員」となります。

会計年度任用職員は、

  • フルタイム会計年度任用職員
  • パートタイム会計年度任用職員

にわかれますが、

  • フルタイムが勤務時間「38時間45分」
  • パートタイムが勤務時間「38時間45分未満」

かで分かれているだけです。

とはいえ、名前や枠組みを変えたわけではありません

会計年度任用職員制度が導入される理由

大きくわけると2つの理由があります。

それは、任用制度の運用方法と待遇の差が問題となったからです。

特別職の任用及び臨時的任用の厳格化

これまでの任用制度自体があいまいで、自治体ごとに運用が異なっていたことが問題となりました。

  • 本来は専門性が高い人を雇う制度の特別職が、通常の事務職員にも特別職で採用されるケースがあり、この場合は地方公務員法が非適用のため、守秘義務、政治的行為の制限などの公共の利益保持に必要な諸制約が課されていない
  • 採用方法等が明確に定められていないため、一般職非常勤職員としての任用が進まない

実際に、自治体によっては採用試験があるところとないところがあり、

そもそも採用を行っていない自治体もあり、現状は自治体によってバラバラなわけです。

本来、臨時的任用は緊急の場合等に、選考等の能力実証を行わずに職員を任用する例外的な制度です。

趣旨に沿わない運用が見られることから、その対象を、国と同様に「常勤職員に欠員を生じた場合」に厳格化しました。

採用の厳格化については役所側の問題であって、採用される側にはあまり関係ありません。

待遇の改善

私たちが関係するものは、給料や休暇制度の待遇の差です。

これまでの制度では、正規職員と非正規職員との待遇の差が大きく、

非正規職員だと

  • 給料は何年働いても昇給しない
  • 階級や役職も昇格しない
  • ボーナスは支給されない
  • 夏季休暇など特別休暇はない
  • 通勤手当などの各種手当の支給はない

など、大きな問題がありました。

とくにボーナスは、国家公務員の非常勤職員は支給可能でも、地方公務員の非常勤職員には支給できません。

会計年度任用職員制度のメリット

では、会計年度職員になると、これまでとどう違うのでしょう。

まず、メリットを解説します。

給与が上がる(昇給する)

正規公務員と同様に、昇給します。

つまり、給料がアップします。

自治体によって昇給額は異なりますが、相場は月に6,000円~8,000円ほど。

この額は正規職員のものなので、そのまま適用するかはわかりませんが、

少なくとも職務経験の年数を考慮することと決まっています。

仮に職務経験が2年あれば、3年目の給料は過去の2年分の加算があるということです。

ただ、役職は昇格しません。

昇格とは係長や課長といった階級が上がることです。

ボーナスなど各種手当が支給される

これまでは支給されなかった期末手当(いわゆるボーナス)や時間外手当、通勤手当が支給されるようになります。

退職手当については、フルタイム職員が勤務時間以上勤務した日が18日以上ある月が、引き続いて6月を超えるに至った場合のみ支給されます。

特別休暇が取得できる

無給ではありますが、

  • 産前産後休暇
  • 看護休暇
  • 介護休暇

などの特別休暇を正規公務員と同様にとることができます

※結婚休暇は有給休暇扱いとなりました。

パートタイムは副業ができる

公務員は原則、副業を禁止されています。

法的に禁止されているため、無許可の場合は処分を受けることになります。

>>>「公務員の副業禁止理由は法律で規定!罰則や処分はある?

ただし、これらは正規公務員と会計年度任用職員(フルタイム)に適用される基準です。

つまり、同じ会計年度任用職員でも、パートタイムであれば副業が可能です。

許可も不要ですから、副業をしたい人にはおすすめです。

任用の空白期間の廃止

これまで、任用期間の満了後に引き続き任用することができませんでした

つまり、A課に1年間働いた場合、2年目も同じA課で働くことは許されませんでした。

そのため、民間企業で働くか、同じ役所のB課やC課で一度働く必要があったのです。

この空白期間は、会計年度任用職員に移行したことでなくなりましたので、2年目も同じA課で働くことが可能になりました。

会計年度任用職員制度のデメリット

次は、デメリットの解説です。

採用方法が厳格化

常勤職員は競争試験によることが原則とされており、人事委員会を置いていない市町村は選考でもよいと規定されています。

会計年度任用職員の募集・任用にあたっては、できる限り広く募集を行うなど、適切な募集を行った上で、

競争試験又は選考により、客観的な能力実証を行う必要がでました。

要は、コネ採用の廃止です。

実際のところ、役所には非常勤職員のコネ採用も存在していますから、

少しでも平等な採用になることは個人的にはいいことだと思います。

任用期間は1年

会計年度とは1年度を指しますから、任用期間は1年間になります。

あくまで、再度の任用がなされた場合でも、

「同じ職の任期が延長された」、「同一の職に再度任用された」という意味ではなく、あくまで「新たな職に改めて任用されたもの」として扱われます

つまり、その都度(1年単位)、面接等で能力評価を実施したうえで採用となりますから、

2年目に採用されるかどうかは不透明です。

仮に2年目も任用されたからといって、再度任用の保障のような既得権が発生するものではないため、

3年目に採用されるかどうかは不透明になりました。

地方公務員法の適用を受ける

会計年度任用職員には地方公務員法の服務に関する規定が適用され、懲戒処分等の対象となります。

そのため、副業は禁止となります。

ただし、パートタイムの会計年度任用職員は、営利企業への従事等の制限が対象外なので、

副業をしたいと思っている人はパートタイムがおすすめ。

しかし、退職手当(要は退職金)が支給されなくなってしまいますので注意が必要です。

なお、職務専念義務や信用失墜行為の禁止等の服務規程はパートタイムにも適用されます。

会計年度職員任用制度の最大の問題点

会計年度職員任用制度の最大の問題点は、

ボーナスを支給するかわりに給与を下げることで、年収は増えない仕組みになっていることです。

今、地方公共団体はどこも財政難です。

会計年度任用職員にボーナスや手当を支給する余裕はありません。

制度上、全国のすべての自治体が「非正規公務員」にボーナスを支給しなければいけませんが、

これに伴う人件費は約1,700億円(総務省は地方交付税として自治体に配分する方針)にものぼります。

では、実際に地方自治体はどうしたのか。

それは、ボーナスを支給するために基本給を下げたわけです。

要は、ボーナスと基本給の割合を変えただけで、年収は変わっていないということです。

本来の目的である非正規公務員の処遇改善が、自治体ごとの財政事情によって全く機能していない現状があります。

もちろん、総務省は財政悪化を理由にした給料の抑制や

フルタイムで働いていたのに合理的な理由もなく勤務時間を短くすることなどはやめるよう、

全国の自治体に通知していますが、強制力はありません。

非正規職員の雇用割合

総務省によると、非正規の地方公務員は2020年時点で約69.4万人です。

  • H17 45.6万人
  • H20 49.8万人
  • H24 59.9万人
  • H28 64.3万人
  • R2 69.4万人

非正規職員の雇用は増え続けています。

この15年間で非正規職員数は1.5倍に増加しています。

一方、正規職員は1割減り約276万人となっていますので、傾向は変わらずです。

69.4万人うち女性が74.5%、男性が25.5%です。

2020年4月時点では、警察、消防、教育などを除いた一般行政職での非正規職員は4割を超えていますから、非正規職員なくして地方公務員は成り立たない状況になっているのが現状です。

非正規職員の多くは年収250万円以下

非正規職員の多くは年収250万円以下です。

ボーナスがない新規採用職員程度と考えてもらえれば理解しやすいかと思います。

先ほど説明したとおり、会計年度職員はボーナスを支給されますが、その分、月給を下げている自治体は多いです。

そのため、月20万円×12か月=年収240万円が平均となります。

一方、正規職員が定年退職を迎え再雇用された場合、年収は500万円前後となります。

同じ会計年度職員でも、正規職員であれば非正規職員の2倍貰えます。

だからといって仕事が1/2かと言われると別で、同じかそれ以上です。

まとめ

正規職員の採用が財政や世論から制限がかかり、とはいえ業量は減らない。

正規がやっていたことを非正規がやらないとまわらないような役所構造になっていっています。

非正規は仕事内容も勤務時間も正規と変わらないにもかかわらず、待遇が悪い。

これは民間においても往々にして問題となっている、よもや日本の雇用制度の問題ともいえます。

これらの背景から、

非正規公務員の待遇をできる限り正規公務員に近づけることを目的として、

新しく会計年度任用職員制度が始まったわけです。

会計年度任用職員という立場はどうであれ、

私の勤める自治体では、ボーナス支給するために基本給を下げました。

そして、人件費削減のため、会計年度任用職員の雇用枠を削減。

総務省が制度を改正したことで、結局、雇用がなくなったわけです。

これまで、役割を持たず勤務していたアルバイトさんは解雇され、その枠はなくりました。

逆に言えば、これまで不要だったのかもしれませんね。

正直、私がこれまで勤務してきた部署にいたアルバイトさんは、雑務しかしていません。

電話も取りませんし、住民応対もしません。

(正直、ずっと続くならアルバイトさんに転職しようと思ったぐらいです)

ストレスフリーで公務員法の適用外ですから、副業しても何してもOKですからね。

コンビニのアルバイトよりもはるかに簡単でらくな業務で、給料は倍貰えるわけですから、

誰も辞めたがらないし、続けたいわけです。

何もしないことに慣れているから、もうしんどい仕事なんてしてくれません。

私なんて、印刷して製本してもらう作業をお願いしただけで怒られましたからね。

なんたって、管理職が一番注意しているのがアルバイトさんの扱いです。

もちろん、役所の窓口に採用されている非正規の方が大変なことは重々承知しています。

正規職員と同じ、それ以上の仕事をしている人もいるでしょう。

正規職員と同じ、それ以上の責任を感じている人もいるでしょう。

正規公務員にもクズはいます。

何もしないし、問題しか起こさない職員もいます。

個人的には、会計年度任用職員制度によって、公務員としての働き方がより制限され、

もっと働きづらい世の中になっていくのだろうと危惧しています。

結果として、私の勤務する自治体では、

採用枠は減り、やらなければならない仕事が明確化されたことで、求められる能力のハードルは確実に上がっています。

とはいえ、これもすべて世論が欲した結果なわけですから、

この変化を受け止めるほかありません。

私は非正規雇用をオススメできません。

全員が全員、正規雇用されることは難しいでしょう。それでも正規雇用を目指してほしいです。

市民からすれば、正規も非正規も関係ありません。苦情を言うのは役所の人間であれば誰だっていいんです。

非正規職員は市民から見れば公務員、役所から見ればアルバイト。

責任や仕事だけ重くなり、給料は上がらないばかりか、1年毎に契約更新が必要で雇用も安定しない。

正直、メリットがあまりありません。

ただし、住民対応がない役所の中枢の非正規雇用はおすすめです。ストレスが段違いですから。

4 COMMENTS

まめ

こんにちは
学校でサポートの仕事を6年しています。
今までは…雇用保険の加入があり、扶養範囲内で働くことができました。
この4月から、時給も上がり期末手当もでますが、社会保険、雇用保険には加入できません。
扶養からは中途半端に外れる金額のため、実質、増えた分は全て社会保険、国民年金の支払いで終わってしまいます。
配偶者控除もなくなるため、
なんとも、心がモヤモヤとした気持ちになります。

返信する
野次馬

「昇給する」とありましたが、毎年度の新たな採用となる趣旨の説明もあり、昇給は在職年数が反映されるものでしょうから昇給は期待できないのではないのでしょうか。

返信する
そろそろこの世からサヨナラかな?

ボーナスに関して。
ボーナスを支給する原資を得るために月給を下げるのですが、
東京メトロ裁判を受けて、非正規にはボーナスは出さなくても良いと。
即ち、ボーナス支給の為に月給を下げられたのに、
その出るはずのボーナスをCUTされる事案が急増しそう。
出るはずのボーナスの分だけ、年収を下げられる。

あと、失業手当を外される。
職種にもよるけど、半年超えて会計年度職員を務めると、
退職手当が出るようになるけど、何年たっても10万程度らしい。
逆に、公務員として10万ほどの退職手当が出るようになると、
失業手当を外される。年度末になる度に更新がないかもと震えるのに。
失業手当が出ると契約打ち切りでも最大で60万程度得る事も可能だが、
わずか10万ほどの退職手当で終了。
類似業務内容の民間企業とは比較にならないほど過酷なのに、
低賃金で他の事業所への転職を挑もうにも、
転職活動中の生活の基本金が得られないので、転職活動も不可能。
そもそも会計年度職員の収入では、最低賃金を大幅に下回る職種もある。

身分保障も無いから、ローンを組むのも大変に苦労する。
(高い金利のローンしか組めない)

夏や冬のボーナスシーズンに、N〇Kなどで、
正規公務員のボーナス金額を報道されるが、
会計年度職員はその1/3~1/5程度でも出たら御の字なんだが。
でも一般市民からは「この不景気なのに、公務員がこんな金額の(略)」
・・・と、八つ当たり的な嫌がらせを受け捲くる。
でも、八つ当たりに我慢しつづけねばならない。

基本、国が定めた労働基準法を下回る労働条件。
(労働者に不利になる事案)
これは一切無効だとしたものだが、
雇い主の自治体は、会計年度職員に人権を認めていないので、
法律は一切無効とされる(条例が優先される)。
堂々と、会計年度職員の契約書に(違法状態なのに)書かれている。

新年度の同労条件確認書に書かれている内容は、
労働者に何の相談もなく、勝手に改悪する。
無断で変更した後、労働者側が手が打てない状況になってから、
「このように変更する事になったので変えておきました」て言う始末。
官製ワーキングプアどころか、奴隷以下の扱い。

もしも身の回りで会計年度職員へ応募を考えてる人がいたら、
絶対に止めてあげたほうが良い。

返信する
N

そんなもん自治体によるやろ。
うちの役所の会計年度職員は、年に4,000円昇給するし、ボーナスも年2月分出るし、もちろん以前と比べて給料カットもない。政令市とか中核市でもない人口5万人以下の小規模都市だ。
市区町村によって待遇は違うのに、ぜんぶがそうみたいに印象付けるなや。感じ悪い。

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