【定期更新】株の運用実績 2021~

日本は公務員天国?役人の不祥事への処分が甘いのは本当?

公務員は甘い!

民間企業ならクビなのに公務員はクビにならないから役人天国とも揶揄されています。

黒川弘務前東京高等検察庁検事長が賭けマージャンをし辞任した出来事は記憶に新しいのではないでしょうか。この件、実は「訓告」処分、要はタダの文書注意レベルになったことが世間でも批判を浴びました。

この件だけでなく、普段から公務員の処分は甘いと世間から批判の声があがりますが、実態はどうなのでしょうか。

現役の地方公務員が現状を解説します。

公務員は懲戒免職でも退職金が支給される場合がある

2018年9月、小諸市の50代男性職員が酒気帯び運転で事故を起こして逮捕されます。実家で飲酒後、約150メートル離れた自宅に車で向かう途中に自転車と接触。道交法違反(酒気帯び運転)罪で略式起訴され、罰金30万円の略式命令を受けました。

市は男性職員を懲戒免職し、退職手当てを全額支給しない処分を行いました。

男性職員は市の処分を不服、退職手当約1,600万円を支給しなかった市の処分は「裁量権の乱用で違法」として、市を提訴します。

  • 1審 長野地方裁判所は「事件が非常に悪質とまでは言えず、退職手当の全部を支給しないのは妥当性を欠く」などとし市が敗訴
  • 2審 東京高等裁判所は「平等性を欠く」などとして市が敗訴
  • 最高裁は「市の主張は上告理由には該当しない」として棄却 → 2022年3月市の敗訴が確定

結果、元職員は懲戒免職処分されクビにはなりましたが、退職金は支給されることになります。(当然ですが刑事罰は受けます)

東京高等裁判所の平田豊裁判長は、飲酒運転について「動機や経緯に酌量の余地はない」とする一方、人的被害はなく、事故は軽微であることを考慮すべきだと指摘。退職手当は長期間の勤続報償や、賃金の後払い、生活保障といった性格があり「約33年8カ月の男性の勤続に対する報償などを全て奪ってもやむを得ないとする処分は重すぎる」と判断した。

国家公務員の懲戒規定では、酒気帯び運転は免職または停職または減給と規定されています。裁判での争点は退職金の支払いの要否ですから、裁判で確定した以上、市は退職金を支払う義務が生じます。

小諸市の退職手当条例では、懲戒免職の場合、退職手当等の全部又は一部を支給しないこととする処分を行うことができると規定されていますので、退職金の支払いが100%かどうかまでは不明ですが、市が行為の内容や程度などを総合的に考慮し、支給の可否や減額を決めることになります。

退職手当は、事実上「給料の後払い」的な性質があります。褒賞的な性質について今回のケースでは裁量の余地によって前例に倣って判断されるものと思います。

公務員の不祥事による処分は感情論が優先される傾向にある

今回のケースでは、飲酒運転して懲戒免職になったのに退職金の一部を払えとか訴えるとか図太い、公務員が公務員を裁いてるからこういう判決になる、民間企業とかけ離れすぎ、公務員天国といった批判的意見も散見されます。

確かに、これだから公務員は、、、民間企業では、、、という意見は理解できますが、感情論で法律を逸脱することを正当化する人が多いことは残念です。

今回のケースは(市の信用失墜という側面はあると思いますが)横領など市に直接損害を与えたわけではありません。むしろ、懲戒免職は不当として訴えればクビにならずに済んだ可能性も高いです。懲戒免職とは規定されていないわけですから酒帯運転でクビになっていない事例は多くあります。

公務員の懲戒処分基準をもっと厳しくて、すべて懲戒免職にすればいい!という意見もあるかもしれませんが、それはあまりにも横暴な意見です。

事実、民間企業で懲戒解雇となったとしても、規定の退職金の3割程度は支払わなければならないとされるのが一般的です。また、民間企業に勤めていた経験からすれば、民間は業種にもよりますが、業務外の私的行為中の事なら解雇されることが珍しいです(もちろん、自動車業界などは一発アウトでしょう)。

その点、公務員は業種に限らず全員が適用されますから民間より厳しいとも言えます。公務員天国と言われますが、民間企業の方が罰則が緩いことは往々にしてあります。

決して飲酒運転を擁護するわけではりません。飲酒運転は撲滅すべきです。個人的には飲酒運転をした人は全員クビ、退職金もなしでいいと思っています。しかし、それはそれ、これはこれです。

公務員天国と言われる理由の多くは、公務員だからという感情論が優先されてしまうからだと思います。

公務員の信用失墜行為は不注意や軽い過失でも停職や減給など懲戒処分の対象となることはもっと知ってほしい事実です。公務員は他人のミスで給料カットされる時代です。「【公務員終了のお知らせ】個人のミスは連帯責任!給与カットの時代へ

公務員の懲戒処分基準は公表されている

国家公務員の場合は人事院が懲戒処分の基準を公表しています。「服務・懲戒制度(人事院)

例えば、横領や強盗など一発アウトで懲戒免職処分になるものもあれば、10日以内の無断欠勤の場合は減給または戒告処分となるものがあり、個別自由で判断されることになります。

地方公務員の場合は各自治体によって公表されており、国家公務員に準じている自治体が多いものの基準は各自治体で異なります。

例えば、盗撮犯罪について、国家公務員の規定では停職または減給とされていますが、自治体によっては免職または停職と規定しているところもあり、国家公務員よりも厳しく規定している自治体も多くあります。

懲戒処分にレベル差がある理由

飲酒運転(酒酔い運転)の場合、免職または停職とされています。

免職はクビ、停職はクビにならないことをふまえるとその後の人生において大きな違いです。人によってクビなるならないが判断される理由は、その人がそれまでに積み上げてきた評価によるものです。

公務員になって30年間勤務態度に問題がなかった人のミスと、公務員になってから勤務態度が悪く評価が低い人のミスとでは処分に差がある、要は、情状酌量の余地があるということです。

公務員の懲戒処分基準はどんどん厳しくなっている

ひと昔前までタバコはどこでも吸えました。飲酒運転もアルコール量によっては罰則がありませんでした。

酒酔い運転は、違反点数35点、5年以下の懲役または100万円以下の罰金と厳罰化されたのは2009年のことですから、飲酒運転が厳しくなったのは最近になってからということが分かっていただけると思います。

このような世間の流れを反映するように、公務員に対する懲戒処分の基準は年々厳しくなっています。特に、公務員バッシングが年々強くなってきていますから、世相を反映するように基準を厳しくしている自治体が増えています。

先の例のように、飲酒運転、ハラスメント、盗撮などの犯罪については特に厳しくなっています。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)