徹底解説【公務員の昇給の仕組み】昇給額は毎年一律〇〇円?

公務員は年功序列で定年退職までずっと給料が上がり続ける、公務員はみんな毎年同じ額昇給する、と思っている人は少なくありません。しかし、現実はそう単純ではなく、定年近くなると昇給額は月1,000円も上がりませんし、55歳を超えると昇給は停止されます。
現代の公務員は、同期でも人事評価によって昇給額が異なり、その差は早く出世する以外には一生埋まることはないシビアな世界です。
公務員はいつ昇給するのか、年〇〇円昇給するのか、など現役の地方公務員が公務員の給与を決める「昇給の仕組み」について徹底解説します。
公務員の昇給はいつ?
公務員の昇給は「定期昇給」と「昇格による昇給」の2つがあります。
定期昇給
定期昇給は、年(度)に1回おこなわれます。多くの自治体が採用している主な時期は、
- 国家公務員の昇給 「1月」
- 地方公務員の昇給 「1月」または「4月」
地方自治体によって「年」と「年度」のどちらかを基準しているため時期が異なる場合があります。ボーナスの支給タイミングに合わせて7月の自治体もあるようです。
昇格による昇給
役職が上がると年(度)途中でも昇給します。いわゆる出世です。
例えば、
- 新規採用されて半年後に本採用となって級数が上がった場合
- 担当者から係長級、係長級から課長級などへ昇格(級数が上がった)した場合
などが考えられます。
一般的には定期人事異動に合わせて役職は上がりますが、年(度)途中に職員が退職したなどの理由で昇格人事が行われることがあります。
昇給区分「級」と「号棒」
公務員の月給は「俸給表(給料表)」によって決まっています。
棒給表とは、「級」と「号棒」によって構成されており、自治体のホームページに公表されています。一般行政職、医療職、公安職など、職種によって給料表自体が違う点には注意が必要です。
例えば、「令和3年4月1日時点の国家公務員の初任給」は、基本給+地域手当20%を加味しますと、
- 国家公務員総合職(大卒)の初任給 「2級1号俸」 23万2,840円
- 国家公務員一般職(大卒)の初任給 「1級25号俸」 22万5,840円
- 国家公務員一般職(高卒)の初任給 「1級5号俸」 18万7,920円
と決まっています。
このように、公務員の基本給は、昇給区分「級」と「号棒」で決められています。
公務員の職務の「級」
「級」とは「役職」のことです。
国家公務員の初任給の例では、総合職は2級、一般職は1級でした。国家公務員の場合は採用時点で総合職のほうが一般職より役職が高いため、初任給も総合職のほうが高くなっています。
「地方公務員の職務の級の構成(総務省)」から抜粋すると、
都道府県(本庁)の場合、
- 1級 係員
- 2級 係員(高度)
- 3級 係長
- 4級 課長補佐
- 5級 総括課長補佐
- 6級 課長
- 7級・・・
となっています。
1級から2級までは誰でも昇格でき3級からは人事評価順になることが一般的ですが、東京都庁のように各級へ昇格するためには人事評価のほかに昇格試験を突破しなくてはいけない地方自治体もあります。
あくまでこれは一般的な役職級であり、地方自治体によって異なります。例えば、課長補佐は、都道府県(本庁)だと「4級」、国家公務員(本省)だと「5級」になります。
つまり、「級」とは国や地方自治体ごとに決めている「役職」であり、級数が大きいほど役職が高いということになります。
「号棒」
人事評価で年に1回昇給する数(昇給額)です。
評価 | 号棒(昇給額) | 割合 |
極めて良好 | 8号俸 | 5% 部署に1人~2人程、昇進するためには必須 |
特に良好 | 6号俸 | 10% 部署に2人~3人程度、昇進するためには必須 |
良好 | 4号俸 | 80% ほとんどの職員が4号昇給 |
良好でない | 2号俸 | 5% 懲戒処分を受けたり休職したりして所定の勤務実績がない |
不良 | 0号俸 | 数% 重い懲戒処分を受けたり長期間休職したりして所定の勤務実績がない |
人事評価は絶対評価で行われますが、給料にかかわる昇給は相対評価です。全員が8号棒昇給できるわけではありません。評価していい人数が決まっています。要は、公務員として真面目に働いている分には4号昇給します。その中でも優秀な人だけが6号、とびぬけて優秀な人が8号昇給します。
国家公務員(一般職)の例でみますと、
- 大卒「1級25号俸」
- 高卒「1級5号俸」
高卒と大卒との差は20号棒となっており、標準的な評価を受けて4号棒の昇給とすれば高卒は5年で大卒に追いつくことになります。学歴の差が1年でペイできる点は公務員の魅力です。
なお、地方自治体の中では人事評価を基本給の昇給に加味していない自治体もあります。国家公務員は全員が人事評価の対象ですが、地方公務員の場合は、
- 人事評価を基本給(ボーナスを含む)に反映させていない
- 人事評価を基本給(ボーナスを含む)に反映させている
- 人事評価を基本給には反映させないがボーナスには反映させてる
と3パターンあるため注意が必要です。
基本給の昇給額
級と号棒によって、一体いくら昇給するのか。
昇給額については、どの級においても概ね「1号棒 1,600円~2,000円」です。人事評価が平均であれば4号棒昇給するため、年間約7,000円~8,000円昇給することになります。
なぜ昇給額に幅があるかというと、自治体によって昇給額の規定が異なるからです。その役職「級」にどれだけ在籍したかによって昇給率が異なる点は注意が必要です。
例えば、「東京都職員給料表」令和3年4月1日時点(行政職給料表(一))によると、
- 3級21号 265,600円
- 3級25号 274,500円
- 3級81号 386,500円
- 3級85号 389,100円
となってます。同じ4号棒の昇給でも幅があります。
- 21号⇒25号 8,900円昇給
- 81号⇒85号 2,600円昇給
同じ役職の1年目から2年目の昇給と15年目から16年目では昇給額が異なります。公務員は同じ役職で働き続けると、昇給額がどんどん減っていきます。そのため、公務員も早く出世して昇進したほうが給料が上がりやすくなっています。
公務員の給料表は自治体のホームページで公表されていますので、公務員試験を受けようと思う自治体の本当の給料を知りたい人はぜひ調べて見てください。
公務員の昇給額は一度上がったら下がらない
公務員は基本的に一度でも給料が上がったら下がることはありません。給料が下がるケースとしては、
- 自治体が財政破綻しそうなので職員の給料をカットする
- 懲戒処分を受けて降格処分となった
- 東日本大震災など大規模災害が発生した時
などありますが、真面目に勤務している分には下がることはありません。後述する年齢による昇給停止もあくまで停止・抑制であって、減額にはならないところが公務員の最大の強みです。
6号棒の昇給は生涯年収にして300万円にもなる
6号棒や8号棒の人事評価を上げるために必死で働くより、適当に仕事をこなして4号棒の昇給でいいと考える人も多いと思います。
しかし、たった2号棒4,000円の昇給も年にすれば約7万円、定年退職まで働くとして約300万円もの生涯年収の差になります。1年目で差がひらくと定年退職まで差がひらいたままというシビアな世界です。
公務員は55歳から昇給停止?昇給抑制?
国家公務員では、55歳以上の昇給は停止されています。
勤務評価が標準以下であれば昇給しません。もし評価が良好以上であっても、昇給額は1/2~1/3程度に抑制されます。定年間近の職員に仕事を多く与えませんし評価もしませんので、実質的には、55歳以上の国家公務員は誰も昇給しません。
「一般職の職員の給与に関する法律(昭和25年法律第 95号)」の改正は国家公務員に限りますが、実態としては地方自治体も国に習いますので、地方公務員も国と同じ状況です。
事実、多くの自治体では50歳や55歳といった年齢を節目として、昇給を抑制しています。先ほどの例のとおり、同じ「級」で長く在籍すると昇給額が少なくなり、月1,000円も昇給しなくなります。昇給停止や抑制となっても、年1万円程度の差ですから生活に支障がでるレベルではありません。