ゴミ収集作業員になる方法は、①地方自治体の正規職員として採用、②民間企業に就職して自治体から委託を受ける、2パターンがあります。
本記事は①について解説します。
ゴミ収集作業員として自治体に採用されるためには、公務員試験に合格する必要があります。
学歴不問のため難しい試験でありませんが、採用試験自体を実施していない自治体がほとんどなのがネックです。
とはいっても、一度採用されれば、問題を起こさない限りはクビにはならないのが公務員。
ゴミ収集作業員になりたいという人も多いでしょう。
ゴミを集めるだけなんて楽勝!仕事も早く終わって給料が高いなんて最高!だと思っているなら、考え直してください。
現実はそんな単純ではありません。
確かに、年収でいえば行政職と大差なく、民家企業とは最大で3倍ほど違います。
お金だけでみればコストパフォーマンスは最強かもしれませんが、私はオススメできません。
本記事では、ゴミ収集作業員のなり方、給料や仕事内容について現役の地方公務員が解説します。
ゴミ収集作業員は地方公務員
ゴミ収集作業員は「単純な労務に雇用される一般職の地方公務員」という定義です。
公務員は採用区分が細分化されており、ゴミ収集作業員は現業職に該当します(役所の窓口にいるよな一般的な公務員は行政職です)。
呼び方は地方自治体によって様々で、現業職=労務職=技能職=作業職、などと表現されます。
バス運転手、学校給食員、学校用務員、清掃員、守衛、運転手、と同じカテゴリーになります。
仕事内容
ゴミ収集作業員とは、家庭や企業からでた燃えるゴミや缶・ビン・ペットボトルなどを収集する作業をする人です。
基本的に2人1組。決められたコースをまわり、ゴミを回収すれば、作業車を清掃しその日の業務は終了。
業務時間は(始業終業やお昼休み)各自治体に準じますが、ゴミ収集が早く終われば終わった分、早く仕事を終えることができます。
15時には作業を終え、お風呂に入り、終業まで待機が一般的な1日のスケジュール。
これを徹底するため、ゴミ収集車の運転や作業が荒いことは有名です。
定期的に苦情がきます。。。
休暇や給料(ボーナス)は地方自治体と同じ基準
現業職とはいえ、地方自治体の正規職員です。
地方自治体が定める制度と同じものになりますから、福利厚生や年収などの各種データは各自治体のHPに公表されています。
有給休暇日数や休職制度などの福利厚生は行政職と同じになりますが、給料は行政職と異なり現業職としての給与表によって決まります。※ボーナスの支給月数は行政職と同じ
そのため、年収は行政職>労務職となります。
しかし、現業職には課長や部長といった管理職は存在しませんので、役職のない行政職職員と比べればそれほど大きな差はありません。
行政職には認められない手当も、現業職にはありますから、手当だけでもそれなりな額になりますからね。
具体的な年収については、総務省が毎年公表している「地方公務員給与実態調査」をみれば分かります。
- 平均月収:約41万円
- 平均年齢:約50歳
以上から、年収は約650万円になります。
ポイントは平均年齢です。
多くの自治体では新規採用を凍結しています。また、給料カットできませんからベテラン職員の給与は高いまま維持されています。
民間と比べて、約1.5倍~2倍の年収になります。
ゴミ収集作業員になるには公務員試験を合格する必要がある
ゴミ収集作業員は地方公務員ですから、なるためには公務員試験を合格することが必須条件となります。
とはいっても、行政職に対し実施される公務員試験とは全く異なります。
試験自体は非常に簡単で、極端にいえば、足し算と引き算ができれば合格というレベルです。
しかし、社会的背景によって民間委託が進み、採用自体が少ないため難易度はかなり高くなっています。
採用試験自体を実施していない自治体が多い
今の自治体のトレンドは、現業職の廃止です。
現業職を正規職員として雇用するコストは、民間委託するコストの2倍~3倍になります。
民間企業へ委託したほうがはるかに安く、直営をもつ意味が薄れてきており、既にバスの運転手や学校給食員などの多くは民間へ委託されています。
そのため、現業職の採用を実施していない自治体がほとんどです。
仮に募集があっても数名程度ですから、倍率は高くなる傾向にあります。
京都市では、2012/13年度に一時的に採用し凍結していた新規採用を2022年は5人程度の採用試験を実施するようです。
9年ぶりの採用人数が5人程度ですから、高倍率になることは必至です。
運転免許が必要
普通免許は絶対に必要です。
一般的な重量のパッカー車であれば2トンなので普通免許でも運転できますが、業務内容によって普通免許以上が必要となる場合があります。
ゴミ収集車の運転には中型(8トン限定を含む)以上の免許があればすべての業務に対応できるはずです。
自治体によって求めるレベルは異なりますので、応募要件を確認してください。
学歴は基本的に不問
行政職であれば、高卒や大卒といった枠で受験する必要がありますが、ゴミ収集作業員になるために学歴は問われません。
しかし、自治体によっては、高卒以上、逆に大卒以上は不可といった一定の制限を設けることもあります。
年齢制限あり
公務員試験ですので、年齢制限があります。
一般的には35歳から40歳までが申し込める上限となっています。
ゴミ収集作業員になることをオススメできない理由
言葉を選ばずに言えば、ゴミ収集作業員には誰でもなれます。
公務員試験といえど、あってないようなものだからです。
毎日、決められたルートを周ってゴミを回収するだけで、実働時間は1日5時間程度、福利厚生や年収も行政職と変わらないのであれば目指す人がでてくるのもうなづけます。
しかし、私はオススメできません。
ゴミ収集作業は想像以上にきつい
なかには、お風呂なんて家に帰ってから入れ!税金の無駄だ!と怒る人もいるかもしれません。
しかし、ゴミ収集作業員は思っているほど楽な仕事ではありません。
完全な肉体労働なうえ、衛生面には細心の注意を払わなければいけません。
パッカー車とすれ違うだけで異臭で呼吸ができないといった経験が一度はあると思いますが、それを毎日浴び続けるわけです。
髪の毛や作業服にも匂いは付着しますから、洗い流さなければそれこそ外も歩けません。
夏場のゴミ収集なんて地獄ですよ。
3K(きつい、汚い、危険)とは主に土木業界で使われる用語ですが、昔から3Kの仕事は高給です。
なぜなら、誰もやりたくないからです。
ゴミ収集作業員という仕事は、典型的な3Kです。
体育会系の頂点
ゴミ収集作業員は民間委託されるまでは普通に採用されています。
自治体の役割は雇用を生み出すことでもありますから、昔はそれが常識であって、逆に民間委託が異端であったわけです。
そのため、40代から上の世代はかなりの人数が未だ現役です。
一方、20代、30代は採用が凍結されていれば0人ですから、仮に自治体が直営に舵を切って採用を開始したとしてもかなりいびつな年齢構成になります。
端的にいえば、かなりこき使われると思ってください。
例えば京都市の事例だと、
職員数は2006年度の999人から、2021年度は半分以下の417人になっています。
職員の割合はいびつで、
- 50~60歳 208人
- 40代 190人
- 30代 18人
- 20代 1人
となっています。これは新規採用を凍結しているためです。
民間企業への委託割合も、2006年度の26%、2021年度は63%となっており、今後も民間委託の方針は変えないつもりだそう。
京都市がそうだとは言いませんが、私が知っている世界は後輩に人権は存在しない、パワハラなんて当たり前の世界です。
40年制の中学校をイメージをすれば分かりやすいかもしれません。
私も何度か仕事を一緒にする機会があったのですが、そりゃ、民間委託されるわ・・・というのが率直な感想です。
学歴不問、試験はあってないようなもの、というのは逆にそういった人間の雇用を生み出す自治体の役割である側面を考えてみてください。
定年退職まで続けられるか不透明
郵政民営化によって公務員だった人が公務員でなくなるケースがあるように、風向きが変わることはありません。
事実、バスや鉄道の民営化によって、運転手が事務仕事をしているケースは多くあります。
運転手として30年間勤務していて、来年から生活保護担当(ケースワーカー)をする可能性があるのが公務員です。
民間委託する流れが変わらない以上、定年退職までずっとゴミ収集作業員として勤務できない可能性のほうが高いと思います。
ただ、100%民間委託することはデメリットもあります。
それは、災害時などの緊急事態に民間が稼働できない可能性があるからです。
事実、そういった事例は各自治体から報告されていますから、非常時に対応できる必要な直営体制は一定数維持されるものと考えます。