公務員が休職したら期間中の給与(給料やボーナス)はどうなる?
公務員が病気やケガで休職したとき、
休職期間中の給料やボーナスが0になるわけではありません。
1年間の期間限定ですが、一部支給されます(留学や大学院へいくための自己啓発に伴う休職は無給)。
医師の診断書があれば、最大3年間の休職が可能であり、
特に「うつ病」の場合、休職⇒職場復帰⇒休職を繰り返している人もいます。
>>>「実は多い公務員のうつ病。休職⇒復職⇒異動⇒退職(クビ?)の可能性が高い」
公務員の世界にも当然、パワハラはあります。
誰でも、病気になる可能性はありますから、もしもの時のために備えておくべきです。
病気休暇と病気休職の給与支給の違い
職員の休暇中及び休業中の給与の支給については、「一般職の職員の給与に関する法律」において規定されています。
詳細については後述します。
病気休暇中の給与は全額支給
職員の病気休暇中に支給される給与については、病気休暇が承認される期間、俸給及び諸手当(地域手当、住居手当、期末手当及び勤勉手当など)の全額を支給することとされています。
つまり、有給休暇と同じ扱いになります。
90日を超える病気休暇の場合は給与は半額
ただし、職員が(公務上及び通勤を除く)負傷又は疾病に係る療養のための病気休暇の開始の日から起算して九十日を超えて引き続き勤務しないときは、その期間経過後の当該病気休暇に係る日につき、俸給並びに地域手当、期末手当及び勤勉手当の算定の基礎となる俸給の月額の半額を減ずることとされています。
つまり、病気休暇を取得してから90日を超えた場合は、給与は50%支給されるということです。
※病気休暇中の職員に対しては、国家公務員共済組合法の傷病手当金その他の法令に基づく給付が行われることがあります
病気休職中の給与
職員の病気休職中に支給される給与については、職員が公務上負傷し、若しくは疾病にかかり、又は通勤により負傷し、若しくは疾病にかかり、休職にされたときは、その休職の期間中、俸給及び諸手当の全額を支給することとされています。
つまり、公務災害(通勤含む)によっての休職は、全額支給されることになります。
また、職員が上記及び結核性疾患以外の心身の故障により休職にされたときは、その休職の期間が満一年に達するまでは、その職員に対しては、俸給、扶養手当、地域手当、住居手当及び期末手当のそれぞれ百分の八十を支給することができること等とされています。
つまり、うつ病などの精神的な病気休職については、1年間までは80%支給されることにります。
※病気休職中の職員に対しては、国家公務員共済組合法の傷病手当金その他の法令に基づく給付が行われることがあります。
公務員の休職制度の概要
公務員の休職については、
国家公務員であれば国家公務員法、地方公務員であれば地方公務員法に規定されています。
具体には、国家公務員法を実施するための人事院規則「職員の身分保障」に規定されており、
公務員が休職出来る場合は、
- 大学等における修学や国際貢献活動(自己啓発等休業制度の説明は後述)
- 災害により所在不明
- 病気
といった限られたケースのみです。
休職期間中は、基本的には官職を保有したままになります。
そのため、復帰したときに降格されたりはせず、キャリアを傷つけずに職場復帰することが可能です。
本記事では、一般的な休業であるうつ病などの「病気休業」について解説します。
育児休業制度は以下の記事を参考にしてください。
>>>「【公務員の育児休暇】期間中の給料やボーナスは満額支給されるの?」
また、大学等における修学や国際貢献活動は「自己啓発等休業制度」といい、人事院のHPに公表されています。
>>>「自己啓発等休業制度の概要」
なお、給与の支給割合や期間については国や各自治体によって実際の細かい運用は異なります。
休職期間は最大3年(ただし診断書が必要)
公務員が休職できる最大の年数は3年間です。
3年を超えると、クビです。
1日でも無断で休むことは職務放棄と判断され懲戒処分に科せられることになり、
昇給やボーナスが減額されます。
あまりにひどい場合は懲戒免職処分にもなりますから、
長期間の休職を行う場合は、必ず医師の診断書が必要になります。
医師の診断書があれば無条件で休職可能ですが、
医師も最初から1年間の療養を要するとは判断しません。
多くの場合、1か月の様子見という結果になります。
それをどんどん繰り返していって、1年や3年といった期間休職が可能になるわけです。
役所とはいえ雇い主ですから、雇い主側に拒否する権限はありません。
休職期間中の給料
公務員が休職したときの給料ですが、
3か月間は全額支給されます。
当然、休職しているため、通勤手当、超過勤務手当(いわゆる残業代)、管理職手当などは支給されません。
また、4か月から12か月の休職期間中の給料は8割支給されることになります。
13か月以降は、共済組合から傷病手当金(給与額の2/3)が支給されます。
公務員が休職したときの給料の支給額をまとめると、
- ~3か月 給料の全額(100%)
- 4か月~12か月 給料の8割(80%)
- 13か月~30か月 給料の2/3(67%)
- 30か月~36か月 無給(0%)
となります。
4か月以降を「休業」とせず「病休休暇」とした場合は、4か月~12か月は50%となるので注意が必要ですが、
誰も損をする選択肢は選びません(不思議なもので、それが精神的な病気であっても)。
自治体によっては、1年間は給料の100%としているところもありますので、目安だと思ってください。
国家公務員の場合は、上記と同様に80%の支給になります。
休職期間中のボーナス
ボーナスは在職実績に応じて支給されることになります。
ボーナス支給の基準日は決まっています。
- 6月1日
- 12月1日
基準日というのは、この日に在職しているかどうかを判断する日のこと。
>>>「【最新】公務員の夏・冬ボーナス平均支給額と支給日について」
基準日前の6か月間に勤務している日が1日でもあるとボーナスの一部が支給されます。
ボーナスの査定期間は、
- 12月2日~6月1日
- 6月2日~12月1日
となっていますから、
- 6月2日以降に復帰⇒12月2日~6月1日の間に勤務した実績がない⇒6月のボーナスは支給されません
- 6月1日に復帰⇒12月2日~6月1日の間に1日だけ勤務した実績がある⇒6月のボーナスの数%が支給されます
つまり、たった1日の差でボーナスが支給されるかどうかが決まります。
数%としたのは、その期間の勤務日数によって支給月数が変動するためです。
例)勤勉手当
上表が一般的な支給割合を示したものです。※自治体によっては制度が異なる可能性があります。
当然のことながら、半年以上の休職の場合は、
ボーナスの算定期間に仕事を1日もしていないことになるため、1円も支給はされません。
「試し出勤」をした場合の給与や手当の支給について
人事院による「「試し出勤」実施要綱」や「「試し出勤」についての官民格差に関する質問主意書」によると、
民間企業では、「試し出勤」は長期に休業している労働者が職場復帰前に行うことですが、
公務員における「試し出勤」とは、「療養のため長期間職場を離れている職員が、職場復帰前に、元の職場などに一定期間継続して試験的に出勤をすること」と定義されています。
また、その対象者は、「病気休暇又は病気休職により長期間職場を離れている職員で、主治医、健康管理医等及び健康管理者により復職可能の時期が近いと判断された者のうち、『試し出勤』の実施を希望する者」に限られます。
「試し出勤」実施中の職員の給料については、病気休暇期間中又は病気休職中の職員に対して支給される給与等以外は、いかなる給与も支給しないこととするとされていますから、基本的には給与支給されることになります。
病気休暇中又は病気休職中の職員に対しては、国家公務員共済組合法の傷病手当金その他の法令に基づく給付が行われることがありますが、これらの給付は、上記の規定する「給与等」に含まれますので安心してください。
つまり、試し出勤をした場合も病気休暇・休職中と変わらず給与や手当の支給があるということになります。
なお、試し出勤中でも公務災害や通勤災害が認められる場合があります。
※地方公務員の場合、地方自治体によって細かな運用が異なりますので注意が必要です。
制度上、休職⇒復帰を繰り返すことは可能
公務員の休職制度は、公務員になってから1度だけしか利用できないものではありません。
何度も繰り返し利用可能です。
累計で3年間休職することが可能です。
奈良県の男性職員が、5年半の期間に8日間しか出勤していなかった事例もあります。
この事例は、休職ではなく休暇と復帰を繰り返していたパターンです。
病気休暇の場合は休業と違い、リセット(クーリング)期間があります。自治体によって、20日間、90日間、1年間など様々です。
もちろん、これには医師の診断書が必要。それも別の病気ではないといけません。
実際、私の周りでも、復帰しては休職している人がいます。
すべてがすべてを疑うつもりはありませんが、
病気休暇中にアルバイトをしたとして懲戒処分された事例もありますし、
休職制度を悪用している公務員がいることは事実です。
実際に病気で苦しんでいる人がいることへの冒涜(ぼうとく)でもあり、許せない行為です。
しかし、それを役所側もとめることが難しいのが現状。
医師の診断書がある以上、法的には休職を認めざるをえません。
当然、そのなかにも本当に心の底から復帰したいと頑張っている人もいるのですから。
休職すると出世に影響する
休職した場合、間違いなく出世に影響します。
出世はできないとはいえませんが、遅れることは確実です。
単純に昇級には勤続年数が必要ですから、休職してしまうとその期間がカウントされません。
また、人事評価も自動的に可もなく不可もなくになります。
出世するためには、少なくとも優秀だという評価を受ける必要があります。
うつ病以外にもがん治療や交通事故など休職理由に限らず、働いていない期間があることは事実ですから。
さらに、うつ病の場合、役職が上がれば上がるほどストレスやプレッシャーがかかります。
そのポジションに精神的に病んでしまった人をたてるかと言われれば難しい話です。
客観的にも、出世が遅れることの説明はできますからね。
そのため、公務員が休暇をとるときは、病休休暇を取得せず年次有給休暇をまずとります。
これは、人事記録に病気を記録させないためです。
その差もあり、内部で評価されるのは、どちらかを考えれば一目瞭然。
もちろん、出世なんてどうでもいいという職員は、病気休暇の申請をします。
年次休暇を使ったらもったいないですからね。