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【2023年度】国家・地方公務員の給与の賃上げ(ベア)はいつから?

世界的なインフレの流れは日本にも影響を与えています。

物価の優等生ともいわれる卵も(鳥インフルエンザの影響もありますが)スーパーに買いに行くと1年前より2倍の値段になっています。電気代が数倍になった人もいるほどで、物価上昇を加味した価格に変更する企業が相次いでいます。

民間企業での賃金を巡る労使交渉(今年の春闘)は「物価上昇率を上回る賃上げを実現できるかどうか」に焦点が当たっています。5%前後の賃上げを目標しており、ユニクロ、トヨタ、三菱商事、三井住友銀行など大手企業では初任給を含む賃上げ(ベア)が相次いでいます。

国家・地方公務員の賃上げはいつからなのか、そもそも公務員に賃上げはあるのか、解説します。

国家・地方公務員の給与等は民間企業の平均で決まる

国家公務員の給与等は人事院勧告で決まります。また、人事院勧告は国家公務員の給与等を対象としていますが、地方公務員についても人事院勧告に沿って給与等の改定が行われます。(国家公務員法 3条第2項、地方公務員法 14条参照)

人事院勧告では、月給(基本給)とボーナス(期末手当・勤勉手当)を民間企業の給与と比較して、民間給与よりも高ければ低くするように、低ければ高くするように年に1回、国会と内閣に勧告します。つまり、国家公務員の給与は民間企業の平均で決まるということになります。

ということは、民間企業が賃上げをすれば公務員も賃上げするという図式になります。

民間企業の調査対象

大手民間企業のように賃上げができる企業ばかりではありません。賃上げしない、賃上げをしたくてもできない企業は多くあります。その企業も含めて平均すれば公務員の給与はそこまで上がらないように思えます。

しかしながら、人事院勧告の調査対象は「企業規模50人以上の民間企業」となっていますから、賃上げしない企業の数の割合は減ることになります。つまり、公務員の賃上げ額のベースも高くなるということです。

なぜ、企業規模50人以上としているかといいますと、

  • 「部長」「課長」「係長」等の公務員と同等の役職段階があることが多く、同種・同等の者同士の比較が可能である
  • 企業規模50人以上であれば、民営事業所全体の正社員数の60%超をカバーできる

だからです。また、考慮要素(ラスパイレス比較)として、「役職段階」「勤務地域」「学歴」「年齢階層」がありますが、割愛します。

月給(基本給)の比較方法

国家公務員と民間企業の4月の給与を比較して決めます。

ボーナス(期末手当・勤勉手当)

民間企業のボーナスの直近1年間(前年8月~当年7月)の支給実績と国家公務員のボーナス(期末手当・勤勉手当)を比較して決めます。

国家・地方公務員の賃上げは2023年ではなく2024年になる理由

国家・地方公務員の給与は人事院勧告で決まると解説しましたが、人事院勧告は年1回です。

「民間企業の実際に支給されている給与を調査→国会と内閣に報告→国家・地方公務員の給与を改定」という流れで公務員の給与が改定されますので、必ず時差が生じます。例えば、2023年に民間企業の実際に支給されている給与比較し、1年後の2024年に反映という図式です。

つまり、民間企業の物価上昇を加味した賃上げがどれだけあろうと、公務員の給与に反映されるのは2024年となります。

国家・地方公務員の給与の賃上げが現実的な理由

国会での岸田文雄首相は「政府は、経済成長のための投資と改革に、全力を挙げます。公的セクターや、政府調達に参加する企業で働く方の賃金を引き上げます」と施政方針演説をしています。

単純に読めば、公的セクターである国家公務員の賃金を引き上げますと受け取れます。

2022年度の人事院勧告において、国家公務員の月給を平均921円(改定率0.23%)、ボーナス(勤勉手当)を0.1ヵ月分引き上げる勧告をしていますし、国家公務員の初任給は、

  • 総合職 18万9,700円(3,000円増、改定率1.6%)
  • 一般職試験(大卒程度) 18万5,200円(3,000円増、改定率1.6%)
  • 一般職試験(高卒) 15万4,6000円(4,000円増、改定率2.7%)と勧告された。

と勧告され、約30年ぶりの初任給の引き上げ幅となっています。

公務員連絡会は、2023春闘を本格的に始動させた。人事院への春季要求書では、賃金の積極的な引き上げ、社会と公務の変化に応じた給与制度の整備のあり方、非常勤職員等の処遇の改善などを求めている。

春闘方針では、公務労働者の賃金引き上げ(ベースアップ相当)月2万5000円以上(6・2%)、非常勤職員の時間額250円以上引き上げ、時給1500円未満の労働者をなくすなどを求めました。

先の民間企業の賃上げをふまえると、2024年の公務員の賃上げ(ベア)はかなり現実的だと考えます。

令和5年人事院勧告」によると、

  • 最も多い行政職の月給を平均0.96%(3,869円)増(1997年度以来26年ぶりの高水準)
    参考:上げ幅は2022年度が0.23%、1997年度が1.02%
  • 定期昇給を含めた月収は2.7%増、年収は3.3%増(105,000円の増)
  • 初任給は、高卒12,000円、大卒11,000円の増額(1990年度以来、33年ぶりの1万円超え)
  • テレワークをする場合は月額3,000円の在宅勤務手当の新設(交通費は出勤日のみの実支給)
  • フレックスタイム制の導入(土日以外に週1日休日を増やす「週休3日」の働き方(1週間の総労働時間は変わらない))

が勧告されています。

勧告通りとなるかどうかはこれから内閣と国家の判断に委ねられますが、国家公務員の志望者減や若手職員の離職が増えている現状、民間企業の賃上げ状況を鑑みると一定の増額は必至かと思います。

参考ですが、「国家・地方公務員の初任給は低すぎ?大卒でも手取り20万円以下。引き上げる自治体も」のとおり、公務員で初任給20万円を超えている府省庁や地方自治体はありません。そ

まとめ

国家・地方公務員の賃上げ(ベア)は、民間企業の賃上げ状況を考慮すればかなり現実的で賃上げは2023年ではなく2024年になると考えられます。異例の賃上げが多くの企業で行われているため、その企業と給与を比較する公務員は比例して給与が上がることは想像に容易いでしょう。

トヨタでは過去20年で最高額のベア、三井住友銀行では16年ぶりの初任給アップなど、異例のベアが続いています。今回の賃上げは、物価上昇も考慮したものですが、主な目的は人材確保のためです。

世界的にみれば他国はインフレとともに給与が年々上がっているにもかかわらず、日本は現状維持むしろ下がっている状況にあります。このような状況では日本の優秀な人材が海外で働くことも増え、海外からも給料の低い日本には働きにきてくれません。

少子化が加速するなかで企業を維持しようとすれば必然的に給与を上げて優秀な人材を確保することが喫緊の課題でした。そこに物価上昇が追い風となり、大きな賃上げムードになっています。

何も民間企業の問題ではなく、公務員でも同様です。学歴=仕事ができるとまではいいませんが、官僚になる東京大学卒業者の割合は年々下がっていることからも公務員の魅力は減っている現実があります。事実、公務員の採用倍率は年々低下しています。

民間企業のなかには、国家公務員の給与体系を参考にし、人事院の勧告にあわせてベースアップや定期昇給を行う制度を作っている企業も多いです。公務員の給料を上げれば民間も上がるという理論には反対意見も多くあると思いますが、私は、民間企業が賃上げ→公務員が賃上げのサイクルがうまく循環すれば、日本社会全体が成長していくと思います。

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